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第1幕〜水嶋サキ・1

 

 ━━水嶋サキ

 青葉マキの3歳上の姉。

 職業 絶対定時の35歳のOL。

 そして、訳あってシングルマザー。

 息子 水嶋ダイキ 中学三年生。

 好きな物 妹マキと息子のダイキ。

 嫌いな物 アレコレ言い寄ってくる軽い男。


 青葉家が家族旅行へ出かけた日の昼下がり、サキとダイキは車で青葉家へ向かっていた。


 その頃テレビやネットニュースで、車両事故と土砂崩れの報道がされていた。


 スマホをいじってるダイキが「なぁ母ちゃん、事故と同時に土砂崩れだってよ」

 続けてダイキは

「爽太兄さんが旅行行ってる方面ぽいよ?」


「えっ?本当?」

 サキは答える。

「ちょっと待って!待って!」

 近くのコンビニの駐車場へ車を止めて、自分のスマホをチェックする。


 ……


 ……


「あー方面はあってるけど、あそこの旅館は何回か皆で行ってるから、その事故の道は走らないと思うよ〜」と、サキはあっけらかんと言う。


 爽太たちは、サキ家族と交流は良くあり、その旅館は何度も利用してて事故現場とは別なルートで毎回行ってたのである。


 ━━━━━が


 今日に限っては、普段のルートの道が工事で通行止めになっていたことは、知らないサキたちであった。


 ━━━そして夕方


 サキはダイキとともに青葉家の一軒家の玄関の前に立っている。


(さぁ今日はきぬちゃんと、絶対!絶対!仲良くなるぞー!)

 心に誓うサキ。


「行くわよ!ダイキ!」

 少し鼻息混じりなサキ。


 玄関に鍵を差し━━━


 ゆっくりドアを開ける。


 ………


「お、お邪魔しまぁぁす」

 何故か言葉が詰まるサキ。


 靴を脱ぎリビングへ。


 サキの後を追うダイキ。


 薄暗いリビング。

 電気を点けるサキ。


 しんとしたリビング。


 そろり、そろりとリビングを徘徊するサキ。

「きぬちゃーん?」

 キョロキョロしながら

「あれぇ?居ないかなぁ?」


 するとダイキが

「母ちゃん、そこ」

 リビングのとなりのフローリング、低いテーブルの、下に隠れていた。と、言うか避難した、きぬ。


 毎度のごとく、距離を取られ諦めたサキ。

「はぁー今回も……だめかぁー」

 肩を落とすサキ。


 ポンポンと肩を叩き

「いつものことじゃん」

 含み笑いをするダイキ。


「ふん!たまに私にだって甘えてくることあんのよ!」

 少しむくれて、ダイキに言い放つ。


「ふぅーん」

 ダイキはそう言って、ソファーでくつろぎ始めた。


 きぬは低いテーブルの下で、いつでも避難出来る態勢で固まっている。


(さ!マキに頼まれてたこと、やらなくちゃ)

 サキは行動に出る。


 頼まれてた事とは━━

 きぬの様子を見る事、ご飯と水、トイレの掃除。これだけであった。


 サキは作業をしながら、

「ちょっとダイキー。テレビつけてよー」


 リモコンを手に取りテレビをつけるダイキ。ニュース番組へ合わせる。


 どうやらどの局も事故のニュースを取り上げている……が、最新の情報が乏しい。


 事故現場周辺は広く暗雲立ち込め激しい雷雨のため報道ヘリが行けないようだ。


 流れてくる映像は、事故直後数時間たった、土砂に押し流され、その土砂に無数の車両が見え隠れする峠道の映像ばかり………。


 サキとダイキは

(こ、これは、ひどい映像)


 中継をしてる局もあった。

 現場付近には近づけず、少し離れたギリギリの場所で、アナウンサーが傘を差し雨合羽を着て、まるで台風の時の中継のように、声を荒げて中継している。


「母ちゃーん。ネットでもちゃんとしたの無さそう……」ダイキは、スマホいじりながら言う。


 ダイキの隣に座り、テレビを見入るサキ。

 テレビを見入るサキ。

 スマホをバッグから取り、TELをするサキ。

 ………

 ………

(マキに、繋がらない!)

 続けて再度TEL

 ………

 ………

(爽太君は、電源入ってない!)


 サキは不安と動揺にかられている!


 と、サキの足元に……


 なんと!さっきまでテーブルの上に居たきぬが、擦り寄ってきたのだ!


 サキは

「…きぬちゃん、心配なのかい?」きぬの足元スリスリに合わせて、手で頭を軽く撫でる。


 ダイキが、一言。 

「あー、泊まる予定の旅館に連絡してみたら?到着してるかどうかわかるんじゃない?」


 ━━━!


(なんて機転の効く息子!)

 サキは少し惚気た。


 早速サキは旅館へ問い合わせる!

 ……

 ……

「………はい」

 ………

「ええ……」

 ………

「青葉爽太で予約してると思うのですが……」

 ……

 ………

「わかりました……お忙しいところ、ありがとうございました……」


 ……ストン


 サキのスマホが、ソファーに落ちる……


「ねぇダイキ………爽太君たち……まだ……チェックインしてないって………」


 目を見開くダイキ。


 頭を抱えているサキ。


 リビングではテレビの中継の音声。


 きぬは、サキとダイキの座ってる間に、ちょこんと座っている。


 サキの脳内は不安と生存してるのか、もし生存してても無事ではない━━━悪い事ばかり巡っていた。


 ダイキはスマホを見て、最新情報を探すしているが、どれも不確定な情報ばかりで、やきもきしてる。


 ━━━プツン。


 頭を抱えたままテレビを消すサキ。


 静まり返るリビング………


 顔を持ち上げソファーから立ち上がるサキ。


「行くよ!ダイキ!」

 何かを決心したような、しっかりとした口調で言い放つサキ。


「お、おう。って、どこに!?まさか現場?」と慌てるように返すダイキ。


 被せるようにサキは

「警察よ!警察!………念の為、捜索願いってやつよ!」


 バッグを肩にかけ、スマホを握りしめ玄関へ向かう!


 後を追うダイキ。


 玄関の鍵をかけ車へ乗り込むサキたち。


 ━━━バッターン!!


 車のドアがいつもより激しく響く。


 サキは、複雑な気持ちで警察へ車を走らせる。


(マキ……爽太君………ナナちゃん………無事で居て)

(もう……これ以上……身内を………家族を………失いたく………ないの)


 サキたちが、慌てて出て行ってしまい、またお留守番のきぬは………


 ナナがいつも座っているテーブルの椅子に、ちょこんと座り帰りを待っているかのように遠くを見つめていた。


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