俺の・・・?
令和の時代の昭和企業に、ゆかりが勤務し始めて1週間が経過した。
自分のデスクで業務をこなすゆかり。
1週間が経過し、業界未経験だが出来る仕事がだいぶ増えてきた。
ゆかり(相変わらず天野さんは忙しそうだし手一杯だけど、誰に何を聞けばいいが分かってきたな。田村さんがかなり教えてくれるからすごく心強い)
この頃には天野よりも女性パート社員の田村に質問することが多くなっていた。
営業事務という役割の為、同性のパート社員の方が手が空いてるし、早く疑問を解消したいゆかりの性分からすると、天野主任より田村さんに質問する方が合理的かつ心理的負担が低かった。
社長「天野ーーーーちょっといいか?」
社長は相変わらずデスクの上で足を組み、鼻毛を整えながら天野を呼びつけるワンマン社長っぷりを披露している。
少し会社に慣れてきたゆかりには、その様子が少し滑稽に見え笑いたいのを必死にこらえていた。
そんなゆかりに話しかけてくる男性社員が…
天野主任と一番仲が良い中野係長だ。
中野「堂本さん、天野さんおらんし、ちょっといい?この物件資料急ぎで作ってくれません?」
チャラチャラしたノリでゆかりに近寄ってくる中野係長。
ゆかり「はい、至急ですね、すぐやります!」
天野が社長席からその様子を感じ取り、自分のデスクに戻ってくる。
天野「中野ぉ、お前、俺の堂本さんに…」
と言葉を発した瞬間、口を閉じる天野…
オフィスに静寂が訪れる。
ゆかり(ん?え?今なんて言った・・・・??ん??)
その静寂を打ち破ったのは
中野「天野さーん、そんなカッカせんといてください!いいやないですか。ほら、彼女覚えいいし、仕事は早いし、出来る子には仕事してもらわんと」
天野「まぁ、そうやけど。あんまり仕事振るなよ、俺の許可なしに」
中野「ヘイヘイ…」
役職としては係長の中野の方が、主任の天野より上席だが社歴や年齢からすると天野の方が力関係が上のようだ。
当のゆかりはその2人の上下関係を横目で認識しながらも、淡々と業務をこなしていく。
ゆかり「中野係長、お待たせしました。物件資料完成しました!確認お願いいたします。」
中野係長に至急で仕上げた物件資料を手渡し、天野に話しかけるゆかり。
ゆかり「天野主任?私もっとたくさん色んな事を出来るようになりたいですし、社員の皆さんとも仲良くなりたいです!なので、私が出来ると思ったら、お仕事もらっていいですよね?」
キラキラした目で天野を見つめるゆかり。
天野はゆかりと視線を合わせず、俯く。
窓から差し込む光を背中に受けながら、ゆるくパーマをかけた後ろ髪をワシャワシャと掻きながら、うつ向いたまま口を開く。
天野「・・・そうですね、そうしていきましょうか」
ゆかり「はい!ありがとうございます!うれしいです!」
天野は自分のデスクを立ち、タバコを持ちそそくさとオフィスを出る。
ビルの中にある喫煙所に向かったようだ。そんな天野を追うように中野もタバコを持ちオフィスを出る。
この会社は一般的な会社よりも男女の境界線がはっきりしている。
男性社員は男性社員ばかりと群れ、女性社員は女性社員と群れる。
男性社員同士ではじゃれ合ったり笑いあったりしていても、そこに女性社員が混じっていることはなかった。
企業体質や男女の関わり方を見ていて、ゆかりは学生時代のようだなと少し懐かしい気持ちが思い浮かんでいた。
ゆかり(社長はワンマンだけど、なんか楽しい会社だな。これからどうなっていくんだろう。)




