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トリカブト〜警視庁刑事部《異能》犯罪対策室〜  作者: 星来香文子
Case3 高級住宅立てこもり事件

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第27話 分断

「これは……その……」


 血の気の引いた真っ青中顔で、狼狽える小手崎。

 鳥町は岡根邸に返却してきたものとは違う、別の日本刀を右手から出して、その切っ先を小手崎に向ける。


「ウチの室長はね、警視庁管内で起きた異能者が関わってそうな奇妙な事件は全部把握してんすわ。特に、こういうお前みたいなクズが起こしてる事件をね————」


 実は、兜森が《異能》犯罪対策室に異動して来るずっと前から、その事件は異能者による犯罪の可能性が高いと、千が目をつけていた事件だった。

 涼子から小手崎の股間の話を聞いて、鳥町はピンときていたのだ。

 最初は、拳銃で少女を犯すとんでもない変態の犯行なのかと思っていたが、納得がいった。


 罪のない若い少女たちを捕まえて、小手崎は試したのだ。

 その小さな銃が、使い物になるかどうかを……


「やっぱ、ちょん切ったほうがいいっスよねぇ? その左腕と同じように……————」

「ま、待て……!! やめろ……!! やめてくれ!!」


 怯えた小手崎は、股間の銃を暴発させる。

 斬られた腕は医師の手当を受け包帯が巻かれていたが、股間の小さな銃口はまだ、ガムで塞がれたままだった。



 *


 結局、小手崎は人質強要罪、住居侵入罪、致傷罪、強姦致死傷罪、器物損壊罪など数多くの罪を犯していたことが判明する。

 そもそも、異能とはいえ、銃刀法にも違反している。

 マスコミは最初、どこから情報を得たのか残念な異能に目覚めた男が、起こした立てこもり事件だと面白おかしく事件を報道していた。

 ネット上でも炎上し、かなり馬鹿にされていたが、ただの立てこもり犯ではないことが判明すると、一斉に起きたのは、異能者は犯罪者だとする、異能者に対する誹謗中傷。


 異能者であることを公言していた人物に対する過度な嫌がらせや、身の回りで起きたなんてことない事件も、全て犯人は異能者ではないかという話が出る。

 反異能者側と、異能者の間で大きな分断が起きていた。


『異能者は危険です。人里に降りてきたクマと一緒ですよ。見つけ次第、殺したほうがいい』

『職場に異能者がいるんです。怖いし、気持ちが悪くて……』

『私の友達は、異能者に殺されました』

『やっぱり、真日本人教徒は危険ですよ。簡単に人を殺す』

『異能者に制裁を————』


 連日ワイドショーではこの話題で持ちきりになり、さまざまな専門家やコメンテーターの言葉がネット記事になったりもした。

 異能者をCMに起用していた企業も、事態を重く見て契約を打ち切ったり、放送を自粛したり……


 そんな中、突然メディアに露出が増え、頭角を現した者がいる。

 高橋たかはし聖典まさのりという、若い実業家だった。

 芸能人並みの整った顔つき。

 知的に見える大きな黒縁のメガネと対照的に耳に空いた複数のピアス。

 肩まである長い髪。

 異能者がいかに危険な存在であるか飄々と語る姿。


 彼が出演すると、若い年齢層の女性からの視聴率がいいと、最近あらゆるメディアからオファーが殺到しているらしい。


『八咫烏というテロ集団をご存知ですか? 彼らはとても危険な思想を持った若い異能者の集まりです。警察は彼らについて言及を避けていますので、あまり知られていないとは思いますが……彼らの多くは、真日本人教徒同士の両親から生まれた、いわゆる第二世代の異能者なんです』


 平成三十五年十一月上旬。

 夏日を記録した異常気象の秋。

 冬が始まる少し前。


 《異能》犯罪対策室のテレビを、たまたまいつものように駄菓子を食べながら見ていた鳥町璃子は、画面に映ったその男の顔を食い入るように見つめていた。


「なんだ、鳥町。お前も、こういう顔の男がタイプなのか?」

「……」

「……好きだよなぁ、女って、こういう顔の男が」


 兜森はそれが珍しくて、冗談で言ったのだが、鳥町から返ってきた言葉は、以外なものだった。


「————聖典セーテン……?」


 画面の向こうにいるその男は、鳥町の記憶の中にある御船聖典によく似ている。

 幼い頃のあの美少年が、そのまま大人になったような顔をしていた。





【Case3 高級住宅立てこもり事件 了】





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