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第5幕〜盟主として

 

 ━━宿屋・グーグー


 陽も落ち町に明かりが灯るころクロネは部屋へ戻って来た!


 バサッバサッバサバサバサ!


 それも、二階の部屋の窓から!

 スッキリしたのか全身がシャキッとした雰囲気。


(窓からかよ?……出来たら一階の宿屋の玄関から戻って欲しかった……)


 渋い顔をしてるオボロを尻目にクロネ


「ただいま戻りましたわ!何か変わった事はございませんこと?」


「クロネが戻って来るまで、メル達と話ししてたよ」


 メルもホノカもクロネの方へ寄って行く。


「バーンってすっ飛ばして来た?」


 調子良く聞くホノカ。


「ま、まぁ、それなりに、ですわね」


 少し面倒くさそうに答えるクロネ。


 部屋をスイスイ飛びながらホノカ


「良いねぇ!大空!」


 願望とも言える感想を口にしていた。


 チラッと角の天井のアミュの巣を見るクロネ……。


(アミュはまだ時間かかるのかしら?)


 と、少し心配する。


 ━━ピシッ!ピシピシピシッ!


 ポロッポロッポロッ……。


 糸の塊に亀裂が入り、卵の殻が割れたように床へ落ちた!


 八つの赤い単眼が鈍く光る!


 ━━!


(暴走するのか?アミュよ?)


 身構えてしまうオボロ!


 口の牙をモゴモゴさせ何も無い床へ跳んだアミュ!


 ━━カチャリ!


(床は……大丈夫か?)


 不安と心配ばかりなオボロ。


 前脚で顔面を撫でながらアミュ


「お腹減ったぁぁぁあ!」


 大きく咳払いをしオボロ


「アミュ、落ち着いたのならとにかく人型に戻りなさい」


 普段より強めに言う。


 慌てて人型へ戻るアミュは


「うぅ……ごめんなさいお兄ちゃんっ!」


 クロネの所へ行き羽の中に頭をぐいっと押し込み隠れてしまう。仕方なく背中を軽く叩き励ますクロネ。


 ちょっと言い過ぎたか、と感じてしまったオボロは


「そ、それじゃー下に行って何か食べよぉかぁー!」


 クロネの羽の中からひょっこり顔を出すアミュは、部屋のドアまで一目散に走る!


 グーグー一階━━


 メル達は一旦D=D(ディメンション=ドア)へ戻させ、軋む階段を降り一階へ。

 カウンターにいたグーメラに食事をしたいのだが……手持ちが無い事を相談した。明日には素材を換金したお金が手に入る事も告げた。


 ……


 今晩まではギルドが負担するんだから、問題無いと言い奥へ引っ込んで行った……。

 テーブルに座り待つこと……数分。

 カヌスさんが奥から料理を運んでくれた。

 煮込んだ雑炊のようなスープと少し固そうなパン、それとサラダの三品。お酒は飲むかと聞かれたが断り、他の飲み物をお願いした。

 クロネとアミュは出された物を凝視している……。


(こう言う食べ物は……初めてだよな……スプーンやフォークを使う事も知らないはず)


 オボロは二人に使い方、食べ方を説明し、お手本となるよう自分から食べ始める。クロネは飲み込みが早く、食べられていたが……やはりと言うか……期待を裏切らないアミュ。スプーンの持ち方、お椀の持ち方……食べ方……どれを取っても……人間で言えば子供のような食べ方……。お椀をひっくり返しそうにはなる!スプーンは床に落とす!テーブルに溢す!手のかかる子のようである。アミュ本人は険しい顔をしながらも、食べたい一心で一生懸命。オボロもそこは汲んで、なるべく手は出さぬようにはしていた。


 ……


 何とか食べ終わったが……アミュは物足りなそう……。


 オボロはブレインマウスで


『アミュ、お腹満足したか?』


 オボロを見るアミュ


『んーん……足りない……お兄ちゃん、お外で捕食して来て良い?』


(やっぱりそう言うよな……)


