春、到来。
1か月後、明と久しぶりに再会するゆかり。
久しぶりの明の姿になんだかホッとする。
ゆかり「…っくしゅん」
明「お前、相変わらず花粉症酷いな(笑)俺もやけど。」
ゆかり「うん、ごめん。へっくしゅん。」
明の車に乗ろうとするが、乗った瞬間に動悸が押し寄せてくる。
ゆかり「明、ごめん。ダメみたい。」
明「そっか。市役所まで我慢できるか?電車で行く?」
ゆかり「うん、電車で行くよ。じゃぁ市役所着いたら連絡するね。」
明「ああ、待ってる。」
今日二人は離婚届を一緒に出しに行く。
数年前は一緒に婚姻届を出したのに、離婚届も一緒に提出しに行くのだ。
市役所で明と合流し、窓口に離婚届を提出する二人。
明「これで…」
ゆかり「明、本当にごめんなさい。私よりもっといい人いると思うから、元気で。そして幸せになって。」
少し涙ぐむ明。
明「うん、お前もな。なんか困ったことあれば、いつでも連絡してくれていいから。」
ゆかり「うん、ありがとう。」
元の名前に戻ったゆかり。
その足で警察署や銀行等に名義変更の手続きをしに行く。
こうしてゆかりは新しいスタートラインに立つ。再び。
3月下旬。
新入社員の入社前に店舗に新しいメンバーが配属される。
1年目の西田という若い社員だ。
西田は事務所に入ってくると
西田「今日からお世話になります、西田です!」
若々しいフレッシュな雰囲気の西田。
コートを手に架け、深く頭を下げる。
安西「おう、西田、よろしくな!俺は厳しいぞ!」
ゆかり「え、店長、仏の安西じゃないですかw」
後頭部を掻きながら照れ笑いをする安西店長。
安西「あはは。では皆さん、今日は西田の歓迎会です!皆で楽しみましょう!」
店舗のメンバーが笑顔で応諾するのを確認すると、安西はゆかりに近寄ってくる。
安西「堂本さん。歓迎会には天野も来るので…」
ゆかり「あ、そうなんですね?それは楽しくなりそうですね!」
心の中で(なんで?)と思いながらも適当に相槌をする。
また自分の席の前に座るのかなと思いながら、天野の顔を思い浮かべる。
天野の笑顔や見つめられた時の視線の強さを思い出すと、顔が熱くなってしまう。
就業時間になり、川田が予約した歓迎会のお店へ皆で向かう。
川田はゆかりの好物を考慮して、再び焼き肉屋をチョイスしていた。
店内は人気店で、すし詰めのように着席しなければいけなかた。
いつものように本社組の天野と中野係長があとからやってくる。
天野はゆかりの隣に座っている、1年目の西田をぎろりと睨むと、スプリングコートをハンガーに架ける。
天野「中野、お前ここな」
と言っていつものようにゆかりの目の前に座る。
いつもゆかりと目を合わせない天野だが、この日は
周囲の目も気にせず、グッとゆかりを見つめる。
ゆかり「……っ!?あ、天野主任、お疲れ様ですぅ…ぅ…」
天野「ははっ、お疲れ様です。すんまへん、遅れて。」
伏し目がちになってしまうゆかり。
身体の奥から何かがこみ上げてきそうになるものを、必死で抑えていた。




