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第5幕〜金の価値

 

 町長の屋敷━━


 オボロ達の冒険者登録を済ませ、その夜ギルド長トスクールは町長のギラクの屋敷で夕食をしていた。

 並べられたコース料理。どれも色鮮やかで食をそそる。


「で、ギラクさん……例の件ですがね」


 トスクールが静かに口を開く。


「そのオボロと言う獣人……どうだった?町の噂と実技試験の事は聞いておる」


 聞き返すギラク。


「ザザ村の村長の手紙、シーサーペントの鱗ともに本物と考えて良いかと。それにオボロさん自身、スコットよりも強く、お仲間の二人も同格と私は見ています」


 ワインを飲み干すギラク


「トスが言うなら……間違いなかろう……。今の町の冒険者不足の切り札にでもなってもらえると良いが……」


 ハンカチで口を拭きトスクール


「本人の話ですと、しばらく滞在を希望してる様子。ギルドとしても討伐や護衛で力を発揮してくれることを期待してますよ。それに……スコットが負けて、しばらく療養中……。そこの穴も埋めてもらえると良いですがね」


 メインの肉を飲み込むギラク


「町に友好的かつ有益であれば獣人でも、私は構わないさ」


「王国頼りにしてばかりでは、町が寂しくなって行く一方ですからね……それに……私はこの町が好きですから」


 トスクールに同意するかのようにギラク


「頼みますよトス。今日は報告ご苦労様」



 翌朝━━


 カーテンの隙間から優しく朝日が射し込む。

 なんとなく目が覚めてしまったオボロ。狩りをして満足したのかクロネもアミュもまだ寝ている……。安心したかのような優しい寝顔のクロネ……。


(……クロネも普段からこんな表情なら、人間受けも良いのにな)


 など感じていたオボロ。


 ━━「う……うぅーん」


 ━━と、色っぽい声を漏らし目を開けるクロネ━━!


 ━━バサッ!


 オボロの視線に気付き、咄嗟に羽で顔を隠してしまう!


(オボロ様に見られていた?いつから?こんなだらしない寝顔を……)


 羽をずらし……ほんのり潤わせた目だけ出しクロネ……


「寝顔を見つめるなんて……恥ずかしいし……反則ですわ!」


 ぷいっと反対側へ寝返るクロネ。


 一連のクロネの仕草に、ドキッとしてしまったオボロ!


(素、なのかな?なんか可愛らしかったな)


「うぅー……おはよう……お兄ちゃん……」


 目を擦り、欠伸しながらベッドに座るアミュ……。

 落ち着いたのかクロネも起き、風呂場の方へ行った。


 バシャバシャン!バシャンバシャン!


 水の跳ねる音が響く!


 ……


 顔を洗ったのかスッキリして……ソファーに座るクロネ。


(冷たい水で気を引き締めませんと……顔がにやけてしまいますわ……)


 どうやらオボロに寝顔を見つめられ嬉しくて仕方ない様子。


 揃ったところで、一階で朝食をもらい、換金されたお金を受け取りにギルドへ向う三人。朝食は……昨夜の固いパンと少し甘いスープと簡単なものであった。


 ギルド━━


 数人の冒険者が雑談していた。特に気にすることもなく受け付けのミティーラの所へ行くと……気分屋なのか……今日はかなりぶっきらぼう……。ギルド長の部屋に行ってくれと指示され部屋へ向う。


 ドアをノックし、部屋へ入る。

 トスクールがテーブルにすでに用意してくれていた。ソファーに座るオボロ達。


「おはようございます。昨夜は寝られましたかな?」


 気を使うトスクールに、それとなく返事をするオボロ。


「換金の方は出来ましたので、どうぞお受け取り下さい。シーサーペントの鱗が五枚……相場通りに換金させてもらいました」


 テーブルに置かれたお金を見るオボロ達……

 丸い銀色の銀貨が……十枚。鱗一枚当たり銀貨二枚。

 有難く袋にしまうオボロは、恥を覚悟でトスクールにお金の価値を聞く……。

 少し驚いたような顔で答えるトスクール……。

 種類は……豆銅貨、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨で、豆銅貨が十枚で銅貨一枚相当となり、他も十枚で相当の対価になると教えてくれた。

 この町なら一日の一人の宿代は大銅貨三枚から銀貨一枚になるとも教えてくれた。真剣に聞くオボロ。


(シーサーペントの鱗が一枚で銀貨二枚……ルーベさんからもらった小箱の中から手掴みで適当に袋に入れたから何枚あるか不明だな……。仮に二十枚なら……銀貨が四十枚……五十枚なら……銀貨百枚!)


 久しぶりに暗算をしたオボロの脳内は忙しかった。

 アミュのリュックから袋を取り出すオボロ!リュックが約に立ったとニコニコするアミュ。


 ━━ドサッ!


