腹黒王子の名言?
プルルルル。
ゆかり「天野主任、お疲れ様です。」
天野「お疲れ様ですー。今日はそっち行けそうなんで、行きますわ。公務の面接で応接室使いたいんで、開けといてください!」
ゆかり「承知しました!お気をつけてお越しください!」
天野が店舗にやってくる頻度は毎日から、2日に1回程度に減っていた。
川田と安西店長をメインに、店舗の数字は徐々に黒字化していっていた為、天野の新しいプロジェクトのフォローに邁進していた。
ただ空き時間を見繕って店舗にやってきては、ゆかりに仕事を教えたり、爪を磨いたり眉毛を抜いたりしていた。
営業達は接客に出ているので、事務所にはゆかりと天野の二人きりだ。
ゆかりの隣で眉毛を抜く天野。鋭い目で鏡を見つめている。
天野はどうやら美意識が高い。
ゆかり「天野主任って美意識高いですよね(笑)私より高いかも…」
天野「いやぁ~(笑) 面接とか特に、ハッタリかけんとあかんのんで(笑)」
ゆかり「出た…ハッタリ(笑)」
天野「あ、ほんでね。言い忘れてた(笑)今日、新卒採用の打ち合わせで岡田主任来ますんで。よろしくお願いします」
ランチタイム前になり、岡田主任がコンビニでランチを購入して店舗の事務所にやってくる。
岡田主任は7年目。営業成績はそこそこあげていて、今新卒の育成をしながら自分の売上を追求している。
岡田のファッションセンスは天野に感化されているのか、王子スタイルでスリーピースのスーツを着用している。
ランチを食べ終えると、岡田主任が天野主任に声をかける。
岡田「天野主任、ちょっと相談いいですか?」
天野「んー?」
岡田「新卒の斉木なんですけど…アイツまじで寝ぐせ直して来ないんですよ。毎朝モデルルームの鏡で寝癖直してるんですけど、どうやったら直りますかね?」
天野「あいつ、嵐山やもんなぁ。通勤に時間かかるしな…」
岡田「そうですけど…。でも身だしなみは営業の基本でしょー。」
天野「んー。それ…寝癖ちゃうんちゃう?」
岡田「え?」
天野「そんなに直らへんのやったら…それは寝癖ちゃうで。生き様や。
寝癖は直せるけど、生き様だけは直されへん…」
岡田「・・・・・・・・・・・」
その発言を横耳で聞いていたゆかりはコーヒーを吹いてしまう。
ゆかり「ぷ、あはは!!!ちょっと天野主任、生き様…ですか…(笑)??笑わせんといてください(笑)」
天野「え…そんなにウケる??」
ゆかり「めっちゃおもろいですよ(笑)アハハ、生き様ですかぁ…どうやったらその言葉出てくるんですか(笑)」
天野「ハハッ!」
その光景を見ていた数字や教育といった重圧を感じている周囲の人間達も、表情に花が咲く。
ゆかり「マジで天才です(笑)さんまさんみたい(笑)芸人になったらいいのに!(笑)」
天野「芸人ですか(笑)ハハッ」
笑ながら席を立ち、お弁当の容器をゴミ箱に捨てに行く天野の顔が赤面している。
気を取り直したように喫煙所に向かう天野の後を、後輩の岡田が追いかけていった。
事務所には笑いの残り香が残っていた。