第5幕〜スーデルの町へ
第5幕始まりです。
是非序幕から読んでもらえると嬉しいです。
スーデルの町・ギルド長の部屋━━
ザザ村への定期行商人の護衛を終えた冒険者が、ギルド長のトスクールに報告をしていた。
「定期行商の護衛から戻りました!……えーと……ザザ村が……なんか変わってました!」
トスクールは目を釣り上げ
「どう変わってた?」
冒険者
「……ちょっと建物が立派になってて……子供が遊ぶような道具があって……それと……見慣れない猿が村近くの森に多数確認できました!」
少し悩むトスクール
「……猿?……村に被害や争った後は?もしあるなら……討伐も視野に━━」
「━━いやトスクールさん!そんな事はなかったです!猿とマーマンが談笑していたり、共に食事したりしてるのを見かけたので!」
口を挟む冒険者。
目を丸くし驚くトスクール。
「ほぉ………ザザ村の貝殻や魚の骨、鱗は何かと素材になるから、争った跡が無いなら……様子を見るか……」
冒険者
「はい!……それと……マーマン達が皆、口を揃えて……『オボロさんのおかげだ』と話しているのも聞きました!」
顎に手を当てトスクール
「……オボロ?……どこかで聞いたような……」
報告を終えた冒険者はギルド長の部屋を出て行った。
草原━━
世話になったセリーヌに別れをし、移動魔法陣で地上へ降りたオボロ達は、スーデルの町へ向けて歩き出す。道案内のホムンクルスのメルは茶トラの猫獣人オボロの頭に座り、魔獣の黒鳥でもある人型クロネは隣を歩き、魔獣ブラックウィドウの人型アミュとホムンクルスのホノカは、じゃれ合いながら歩く……。
(これでクロネもアミュも一緒に町へ入れるな!)
「おーい!ホノカもメルも……人間来たら直ぐ隠れてよ!」
再度忠告するオボロ。
メルが言うには、師匠のブラックウイングで飛べば、数時間で近くには行けるらしく……歩けば……半日以上はかかるかも、と。
ちょうど良さそうな木陰があったので休憩することに。快晴でそよ風が心地よい。D=Dからメル、チビちゃん、ホノカが色々出して来る……。簡易テーブルと椅子……人数分のコップと飲み物と、おやつ的な食べ物。
「みんな、おっ待たせ!」
元気良く伝えるメル!
ホノカとからかい合いながらもこの手際の良さと準備は、目を見張るものがあるとオボロは感心し、俺達のために健気に一生懸命になれるメル達には感謝しかないとも感じた。
それぞれ椅子に座りメル達はテーブルに座り休む……。
クロネがひと言
「あのオボロ様?アミュみたいに足を保護する物は着けないので?……足の肉球が痛むかと思いまして……」
素朴な疑問を投げかけられたオボロは、足の肉球を見て触り
「んーにゃ!大丈夫だ!靴って言うのだけれど、この肉球のままの方が動きやすい!……心配ありがとうなクロネ」
下を向き……コップでちびちびジュースを飲むアミュ
「……せっかくメル達が作ってくれたお洋服……汚したくないな……」
ポツリと呟いた。
サッと立ち上がるメル!
「アミュ?もしかしてそんな事気にしながら……遊んだり戦ったりしてたの?」
「……うーん」
しょぼくれて返事するアミュ。
「良い?アミュもクロネの服も……二人の糸と羽を中心に作成したの!自分の魔力使えば、ある程度修復可能よっ!」
━━!
初耳なクロネとアミュ!
顔を上げ、口から牙を出しカチカチ鳴らして喜ぶアミュ!
「そーだったんだ!心配して損したぁ!さすがメルだねっ!」
アミュの幼い片手とメルの小さな両手でタッチする。
「あっ!マスターは魔力少ないから……無理です……」
残念なお知らせを聞いてしまうオボロ……。そっと羽で肩を触れて同情するクロネ。
メルが説明するには、この先に麦畑があり農道を進めば町が見えてくるそう。一行はテーブルや椅子を片付け出発した。
麦畑近辺━━
薄茶色の広大な麦畑が風に揺られ実を実らせている。オボロよりも少し高く成長してる麦。メルとホノカは町が近いのでD=D内へ戻った。アミュは自分よりも大きな麦を見上げながら歩き、クロネは羽先で麦の実を触れながら歩く。
(ガイアールでの麦はこんなにも成長するんだ……)
元居た世界と比べてしまうオボロ。
━━!
人が数人倒れている!
革の鎧や盾を持った人、剣や弓を持った人……。
『クロネ、アミュ警戒!俺は負傷者を助ける』
ブレインマウスで伝え駆け足で負傷者の元へ向かうオボロ。
(人間なんて助けなくてもいいのでは?)
