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相思相愛未遂  作者: ゆー
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遅くなった歓迎会

それから、毎日本社から新店舗にタクシーで通う天野。

店舗に来る前に必ずゆかりに電話をよこす毎日だ。



プルルルル。

店舗の電話が鳴る。

天野からだ。


ゆかり「お疲れ様です、堂本です。」


天野「堂本さん、お疲れ様ですぅー。今日もそっち行くんで。よろしくお願いします。」


ゆかり「ふふっ。お待ちしております。お気をつけていらっしゃってください。」



相変わらずぎこちなくお辞儀をして店舗の事務所に入ってくる天野。

いつものようにゆかりの隣の、川田の席を陣取り、スマートフォンをいじったり、手帳を見たりしている。



ゆかり「あの、天野主任。少し質問してもいいですか?」


天野「はい、大丈夫ですよ。」


ゆかり「この関数なんですけど…」



ゆかりは天野が隣にいることで事務関係の質問をいつでも質問できるようになっていた。

ただ一つ気になることが…



12時----。


ランチタイムになり、ゆかりは自作のお弁当を広げる。

安西店長、加瀬係長は愛妻弁当を、2年目の川田はチェーン店の牛丼を口に運び出す。


その中で天野は、バナナを1本だけ口にする。

皇帝のようないで立ちの天野が…バナナを1本だけ食べている…。



ゆかり「えっ!?天野主任?バナナ、1本!?」



俯いてフッと笑う天野。

その様子を見て店長の安西がフォローを入れる。



安西「あ、堂本さん。天野は痛み止めの副作用であんまり食べられないんですよ」


天野「そうなんですよ。本社の田村さんが俺が何も食わんから食えって渡してきました(笑)」


加瀬「なんか餌付けされてるみたいやな…」


天野「ハハッ!まぁそうですね(笑) 俺、本社のお姉様方から動物園の動物みたいに思われとる(笑)ゴリラかっ!」



ふふっと笑うゆかり。

天野は無言でゆかりが作ったお弁当をじーっと見ている。



ゆかり「……?天野主任、なんか食べます?」


天野「いや、大丈夫です。バナナあるんで(笑)」


ゆかり「ふふっ。ですね(笑)」




和やかな雰囲気で昼食を進めていく5人。



安西「堂本さん。週末の仕事帰りって空いてますか?」


ゆかり「大丈夫ですよ、何かあるんですか?」


安西「遅くなったんですが、天野も戻ってきたし、堂本さんの歓迎会をしようと思ってます!大丈夫ですか?」


ゆかり「えーーーー!めっちゃ嬉しいです!飲み会すっごく楽しみです!!!ありがとうございます!」



素直に喜ぶゆかりを見て、事務所の雰囲気が和む。

ゆかりは31歳だが、社内の中で一番若い。

明るい笑顔や、契約が取れて営業とともに喜ぶゆかりの姿や振る舞いは、厳しいトップを持つ男性社員にとっては心のエネルギー源のような存在だった。




週末。



飲み会の日が訪れる。

この飲み会は、ゆかりの歓迎会・天野の快気祝い・新店舗の壮行会という3つの側面を持っていた。


川田が予約していた焼き肉店が今日の飲み会のステージだ。


参加メンバーは、以下の6人だ。

新店舗のメンバー:安西店長、加瀬係長、川田、ゆかり

本社のメンバー:天野主任、中野係長


中野係長は天野と仲が良いことと、たまに新店舗の接客席を利用することもあり参加予定だった。



中野以外の5人で歩いて焼き肉店に向かう5人。


店に着くと、適当に着席する5人。

ゆかりが座るのを確認する天野。



天野「ここは中野が座るから…俺はここに…」



と独り言をつぶやきながらゆかりと視線を合わさないように

ゆかりの目の前の席に座る。



ゆかり「???」



中野が仕事で遅れていた為、5人でまずは乾杯を行う。

勿論乾杯の音頭は店長の安西だ。



安西「それでは今日は堂本さん!遅くなりましたがこれからもよろしくお願いします!

天野!お帰り。

さてみんな、これから店舗を盛り上げていくために全力尽くすぞ!乾杯!」



全員がビールで喉を潤す。

仕事帰りのアルコールが体に染み渡る。



ゆかり「ふぅ、おいし。」


ほっこりした幸せそうな笑みを浮かべるゆかり。

コースのお肉が運ばれてくるので、社歴の浅いゆかりと川田はそれぞれ肉を焼き始める。



ゆかりの目の前の天野はひたすらビールを飲み干す。



ゆかり「天野さん、お肉どうぞ。お薬も飲んでますけど、お酒大丈夫ですか?」


俯く天野。その表情はクシャッとした笑顔で頬を赤く染めている。



天野「あー、すんまへん、ありがとうございます!いただきます!」




天野が食べる様子を不思議そうに見ている安西店長。


加瀬と川田は何も気にせず、お肉を焼いたり食べたりしている。

特に加瀬は損をしないように次から次へと焼けたお肉を胃の中に落とし込んでいる。



ゆかり「加瀬係長!まだ中野係長も来てないんですから!自分だけ得しようとしないでくださいよっ!」



天野「ハハッ!堂本さんの言う通りですよ(笑)加瀬さん、自分の事しか考えてないからなぁ~(笑)」



加瀬「え!そんなことないし!二人して俺をディスらんといてくれ!」



そこに仕事を終えた中野がやってくる。



中野「おーお疲れ!聞こえてたけど、加瀬さん、また卑怯なことしてんの(笑)」



仲が良い中野の登場に、少しホッとした様子の天野。

中野係長は口は悪いが、ドシッとした安心感がある人物だ。



中野「カカカッ!加瀬さん、あんた係長やのにはよ契約あげんと!」



核心を突かれ、ハッと目を大きくし、少しうるんだ目で中野係長を見つめる加瀬。



中野「あーごめんごめん!でも頑張らな。加瀬さん、頼んますよ!」



加瀬「俺をディスるなーーー!!!」



笑い声が高らかに響く店内。



ゆかりはビールを飲みながら、天野の様子をうかがう。

天野はゆかりと一切目を合わせない。

ゆかりは、自分が嫌われているのかと思い、不思議そうに天野を見つめる。



ゆかり「天野主任、ビールお代わり、いきます?」



アルコールが体内にめぐっているのか顔が赤い天野。

相変わらず俯きながらの笑顔で、こくんとうなずく。



ゆかり「川田君もお代わり、頼む?中野係長ももう飲み干したんですか!ビールでいいです?」



周りの状況をうかがい、おかわりのオーダーを通すゆかり。

ただひたすら笑いに包まれた初めての飲み会。

薄暗い店内に、まるで蠟燭が燃え上がるように楽しい時間だった。

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