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相思相愛未遂  作者: ゆー
26/44

4月1日。

入社式---。

今年度は男性社員1人と女性社員1人が入社した。

フレッシュな風が、昭和体質の企業に舞い込んでくる。


本社での入社式を終えた後、研修を行う。

労働分配率などから基づいての人事考課制度の変更や

人間学に基づいた研修を履行する。


研修を終えた後、全社員で桜を見に行く予定だった。

お花見だ。

この会社でのお花見は遊覧船を貸し切って、川から桜を見るのが毎年の恒例行事らしい。


遊覧船乗り場の近くのコンビニでアルコールなどのドリンクを各自購入する。

男女の境界がはっきりしているため、男性は男性社員と群れ、女性は女性社員と一緒に歩を進める。

ゆかりはパートの女性社員の保坂と一緒に缶ビールを購入する。

保坂とは20歳くらいの年の差があるが、保坂の優しく包み込まれる雰囲気から

母親というかお姉さんのような、居心地の良さを感じていた。



ゆかり「遊覧船ですか!私乗ったことないんですよ、風流ですね!」


保坂「でしょ。今日は満開ではないけど、きっと感動するよ。」


ゆかり「楽しみです~」



明るい笑顔で元気いっぱいのゆかり。

明と離婚してから、毎日よく眠れるようになった。

以前のように溌溂とキラキラしたエネルギーを放っている。



遊覧船乗り場に、控えめに開きかけている桜のつぼみ。

七分咲きくらいだろうか。

店舗のSNSに掲載しようと、桜の写真をスマートフォンに収める。

雨上がりの夕暮れの薄暗さを背景に、緑の葉と少しだけ開花した桜の淡いピンクの花びらに

きらりと雨粒が輝く。

哀愁と切なさが漂う、淡い淡い、カラーバランスとコントラスト。



保坂「堂本さん、ほら、行くよ~!」


ゆかり「はーい!今行きます!」



写真撮影しているゆかりを呼ぶ保坂の元に、早足で駆けていく。



保坂「足元気を付けてね。濡れてるし、乗ると揺れると思うから」


ゆかり「はい!」



保坂に言われた通り、ゆっくりと船上に乗り込んでいくゆかり。

仕事着はスーツだが、この日はタイミング悪くいつものパンツスーツではなくスカートタイプのものだったので

下着が見えないように船に足を踏み入れると、船体が少しグラッ揺れる為、バランスを崩さないように態勢を整える。



ゆかり「ふぅ」



船に乗り込むと、保坂の姿を探して隣に座る。



ゆかり「なんとかこけずに行けました(笑)」


保坂「あはは、じゃぁ、飲もうか。あ、おつまみに柿ピーあるよ。一袋どうぞ。」


ゆかり「ありがとうございます。いただきますね」



保坂から柿ピーを受け取るが、実はゆかりは柿ピーが全く好きではない。

どうしたものかと思いながら悩んでいると、遅れて船に乗り込んでくる安西店長と天野。

安西は迷わず保坂の隣に座る。

天野はキョロキョロと周りを見渡し、安西の隣に座る。

つまりゆかりの目の前の席だ……。



安西「お二人さん、手前の席、いいですか!?」


保坂「あはは~いいですよ~」



安西の声掛けに、俯きながらクシャッと笑う天野。

2:2で合コン?みたいなノリだ。



安西「じゃぁ、乾杯…いいですか?」


保坂・ゆかり・天野「乾杯!」



声を合わせて笑顔になるゆかりと保坂。

スタートは4人での会話だったが、船の進路が進むにつれ、保坂と安西店長が二人で話し込みだした。

なので、ゆかりと天野はなんとも言えない沈黙に陥っていた。

ゆかりは思いついたように、保坂からもらった柿ピーを天野に差し出す。



ゆかり「天野主任?よかったら柿ピー食べます?」



天野は後頭部に手を当て、照れ笑いを浮かべながら、頭を縦に振る。



天野「あ!すんまへん!いただきます!」




ゆかりの差し出す柿ピーの袋に指を突っ込み、柿ピーを口に運び、ビールをグイッと流し込む天野。

その様子を、微笑ましく見守るゆかり。



ゆかり「桜、まだ満開じゃないけど、川から見る桜って綺麗ですね。」


天野「僕にとっては…目の前の人が花です。」


ゆかり「……!?ん!?あ、ありがとうございます。そ、そうでもないですよ(笑)」


天野「いや、花です!」


ゆかり「あはは、上手ですね~」



ほんのり赤くなる頬を隠すゆかり。

また顔と体が熱くなる。

いつも話題がポンポンと出てきて、会話には困らないゆかりだが

思考が停止しどうしていいか分からなくなってしまう。

二人の間に沈黙が訪れる。



ゆかり(なんか喋んなきゃだけど…)



天野の顔をそっと見上げるゆかり。

天野は周りの様子を窺っていてたため、ゆかりとは視線が合わなかった。



ゆかり(んー?天野主任の言動の意味がわからない。やっぱり私そんな好かれてないのか…?)



ゆかりはとりあえず、川沿いの桜を楽しもうと天野とは反対方向の桜を見つめる。

その日はそれ以降、二人の視線が合うことはなかった。



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