キャリアチェンジ?
ゆかり「うーん…やっぱりもうちょっと生活に余裕が欲しいなぁ」
今月の給料をもとに、家賃や食費などの予算組みをしていくゆかり。
電卓を指先でパチパチと叩くが、マイナスにはならないがあと少しだけ経済的に余裕が欲しい収入だ。
ゆかり「今の会社副業も禁止だし…男女で飲みに行く事すら禁止だし…しかもスーツ着用だから地味にスーツ高いしなぁ。」
スマホがブルッと震える。
誰だろう?と思ってスマホを確認すると、前の会社時代の上司からショートメールが届いている。
野口からのメッセージ(ゆかりの以前の会社の上司)
【堂本さん、お久しぶりです。
今のお仕事の状況はいかがでしょうか?
よろしければ、いいお話をさせていただきたいと思うのですが…】
ゆかり(ん?なんだろう?お世話になったし連絡してみるか)
ゆかり「お久しぶりです、堂本です。野口さんお元気ですか?」
野口「お久しぶりです。早速のご連絡ありがとうございます。めっちゃ連絡早くない?笑」
ゆかり「いや、何かなって思いますやん!今の会社お給料安いですし…」
野口「そうなんだ。実はね新しいプロジェクトを始めたくて。
で、これはきっと、堂本さんにしかできないプロジェクト。
適正持った人が本当にいなくてね(笑)
お給料などの条件は優遇するから、一度会って話せない?」
ゆかり「え、それどんな話ですか(笑)まぁ話だけでも聞いてみたいですね。会ってお話しできそうなのが11日の夜19時なら…」
野口「じゃぁ11日の19時にしましょうか。うちの会社で話せるかな?」
ゆかり「わかりました!」
電話を切った後、天野のLINEアイコンを見つめるゆかり。
なんだか天野の優しさを裏切る気もする。
そして、浅くため息を吐く。
ゆかり「まぁ、話だけならいいかな。生活も余裕欲しいし、今の仕事に不満はないけど、私じゃなくても大丈夫だし、やりがいが無いしな…」
翌日。
店舗でメンバーと顔を合わせるゆかり。
まだ転職するかは決めていないが、なんだか心が痛む。
いつもよりもメンバーの動向を注意深く観察するゆかり。
加瀬は先日、ゆかりと話し合ったことによって仕事に対して前向きに仕事に取り組んでいる。
川田は相変わらず、優しいながらも誠実に業務に励んでいる。
安西は…相変わらず社長からや数字の重圧に苛まれ、
一休さんのように両手の人差し指をこめかみにぐりぐり当てて何かを考えこんでいる。
ゆかり(上昇気流が吹いてるのかどうなのか…微妙…)
自分の業務リストを作ってみる。
ゆかりはこういう仕事が得意だった。
前職では、社会人教育に携わっていた。
金融系の会社だったため、研修過程は複雑かつ多岐に渡るため、新入社員が1人前になるまでの期間だけでも2か月ほどの期間がかかる。
ただゆかりが研修した際は2か月で独り立ちが出来たが、他の人物が研修した際は4-5か月ほどで一人前になるレベルの仕事だった。
多いときは、勤務時間がバラバラ10-20人ほどを集団研修するなどの荒業を成し遂げていた為
研修・教育スキルに於いて、ゆかりの右に出るものは前の会社にはいなかった。
ゆかり「月曜日はこれをして、火曜日はこれをして…。このリストさえあれば、今の私の仕事は全然引き継げそうだな。」
天野に教えてもらったエクセルファイルの数式や、フォーマットの見やすさ等のテクニックを活用しながら、業務リスト(今後の引き継ぎ書)を作成していく。
ゆかり(やっぱりこの会社での仕事は私以外でも全然できそうだな…仕事のやりがい、かぁ…)
11日。
本日は前の会社の上司だった野口との面談の日だ。
19時に間に合うように定時で退社し、梅田にある以前勤めていた会社へ足を運ぶゆかり。
受付を済ませると応接室に通される。
ゆかり「お久しぶりです、野口さん。」
野口「お久しぶりですね。相変わらず溌溂とされていて。今の仕事はスーツなんですね。」
ゆかり「アハハ…実はね野口さん、私数か月前に離婚しまして…それでもうちょっと収入欲しいんですよね(笑)」
野口「給与面も含めて詳しく話しましょう。これがクライアントに提出予定のプレゼン資料です。」
そのプロジェクトは、複数の課をぐるぐると回るような応援要員のようなプロジェクトだった。
マルチスタッフ。
SVを筆頭にチームを組んで、各課の繁閑に応じてフレキシブルに動く人員・チームを育成するのがゆかりの役割だ。
これはクライアントが不要な人員を抱える必要がないし、人件費も節約できる。
ただ、複数化のスキルを会得しそれをスタッフに落とし込まないといけないため、研修カリキュラムやスケジュール感が全くつかめそうになかった。
野口「ここのね、SVを探してたんだけど。さすがにこの金融業界未経験だと厳しくてね。特にこのB社は研修過程が複雑だから、中々提案できなかったんだ。でも堂本さんなら出来ると思う。堂本さんが育成した今のSVさんは業務委託チームから抜けないしね」
ゆかり「確かに。これは私以外はできなさそうですね(笑)しかし面白いこと考えますね~」
野口「それくらい今B社は厳しくてね。こういう先進的な提案しないと、今は受け入れてくれそうにないんだよ。」
ゆかり「確かにそうですね…」
野口「給与面は融通利くよ。俺、支店長に昇格したし、ある程度の稟議は通せると思う。希望はある?」
ゆかり「月に35万ほど欲しいです…」
野口「OK。稟議出してみよう。ほぼ大丈夫だと思う。ただまずは堂本さんが頷いてくれないと、だね。」
ゆかり「はい、少しお時間いただけますか?」
野口「もちろん。今の会社との話もあるだろうし、じっくり考えて大丈夫だよ。」
話が終わり、野口はゆかりをエレベーター前まで見送り深々と礼をする。
会釈をして以前勤めていた会社を後にするゆかり。
ゆかり(このプロジェクト、すごくワクワクするな…でも天野主任、大丈夫かな…心配だけど。私の人生だし。ゆっくり決めよう)
少しだけ星が見える大阪の夜空を見上げ、深く息を吸い込みゆっくりと吐いたゆかりだった。