 テーブルに袋を置くオボロ!


「これも……シーサーペントの鱗です!換金お願いします!」


 袋を静かに開け……覗くトスクールは━━!


(こんなにまだ持っていたのか!まさかシーサーペント一体分では?)


「わ、わかりました……お受けします……が、これだけの量なので明日の夕方には受け取れると思います」


 袋を締め、金庫のような所へ保管したトスクール。

 ソファーから立ち上がるオボロ達……


「あーえーっと……今日は依頼は受けない予定ですかね?」


 尋ねるトスクール。


「んーとりあえず今日は町を見て色々買い物とかしたいって考えてます!ごめんなさい」


 と、あっさり返答するオボロ。


 間髪入れずトスクール


「ご都合があれば明日からでも依頼をしてもらえると我々としても助かります」


 ドアノブへ手を掛けようとするオボロの手を引き、強引に握手をするトスクール!


「そ、そうですね……考えておきますよ」


 当たり障りなく返答し、部屋を出るオボロ達……。


 ギルドロビーへ来たオボロ達……。


 一つのテーブルに人だかりが出来ていた。その人だかりから手を伸ばし声をかけられた!


「おーいオボロさーん!俺だよスコットだよ!」


 流れ的に返事をしないといけない雰囲気……。仕方なく返事をするオボロ。人だかりはスコットが見えるように移動してくれた。周囲の冒険者達の視線が……人それぞれ違って見える……。オボロを下に見るような視線……クロネを見惚れる視線……アミュを可愛いなと愛でる視線……。クロネは相変わらず冷ややかな目線で対抗……アミュは見られて嬉しいのかニコッとしている。


 椅子を少しずらし、まだ包帯を何ヶ所か巻いていたスコット


「失礼を承知でお願いしたいんだが……俺……あと数日は依頼出来そうもない……代わりと言ってはなんだが……オボロさんに依頼をこなしてもらいたい……まぁこうなったのも……自分のせいなんだけどな……ハッ……ハハ」


 オボロに対する願望と反省が見え隠れする発言……。


(うーん……トスクールさんもスコットさんも……似たような事を言うなぁ……)


 と、思いつつオボロ


「スコットさん、とりあえず今日は町の見学と買い物をしたいんですよ……先程トスクールさんからも似たような事を言われまして……その、考えておきますよ」


 と、告げ何か言われる前にギルドを出て行くオボロ。


 ━━宿屋グーグー


 一度部屋へ戻ったオボロ達。

 D=D(ディメンション=ドア)からメルとホノカを呼び……あと例の鞄……。二体は鞄の取り合いで騒ぎ始める……。

 オボロは、人間の食事の作法や味に慣れるまではお店ではなく、一階で済ます事を提案し、クロネもアミュも賛成してくれた。


「んじゃ!宿代払って……町をぶらつくか」


 皆が意気揚々としている中、クロネだけ乗り気でないのが気になるオボロ……。


「……クロネ?人間臭さが……辛い?」


 肩を落としクロネ


「そうですね……まだ二日しか経ってませんので……慣れた、とは言いきれませんわ……」


 と、頭を下げる。


「無理な時は遠慮なく言ってくれ!少しずつ慣れてもらえれば……それで良い!」


 羽に触れ励ますオボロに、有難味を感じたクロネ。


(オボロ様に……迷惑かけぬように一日でも早く)


 募金箱の鞄にメルとホノカを捕まえ押し込み首から下げたオボロ。

 鞄の中でも何やら対立してるのか……カタカタ揺れる……。


 軋む階段を降り一階へ……。


 ちょうどカヌスが居たので、一人分の一日の代金を確認するオボロ。

 カヌスはカウンター脇の壁を指し説明してくれた。人間は一人一泊で大銅貨五枚、他種族は一人一泊で大銅貨六枚と設定してあり、ともに朝食がサービスとあった。この設定にはそれなりに理由があった……。他種族……主に獣人だと部屋を壊したり宿泊客とのトラブルが度々あったため、差を付けたと説明してくれた。

 なるほどと感心し、早速本日分の代金を払った。一人一泊六枚で三人分……大銅貨十八枚……と、言うことは……銀貨一枚と大銅貨八枚……なので、銀貨二枚を渡し……大銅貨二枚を受け取った。簡単な暗算のはずなのに……やたらと慎重なオボロ……。


 ついでにカヌスに


「町には本屋みたいのはありますか?」


 尋ねるオボロ。


 カウンターを拭きながらカヌス


「んー本屋は無いけど……雑貨屋に本や書物はあったと思うわよ。えーと噴水広場に行けば雑貨屋はわかるはずよ」


 親切に教えられたオボロ達は、まず雑貨屋を目指す事に!



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