と、思いつつ羽扇子を構え警戒するクロネと撚糸輪を両手に持つアミュ。
負傷者に声を掛けながらチャクラで傷や怪我を治療するオボロ。聞けばギルドの依頼で麦畑の見廻りの最中に麦食いに襲われてしまったとのこと。まだ麦畑に潜んで居て隊長がまだ戦闘中らしい。
━━ガサガサ!バサバサバサッ!
一人の剣士が麦畑から飛ばされて来た!
麦畑から……麦食いが実った麦を食べながら現れた!身長は人間とほぼ同じくらい、口がラッパのような形で二足歩行。手で穂を掴み、そのラッパ形状の口で実を吸い込んでいる!
何とか構えている剣士……。
(見廻りだからと言って油断してた!麦食いがあんなに居たとは……)
オボロとアミュは剣士の前に立ち構える!クロネはオボロと入れ違いに負傷者の前へ
(冒険者か?いや違う……獣人?それと……子供?)
麦食いが頰を膨らませラッパ形状の口から何かを飛ばして来た!
━━闇巻き!
横からクロネが緩やかな闇巻きで麦食い達を巻き込み宙へ放り出した!落下してくる麦食いらをオボロは「裂空爪」アミュは「撚糸輪」で切り裂く!……落下したときには息絶えていた。
剣士は唖然と
(い、一撃?それに連携が上手く取れていたようにも……)
振り返りオボロ
「危ない所だったにゃ?」
手を差し出す。
恐る恐る手を取り、立ち上がる剣士。
「助けてもらい……ありがとうございます!……ん?あれ?あなたは……いつぞやの獣人さんでは?」
ジロジロ見られるオボロ。
「そーだよ!この毛色!ふさふさな毛並み!……そこのスーデルの町の冒険者のスコットですよ!」
手を取り合うスコット。
(……だ、誰だっけ?)
「あ、あぁー!スコットさんね……あっ!俺はオボロと言います」
話を合わせてしまったオボロ……。
スコットはギルドの依頼と新人冒険者の訓練のために麦畑の見廻りをしていた時に、麦食いに出会わせてしまったと説明してくれた。さらに、町の噴水広場でオボロに声をかけてた事も話してくれた。
(あっ!そういえば初めて町に入って町長の家から出てきた所で、話しかけてくれた人居たっけな……)
何となく思いだしたオボロ。
「町に寄るのなら、案内しますよ!オボロさん!今回のお礼も兼ねて!ギルドにたいてい居ますから声掛けて下さい!」
新人冒険者を連れて、町へ戻って行くスコット。皆怪我をしてるせいか……歩く速さが遅い……。
━━クロネとアミュが見当たらない!
『オボロ様……少し離れた所で……その……食事をさせてもらってます』
クロネからブレインマウスを受け取り、向かうオボロ。
魔獣化したクロネとアミュが、先程倒した麦食いを食べていた……。
(やっぱりそうなるよね……)
食事中の二匹を見守るオボロ。
「はい!これお兄ちゃんのぶんっ!クロネちゃんと相談して良い部分探したよっ!」
と、肉質が良さそうな部分を渡してくれたアミュ。
「二人ともありがとう」
D=Dからホノカを呼び、焼いてもらい、熱々の麦食いの肉を食らうオボロ。筋が多めでぼそぼそな肉……元人間としては決して美味しいとは思わないが、獣人のオボロとしては問題無く食べられた。残された麦食いの骨をホノカが回収し始めた。聞くとメルに素材になるからと言われたらしい。メルの収集癖が良い事なのか悪い事なのかは、未だ判断つかないオボロ……。
(骨……かぁ……俺とマキちゃんの骨……見つかって無いだろうな……。かなり転げ落ちた感じだったし……)
骨を回収しているホノカを眺めながら、自分の、爽太の最後を思い出すオボロ……。
陽が落ちてきた……。
町が見える手前くらいまで歩き、木陰で野営することに。
食事は先程済ませたので、メルがテーブルに水を用意してくれた。
オボロは、クロネとアミュに明日には町に入るから再度注意を促した。人を襲わない、自分の許可無く魔獣化しない、アミュは人型でもお尻から糸を出さないなど……。ここは嫌な顔をされても従って貰わないとダメだと言う気持ちで告げた。クロネは人間臭さに、アミュは人間に慣れるかどうか不安だろうが……自分が教えたり、説得するしか無いだろうとも考えた。
クロネもアミュも、それぞれ思う所はあるようだが、血の盟約のおかげか、素直に聞き入れてくれた。
アミュにハンモックのように巣を張ってもらい眠りにつくオボロ達……。
薄茶色の麦に月明かりが照らされる夜……。
いよいよ明日は人間の住む町へ行く事になる……。
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