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第5幕〜冒険者登録・①

 

 セリーヌの工房━━


 オボロ達が旅立った後の工房……。

 賑やかさは無くなり静かに時が経つ……。

 生成基の前に立つセリーヌ……。

 その生成基の中には……オボロから貰った水色の魔石が静かに培養液に沈んでいた。


(そろそろ町に着いたかねぇオボロちゃん達……ギルドでやらかしてなければ…良いんだけど……)


 そんな心配事をするセリーヌ。


 一体のホムンクルスを呼ぶ


「ちょっと外の空気吸ってくるから……見ててさね」


「……うん……セリーヌ」


 メルとホノカのおかげか、会話出来なかったセリーヌのホムンクルス達の中に、話せる者が現れてた!


 部屋を後にし、庭へ行くセリーヌ。


(……メル……ちゃんとオボロちゃん達をサポートするんさね……)



 スーデルの町・ギルド長室━━


 測定器を壊してしまったオボロ……室内が静まり返る……。


 横目でトスクールを見るオボロ


「えーと……合格?」


 話しかけられ慌てるトスクール


「はっ!……えー……どうやら測定器の限界を超えてしまったようです……問題無く合格です……」


 小さく拍手をするクロネ……跳ねて喜ぶアミュ……測定器を壊し申し訳無さそうに苦笑いなオボロは、クロネの肩を叩く。


「では参ります」


 四角のガラス板の魔力測定器に手を乗せるクロネ……。


 細くしなやかな腕から手へ、そして測定器へ魔力が注がれる……。


(魔力を抑えて……ですわ)


 中心が赤くなり……


 ゆっくり広がって行く……


 ガラス板全体が赤く染まりかけた時━━


 ミシミシッ!ミシッ!


 ガシャガシャン!


 測定器に亀裂が入り八等分になってしまった!


「……あら?ごめんなさい……私も合格でよろしくて?」


 後ろで見ていたスコット


(おいおい……やるじゃねーか!二人も測定器壊す奴はそうそう居ねぇぞ?)


 慌てて破片を片付けるミティーラ。冷や汗が流れるトスクール。


「……ご、合格です……えーとそちらのお嬢さんも魔力で?」


 アミュの肩を触りオボロ


「ええ魔力の方でお願いします」


 いそいそと棚から変えの測定器を持ってくるトスクール。


「じゃーやってみるね!お兄ちゃんっ!」


 測定器の前へ行くアミュ。

 オボロはすでに諦めていた……自分もクロネも抑えて測定したのに壊してしまった事……魔力量ではアミュはずば抜けている……おそらく抑えても━━


 ガシャガシャガシャーン!


 厚めなガラス板の測定器が……細かなガラス片になっていた!


「アミュも合格?ねぇねぇ合格?」


 トスクールに近寄り上目遣いで聞くアミュ。


 頭を抱えるオボロとクロネ……。二人とも、やってしまったと思っていた……。


 後ろで見ていたスコットはオボロ達を見て


(これは……冒険者ってレベルじゃ無い……傭兵や魔道士?いやそれ以上……)


 壊れた測定器の片付けを、面倒くさそうにまたやり始めるミティーラ。


 壊れた測定器を見つめトスクール。


(久々に測定器を壊す人材を見ました……野放しにしていたら……誤った力の使い方をしそうです……)


 パン……パン……パン!


 ゆっくり拍手をするトスクール。


「いやぁ素晴らしいですよ皆さん!測定器を壊す人材は中々居ないので……貴重なものが見られましたよ。まぁ皆さん合格と言うことで……実技へと行きましょうか」


 部屋を後にし、トスクールに着いていくオボロ達。


 歩きながらオボロはトスクールに測定器の弁償を願い出た。しばらく考えてトスクールは、冒険者で町に貢献していただければありがたいと。王国から一番離れた町なので緊急時に応援要請出しても遅くなるため、少しでも冒険者は多い方が助かるらしい。弁償は免れはしたが……何かギルドに貸しを作ってしまったと感じてしまうオボロ……。

 最後尾を歩くスコット。


(このまま行けば……ギルドから三人ぶんの紹介料が手に入る!ちょっとした小遣い稼ぎと考えていたが……頼むぜオボロさん!)


 どうやらオボロ達に率先して冒険者登録を勧めていた理由のようだ。


 町外れ・ギルド訓練場━━


 ギルドから路地をしばらく歩くとレンガ造りと思われる城壁に囲まれた所へ出た。


 何やら周囲が騒がしい……。誰が噂したか見物人が集まっていた!チラッとスコットとミティーラを見るギルド長トスクール……。二人は首を横に振っていた。


 オボロ達の前に行くトスクール……一つ咳払いをし……


「何やら騒がしいですが……気になさらずに。実技ですが三人とも測定が最高だったので、内容も上級とさせて頂きます」


 訓練場を見渡しトスクール


「この砂時計が落ちるまで、外周の城壁から投石、矢……残り時間半分になりましたら魔法が放たれます。それを避けたり、防いだり、打ち落としたりして下さい」


 奥の柵を指差す


「それが終了しましたら……あちらの柵から『フォリッドウルフ』が出てきますので、倒してもらいます。殺しても、気絶でもかまいません」


 腕組みしながら聞くオボロ


(んー派手にするのは……目立つし……獣殺すのは……何か嫌だし……)


