夢
5年後。
ゆかりは他の男性との間に子供を授かっていた。
天野を忘れる為に、他の男性何人かと付き合ったりもした。
資産家の男性、包容力のある男性、勇気のある男性…
どんな男性も心から愛することは出来ず、年齢的に一人で子供を産み、育てる事を決意した。
なので、誰とも再婚はしていなかったし、育児も家事も経済的にも行政サービス以外は頼っていなかった。
育児と生活に追われる毎日で、天野の事は頭の片隅においやっていた。
子育てをしながら、10か月の子供むぎとお昼寝をするゆかり。
むぎを抱き寄せると、赤子特融の匂いが鼻孔いっぱいに広がる。
ゆかり(毎日、大変だけど…幸せだなぁ…
むぎがいないときは寂しくて仕方なかったけど
むぎが生まれてきてくれたから、毎日とても満ち足りてる…)
幸せな香りと温かさを感じながら
むぎと一緒に昼間の眠りに落ちていく。
夢の世界に落ちる。
(ゆかりの夢の中)
ゆかり『店長、やだぁ~。しっかりしてくださいよ!』
木々が生い茂る神社の境内で、スーツ姿のゆかりが安西と話している。
同じ環境下で仕事をしていた頃の、ゆかりの姿と安西の姿だ。
安西『ああ、堂本さんすみません!大丈夫、僕たちに任せてください!』
ゆかり『あはは、お願いしますよ~』
安西の後ろで、ゆかりと安西の会話を聞いている天野。
どこか話しかけてほしそうに、安西の陰に隠れるように聞き耳を立てている。
ゆかり(いつも天野さんは、こんな感じだな(笑))
ゆかり『天野さん・・・あの・・・』
天野がゆかりの方に振り向こうとする。
ゆかり「ハッ…天野さん…?」
その瞬間目が覚めるゆかり。
11月。秋から冬に切り替わるタイミングで気候的に熱くはないのに
頭から首筋までぐっしょり汗を掻いていた。
今まで夢にすら出てこなかった天野。
夢でもいいから会いたかったのに。
なぜ忘れかけたこのタイミングで天野は夢に出てきたんだろう。
むぎ「ふぎゃぁ!ふぎゃぁ!」
ゆかり「むぎちゃん、たくさん眠って偉いね。おむつ替えようね」
むぎをあやし、おむつを替えながらさっきの夢の事を考える。
夢の内容なんて起きてすぐ忘れるのに、天野が出てきた夢が頭の中にこびりついている。
ゆかり(ただの夢だ。ただの記憶の整理。それだけ。)
むぎを抱きかかえ、ミルクを与える。
ゆかり(私はこの子だけでいい。私の人生に男性は必要ない…)
ゆかりは一人で生きる決意をしていた。




