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相思相愛未遂  作者: ゆー
41/44

手放し

11/10


天野とデートの約束の日だ。

この日の為に日々を頑張ってきたゆかり。


浮つく心を押さえる様に会社に出勤し、仕事に勤しむ。

退勤時にスマホを確認すると、天野から通知が来ていた。



(天野からのメッセージ)

【すんません…今日体調が悪くて…後日にしてもらえませんか?】



その連絡が目に入ると、がっくりと肩を落とすゆかり。

ヘルニアや膵臓などを患っている天野だ。仕方ないよなと自分を納得させる。



(ゆかりからのメッセージ)

【大丈夫ですか?じゃぁ後日にしましょう!あまり無理しないでくださいね。】


(天野からのメッセージ)

【ありがとうございます…。また元気になったらこちらから連絡します!】



(仕方ない…)


そう自分に言い聞かせて、寂しいような悲しい気持ちを宥める。


(体調悪いんだし、仕方ないよな…)



ふぅとため息をつく。



(自分なら大事な約束の日は体調崩さないけど…)


またふぅとため息を吐く。


(あかんあかん、寛大な心で受け止めないと。

 でもそれくらい優先順位低いのかな私。

 そんなに会いたくなかったのかな…)



ネガティブな考えに脳内を支配されていく感覚に襲われる。



(だめだ、前向きに考えよう。前向き、ポジティブに…!私らしく。)



だがそこから1週間経っても2週間経っても、天野から連絡は来ない。



ゆかり(はぁ…毎日、息ができないくらい胸が苦しいな…)



息を吐いても吸っても、酸素が頭に入ってくる感じがしない。

またSNSで天野を探すが、見つからない。



ゆかり(はぁ。もうこんな自分嫌だ。大嫌い…)



自分の心の泥沼のぬかるみにどんどん足を取られてしまう。

藻掻けば藻掻くほど、底なし沼のようにズブズブとそのぬかるみのハマっていってしまう。

必死であがいているので、ろくに息もできない。

そんな感覚に陥っていた。



ゆかり(試しに連絡してみよっか…)



(ゆかりからのメッセージ)

【天野さん、体調どうですか?心配です…】




いつもなら天野から連絡が来るが、その日は連絡が来なかった。



翌日起きると、ゆかりの送信したメッセージは

”既読”

の文字がついているだけで天野からの返事はなかった。



血の気が引くような感覚があった。

元々天野はLINEメッセージのやり取りがマメではない。

しかも受け身なので、自分から連絡することはない。


天野からの返事は、きっともう来ない。



ゆかり(ああ、そっか。もう会う気はないんだな。)



心が空っぽになり、身体が脱力する。

ただ仕事にはいかないといけないので、しっかり息を吸い込み

頬を両手で叩き、喝を入れる。

無理やり頭を切り替えるゆかり。


いつもの通勤経路。

流行の曲が頭に流れる。

そこの路地から、ふと天野が現れないか。

そんな淡い期待を抱くが、そんな事が現実になるわけがない。


歩を止め、天を仰ぐ。

そこには青い空が広がっている。

雲は所々漂っていたが、すがすがしい澄んだ青空だ。

この空は天野の元にも繋がっている。



ゆかり(私、この空みたいに爽やかに生きてたいんだ。)



1週間後。

やはり天野からの連絡は来ない。

繋がっていることで淡い期待をどうしても抱いてしまう。

天野との恋愛は、楽しいから苦しいに変わってしまった。

いつの間にか、天野を助けたいという目的から

自分を見てほしい、自分に時間を割いてほしいという思考に陥ってしまっていたゆかり。

いるかどうかわからない、天野にとっての”いい人”に嫉妬というドス黒い感情まで持ってしまう。

自分が本来の自分ではない感覚がどうしようもなく嫌だった。

自分が嫌いになってしまいそうになる。

これは好意や愛情ではなく、執着や依存になっている事をなんとなく感づいていた。


ゆかりは家で一人。

天野にメッセージを送る。


(ゆかりからのメッセージ)

【天野さん、私あなたの事が好きでした。

 なんでもできる人だから、素敵な人だなと思ってました。でも抱えすぎないでくださいね。

 お仕事でのご活躍、お祈りしています!

 どうか体調に気を付けて…天野さんの幸せになることを願ってます。】  



そのまま、静かに天野とのトークルームを閉じた。

もう、お互いが連絡を取れないように…二人の関係を閉じた。


窓を開け、空を見る。

雲は転々と広がっていたが、そこには青空が広がっていた。



(天野さん、どうか幸せになってください。

 天野さんが笑顔で、元気で、幸せなら、私はそれが一番の幸せです。)



目尻から一粒の涙が溢れたが、拭うこともしなかった。

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