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相思相愛未遂  作者: ゆー
31/44

決意

1週間後。


ゆかり「ふぅ…」



出勤途中、すがすがしい朝の空気を胸いっぱいに吸い込み

青空を見上げて息を吐くゆかり。



ゆかり(私がどうするかは決めたから…あとは…)


店舗に到着するゆかり。



ゆかり「おはようございます!」


安西・加瀬・川田「おはようございます!」



自分のデスクに着席する前に、店長の安西に声をかけるゆかり。



ゆかり「安西店長。お話ししたいことがありますので、またお手すきでお時間いただけますか?」



驚いた表情でゆかりを見る安西。

菩薩如来のように目が細い安西の目が少し大きくなる。



安西「ああ、はい。今、話しましょうか。応接室へ行きましょう。」


ゆかり「すみません、ありがとうございます」



応接室へ移動する二人。



ゆかり「すみません、お時間いただきまして。実は前の会社からいいお話のオファーをいただきまして…私そちらに戻りたいんです。6月末で退職させていただけませんか?」


安西「……」



驚きのあまり、返す言葉が見つからない安西。



安西「え、本当ですか?あの、天野に…社長にも…話させてもらっていいですか?」


ゆかり「ええ、それは構わないです。」


安西「あの、今の仕事に不満がありますか?」


ゆかり「私、今の仕事にやりがいがないわけではないんですけど、物足りなさを感じていて…。で、前の仕事が私にとって転職だったんです。人材育成の仕事で、またそこに戻りたいので、お願いします」


安西「そ、そうですか…わかりました。僕だけじゃ何とも言えないので、話してみます。」




ショックを受けたのか意気消沈している様子の安西。

いつもより背中が小さく見える。



午後になり、天野が店舗の事務所にやってくる。

天野はゆかりをの姿を見るなり、目頭を熱くし、涙を浮かべる…。

溢れてくる涙を右手でグッと拭う天野。

その天野の様子に胸が締め付けられる。

そして天野は


天野「……っ!安西さんが泣きよったから…っ!」



と安西に責任転嫁をする。



ゆかり「安西店長が…??」



そこに対して返答せず、喫煙所に安西とタバコを吸いに行くために事務所を退出する天野。

心配そうに天野の背中を見つめるゆかり。

やはり天野の背中も小さく萎縮見える。



ゆかり(天野主任が…泣いてた…?)



胸がギュゥッと締め付けられるゆかり。

自分の未来と、仲間を裏切ったような感覚の罪悪感でせめぎ合う。



ゆかり(でもこのままこの会社に居ても、未来がいまいち見えない…)



そして30分後。

社長が店舗にやってくる。

やはりゆかりの脳内でダースベイダーのBGMが流れる。



ゆかり(絶対私に話があって来たよな…)



社長「安西。ちょっと堂本さんと話させてもらえるか?」


安西「はい!お願いします!」


社長「ほな堂本さん、ちょっといいですか?」


堂本「あ、はい!よろしくお願いします!」




応接室に社長に呼び出され、社長と二人きりでの会議室。

安西も天野も事務所にいるため、なんだかそれが不安だったし、もの悲しく感じるゆかり。



社長「安西から聞いたんですが、退職されたいと?」


ゆかり「はい、突然の申し出、申し訳ありません。実は以前勤めていた会社からお話をいただきまして…」


社長「給料ですか?ご希望があれば寄り添います。というのもね。天野も安西も不安がってましてね。僕自身も不安なんですよ。堂本さんは色々言ってくれるでしょう?会社の悪いところや社員の不足部分を指摘してくれるので、会社が良くなっていってると感じてるんですよ、僕は。」


ゆかり「恐縮です…。給与面もございますが、私は以前の仕事がやりがいがとてもあって。自分の能力を発揮したいんです。」


社長「ハッ!やりがいですか!やりがいなんてどんな仕事でも見出せるでしょう?」



その一言に違和感を覚えるゆかり。



ゆかり「今のお仕事に不満はありません。人間関係も良くなりました。加瀬係長も心を入れ替えて頑張っていますが、私じゃなくても務まるお仕事だと感じています」


社長「・・・・・・・営業やりますか?あなたなら何でもできると思います。」


ゆかり「そこまでは考えていないので、すみません。」


社長「そうですか。残念です。でも堂本さんの活躍を心よりお祈りしております。」



ゆかりとの話が終わると同時に、颯爽と店舗を立ち去る社長。

忙しい中、ゆかりの為に足を運んでくれたんだろうか。

社長は言い方こそつっけんどんな所はあったが、行動だけ見ると社員に対して時間を作るという優しさが垣間見える。



事務所に戻ると、お葬式の後のような暗い表情のメンバー+天野。

ゆかりの退職はすでに全員が知っているようだった。



ゆかり「あの、皆さん。ご迷惑おかけして、申し訳ありません」



全員に向かって、深々と頭を下げる。



安西「謝らなくていいですよ。気にしないでください。」


加瀬&川田「・・・・・・」


天野「また面接するので、心配無用ですよ」




申し訳なさそうな表情で、天野の隣の自分のデスクに着席するゆかり。



ゆかり「天野主任、このファイルで引継ぎが出来ると思います。曜日ごとや締め日ごとにやることリストを作ってます。分からない場合はこのURLをクリックしていただければ説明が出てくるようになってます。」


天野「ちょっと確認させてもらってもいいですか?」



真剣な目でゆかりの作った引継ぎファイルを確認する天野。

射るような目つきでジッと画面を見つめる天野の美しい横顔。


ゆかり(この横顔見られるのも、時間の問題かぁ…)



天野「うん、これなら…大丈夫そうですね。」



少し寂しそうな表情の天野。

ホッとするがなんだか寂しい気持ちが残る不思議な感覚のゆかり。




その日の帰り道。


ゆかり(本当は。天野主任に話を聞いてほしかったな…)


夕焼けの空に向かって、深々とため息を吐いた。

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