『夜だから……一人ではダメ!俺もクロネも一緒でな』


 まだ足が床に付かないアミュは、笑顔でバタバタさせ喜ぶ。

 ブレインマウスのやり取りを聞いていたクロネは


(本当アミュには……甘いですわね……オボロ様)


 と、軽く呆れてしまう。


 オボロはグーメラに、町周辺に野犬とか獣の出没情報をそれとなく聞く……。少し考えてグーメラは麦畑の方なら野犬か麦食いが居るかもしれないと教えてくれた。怪しまれると厄介なのでオボロは


「いやーちょっと食後の運動でもぉと思ってねぇぇ」


 と、辻褄が合いそうな言い訳で宿を出て行く。


 ━━スーデルの町・麦畑


 町の門番はあっさり出させてくれた。スコットを倒した噂のせいなのか……何か対応が変化したように感じる……。


 月明かりの中、麦畑を歩く三人……。

 クロネとアミュの後ろを歩くオボロは……


(俺が細か過ぎるのも良くないが……最低限、ガイアールの人と同じくらいに失礼無く振る舞えるようにしないと……クロネはともかく……アミュは……)


 思い詰めるオボロ。


 だいぶ町から離れたので、二人を魔獣化させ狩りをさせた。

 太めな木の枝に腰掛け、夜風に当たりながら狩りをするクロネとアミュを観察するオボロ。


(元々生きてきた環境も、生き方も全てが違うんだ……頭ごなしに言っても……身につかないだろう……)


 アミュが気を使い……


「ホノカに焼いてもらう?お兄ちゃんっ?」


 と、獲物の一部分を持って来てくれたが、お腹いっぱいだから大丈夫と返答。


 オボロ近くに獲物も持って来て食事するクロネとアミュ。クロネは嘴で啄み呑み込む……アミュは獲物に噛りついて口をゆっくり動かし呑み込んで行く……。いまだに見慣れないオボロ……。


「あー食べながらで良いから聞いて欲しい……まだ二人とも人間が食べる物に慣れていないように思う。だから慣れるまでは……人の居ない所で今みたいに食事するのがベストかなってさ……」


 動きが止まるクロネ、アミュ。


「んー二人には我慢と言うか……無理をさせているんだなって今日一日でわかったしさ……」


 食事中のクロネは一旦止め


「食事をするのに道具を使うとは知りませんでしたわ……」


 アミュをチラッと見るクロネ


「食事に関しては……しばらくオボロ様の提案でお願いしたいところですわ……もちろん人間の食事もした上で、です」


 再度アミュを見るクロネは少し脅し気味に


「それで良いわよね?アミュ?」


 獲物を噛り付きながらアミュ


「ゔんっ!ぞれでびぃよぉ!」


 食べながらの返答……。


「うん。ありがとう二人とも……」


 少し間を置き、唾を呑み込みオボロ━━


「それと━━町中や人前で……魔獣化しそうになったら……【血の盟約】発動するつもりだから!」


 最後はきっちり伝わるように強く言い切ったオボロ!


 血の盟約とは━━


 血の盟約の特殊な魔法紙による主従関係のような魔法契約。盟主に従わない場合は盟主の意思により従者の魔法陣が光り、戒めたり一時的に行動を制限したり出来る。


『盟主が死ねば従者も死す』


『従者は死んでも盟主は死なず』


 ━━━


 オボロとしては、この力は二人には使いたくないが……牽制として、再度口にした。


【血の盟約】と言う言葉を聞き、身体が勝手に反応したのか……クロネもアミュも食事を止め━━


「は、はい!こ、心得ております!」


「アミュもっ!頑張るからっ!」


 いつもとは違う真剣な雰囲気な返事をされた。


 夜風が目に染みるオボロ……。



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