社員旅行のお土産
明「はぁ?社員旅行?そんなん旦那からの許可がおりませんって言っときな。会社の人とおるより、家で追った方が楽やろ?」
高木に言われたこともあり、社員旅行に参加できないか旦那の明に相談するゆかり。
ゆかりの思っていた通りの言葉を述べる明に苦笑いをするゆかり。
ゆかり「だよね、うん、そうするよ。」
参加したい気持ち半分、家でゆっくりしたい気持ち半分のゆかり。
結局、明の言う通り、社員旅行に参加しないという選択肢をとることにした。
社員旅行期間中。
家で一人、旦那の明の帰りを待ちながら、スマホの通知音が何回も鳴る。
スマートフォンを確認すると、社内LINEに社員旅行の様子が撮影された写真がアップロードされる。
ゆかり(楽しそう。行きたかったなぁ…ただ、トレッキングは大変そう(笑)みんな体力あるな…)
皆の楽しそうな表情をまじまじと見つめ、目元が緩む。
荘厳で力強い屋久島の木々たち。
緑の葉の色が鮮やかに映えていてる。
ゆかり(いいなぁ~超マイナスイオンじゃん!天野さんもトレッキング参加してるのかな?腰痛めてるけど…大丈夫そ?)
トレッキングの様子が写された画像には天野は写っていない。
やはりトレッキング等の体力を使うイベントには参加していないのだろうか。
明「ただいま。」
ゆかり「おかえり!ごはんあっためるね。ちょっと待ってね!」
晩御飯の支度をし始めるゆかりを貧乏ゆすりしながら見つめる明。
明「今日何してた?」
ゆかり「洗濯物干して、近くのスーパーに徒歩で買い物に行ってきたよ」
明「ふぅん。それならいいや」
何か胃の中に言葉を落とす明。
ソファに腰かけ、電子タバコを吸いだす。
ゆかりをその様子をちらりと確認し、晩御飯の準備を再開した---。
3日後。
社員旅行を終え、いつも通り店舗に出勤するゆかり。
ゆかり「おはようございます!皆さん、社員旅行楽しめました?」
川田「堂本さん、おはようございます!これ、お土産です。後でみんなで食べましょう!」
塩クッキーを手渡す川田。
川田はあくまでみんなで食べる前提でゆかりに手渡す。
ゆかり「わぁ、ありがとう!ランチの時間にみんなで食べましょうね!」
川田からはお土産はもらったのだが、安西店長と加瀬係長からのお土産はなかった。
ゆかり(既婚者でお小遣い制なんだろうし、お土産買う余裕ないんだろうな(笑))
プルルルルル
店舗に電話が入る。
天野でも社長でもない。
あまり見慣れない電話番号だった。
ゆかり「お電話ありがとうございます。エフスタイルでございます。」
中野「お疲れさんですー!今日そっちの応接室使わせてもらいますんで。今からそっちいきます!」
天野と社内で一番仲が良い、係長の中野からの連絡だった。
ゆかり「あらぁ、中野係長!承知しました。お待ちしてますね。」
連絡を受け、10分後に中野が店舗にやってくる。
中野係長は、背が高く、容姿はトイ・ストーリーに出てくるポテトヘッドにどこか似ている。
言葉尻はきついが、その中に熱意と優しさが含まれてるような熱い人間だ。
中野「お疲れさんですー!堂本さんなんか久しぶりやね。」
ゆかり「これはこれは、社内で一番粗利あげてる中野係長!お疲れ様です!」
中野「今日は接客で応接室使わせてもらいますんで、お客さんが来るのが10:30からなんでお茶出しとかお願いできます?」
ゆかり「はい!」
中野「それと…これ…天野さんから。堂本さんにって。」
ゆかり「えっ!?天野主任から…?」
中野「今日天野さんはバタバタしててこっち来られへんから、渡しといてくれって渡されました(笑)」
袋の中身は、ちょっと高めなチョコレートのお土産。
そのチョコレートを見つめながら、天野の顔を思い浮かべる。
中野は付け足すように言葉を続ける。
中野「僕も田村さんにお土産買ってきたんですよ。あの人も社員旅行行かなかったんで」
ゆかり「そうですね、田村さんも行かないって言ってました。あの、天野主任は…腰大丈夫だったんですかね…?トレッキングとか参加してたらまた痛めたんじゃないかな…」
中野「あー。天野さんは参加してないっすよ。他の社員は全員参加してましたけど。」
ゆかり「そうなんですね、ならよかった…このチョコはみんなでいただきます!」
中野「いやっ、これは…!天野さんが堂本さんに購入しはったものなんで…自分で食ってください(笑)」
大きな瞳を不思議そうに中野係長に向けるゆかり。
ランチタイムになり、いつも通り自分で作ったお弁当を食べ終えると
いつも通りホットコーヒーを淹れる。
自分のスマートフォンから、LINEを通じてお礼のメッセージを天野に送信する。
ゆかり【天野主任、チョコレートありがとうございます!ありがたく独り占めします!】
すぐに天野から返信が来る。
天野【いえ!いつも頑張ってくれてるんで。今日はそちらに行けませんが、ポンコツたちよろしくお願いします!】
一口、天野からのお土産のチョコレートを口に含む。
屋久島の景色は浮かびはしなかった。
だが、その甘さから、天野の笑顔と無邪気な笑い声が脳裏に思い浮かび
心の中が暖かくなった気がした。