 ブレインマウスで伝えるオボロ


『とりあえず俺がやってみるから……真似するなり対策考えて。それから派手に魔法は出さないように』


『ええ!わかりましたわオボロ様』


『うぅ……頑張って見るよぉ』


 アミュは力加減の方で不安の様子。


「少しは手加減も知らないと……王子様に嫌われてしまいますわよ?アミュ」


 変な発破をかけるクロネ。


「うぅ……お兄ちゃんとクロネちゃんのを……良く見るよぉ……アミュは……最後で良いっ!」


 オボロはちょっと待ってとトスクールに伝え、来た道を戻り物陰へ行く。

 周りを確認しD=D(ディメンション=ドア)から角錐(つのきり)を出してもらい装備する。メルがひょっこり顔を出し、可愛らしく応援してくれた。訓練場へ戻るオボロ。


 トスクールや他の関係者は城壁の上へ移動していた。

 中央へ歩くオボロ……。


(んー?ありゃ剣か?んー槍?何だ見たことないな)


 スコットはオボロの武器を不思議がっていた。


 背中から角錐をサッと抜き、構えたオボロ!


「いつでも大丈夫ですよ!」


 ━━!


 オボロの武器を見て驚くトスクール!


(あれは……あの角は……本当にシーサーペントを倒したのですね!)


「では……実技……はじめっ!」


 砂時計が落ち始める!


 五感のオーラを高め城壁を鋭く見る……見物人の話し声まで聴こえてしまい中々集中出来ないオボロ。鬱陶しいと思いつつ心を落ち着かせる。


 ━━城壁の小窓から放たれる矢!


 ━━城壁の裏から投石!


 矢をサッと躱し!降ってくる投石を角錐で叩き壊す!

 不定期にそして不規則に放たれる矢と投石!

 訓練場の広さを活かし、見極めながらのオボロ!


 ……


「魔法放たれまーす!」


 大きな声で伝えるトスクール。


 ━━城壁の別の小窓からアクアボール、ロックゲイザーが襲ってくる!


 それとは別に矢と投石!


(んにゃー魔法が厄介にゃ!)


 魔法耐性の低いオボロはオーラを巡らせ身体強化で凌ぐことにした!

 矢と投石は角錐で薙ぎ払い、魔法は避けられれば避け、間に合わなければ身を固め防御する……。


 ……


「あと数分!」


 トスクールが大声で伝える!


 間髪開けずに矢と投石そして魔法が襲ってくる!

 動き回るのが面倒くさく感じたオボロは、訓練場中央で角錐を地面に突き刺し構える!


 ━━んにゃー


「裂空爪・(たすき)!!」


 振り上げた二本の腕からオーラの斬撃がクロスし放たれた!


 矢も投石も魔法も全て切り裂き……城壁ギリギリで斬撃は消えた!


(オーラ抑えて良かった……城壁壊すところだったな……)


 ざわつく見物人達……。

 オボロの実技試験を見ているスコットは


(凄い……オボロさんほとんど無傷!)


「そこまで!」


 トスクールが終了を伝え、柵を開ける指示を出す。


 角錐を持ち、数歩下がるオボロ……。


 ━━バターン!


 柵が倒れ……中から唸り声を上げ……涎を垂らし、フォリッドウルフが猛烈な勢いで突進して来た!他のウルフと違い、額が大きく突出している。見るからにその突出部分での体当たりが得意だろうと、瞬時に判断するオボロ!


 直線的な突進なようで、目で追えば容易く避けれる。


(んーやっぱり殺すのは可哀想……試験とは言え……見物人もいるし……)


 フォリッドウルフは、果敢にオボロに突進して来る!


 ふわりと避け……


 フォリッドウルフの首を両腕でヘッドロックのように抱え込むオボロ!


 フガフガ声をあげ暴れるフォリッドウルフに、両腕の力を込めてじわじわと喉元を締め上げていく!


(これなら……血も出ないし大丈夫だろ?)


 ……


 ……


 フォリッドウルフの唸り声と悲鳴が治まり……涎だらけの舌が口から放り出された!


 ぐったりと身体が伸び、意識不明なフォリッドウルフ……。


 両腕を外し、立ち上がるオボロ。


 見物人から歓声が上がった!


「そ、それまで!」


 トスクールが終了を告げた。


(たいていの冒険者は、首を落としたり、魔法で倒したりするのにオボロさんは……少し変わっているのか?)


 そんな疑問を持つギルド長のトスクール。


 小刻みに尾を上下に動かし喜ぶクロネと両手を挙げて喜ぶアミュ。


(さすがオボロ様!私も派手にならぬようにしますわ)


「お兄ちゃんっ!やったぁ!凄い凄いっ!」


 オボロの実技の一部始終を見ていたスコット……


(実戦経験なきゃ……ここまで出来ないぞ……冒険者グレードで言ったら……俺より上……)


 グッと拳を握るスコット……


(ちょっと戦士の血が……騒ぐねぇ……)



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