幕間〜舞台装置探訪
幕間は気楽に読んでもらってかまいませんよ。
カメラを回すチビ……
カメラ前には……メルとホノカがどちらがメインかで言い争っていた!
一旦カメラを止めたチビ。
メル「だーかーらー!ここは私がメインで仕切るの!」
ホノカ「えー良いじゃん!オレもやりてぇー」
メル「ホノカ絶対、火ぃ吹くでしょ?」
ホノカ「大丈夫だって!」
と言う口からは火と煙が漏れてる!
メル「どこが大丈夫なのよぉぉ!」
ぷんぷん怒るメル。
ホノカ「超低温なら大丈夫だって!」
メル「……それでも……ダッメェェエエ工!!……みんな驚くでしょ!」
ホノカ「……わーったよぉ」
しぶしぶ諦めたホノカ。
メル「今日は大人しく私のアシスタントでね」
二つ返事のホノカ。
再びカメラを回すチビ。
穏やかな音楽と共に……
メル「はい!始まりました!メルの舞台装置探訪!……待機してる舞台装置を……ただただ巡ると言うコーナーです!」
ホノカ(え?それだけなん?)
すーっと飛び、裏へ待機してる舞台装置へ向かうメル。
途中すれ違う裏方さん達へ、挨拶するメル。
メル「あっ!お疲れ様です!お疲れ様でーす!」
ホノカも合わせて、ぺこぺこ挨拶する……。
メル「さぁお待たせしました!……こちらの舞台装置は……」
何故かドラムロール!
メル「じゃーん!第4幕でメイン舞台だった私と師匠の工房でーす!」
無駄な拍手が入る!
メル「まずは……庭!」
庭全体を映すカメラマンチビ!
メル「んー小さな私達にとっては……広すぎますよね!」
移動するメル。
タライが映された。
メル「ここはちょっと……恥ずかしいなぁ……マスターに……水浴びしてるのを見られちゃった……」
頰を染めて伝えるメル。
ホノカ(そんなに恥ずかしいことかぁ?オレなら全然問題ないけどよ)
工房前に移動するメル。
メル「年期の入ったドアですねぇ……その古さを大道具さんや美術さんが、魂を込めて作ってくれました!……私と師匠は……ここのドアを何回開け閉めしたとこか……」
工房ドアを開けるメル。
キィーっと音が出る。
侵入するメル達……
メル「んー照明入ってないと……薄暗いですねぇ……」
━━誰か居る!
その方向にカメラをサッと向けるチビ!
そこには━━!
第4幕を終えたセリーヌが、研究机の椅子にキィキィと音を立てて黄昏れるように座っていた!
メル「しぃしょぉぉう!おーつーかーれーさーまー!」
飛んで行くメル!
研究机の重なった本に座るメル。ついでに隣にホノカも座る。良い感じなアングルにカメラを持って行くチビ。
セリーヌ「お疲れ様メル、それにホノカとチビまで……出番無くなった私に……何か用?」
桂を脱ぎ、胸から詰め物を取り出すセリーヌ。
━━!!
メル「えぇー!師匠……詐欺な胸、だったんですね……」
ショックを隠せないメル!
セリーヌ「あーほら、前も言ったじゃない?……声質がピッタリだから……選ばれたってさ……だから……外見は……見ての通り……」
桂に、詰め物に……特殊メイク……。
メル「それでも……ショックだよぉぉ」
ホノカ(オレのが一番じゃん?)
両手で胸を下から持ち上げ、ぽよんぽよんさせてる。
横目で見ているメル……。
自分のと比べてしまうメル……。
(ふんっ!大きいからって偉そうに!)
気を取り直し
メル「第4幕は師匠が居ないと成り立たなかったですね!戦闘したり、怒ったり、笑ったり、泣いたりと大変でしたが……演じてみていかがでしょうか?」
……
……
下を向いたり、上を向いたりしているセリーヌ……。
その間、カメラマンのチビは工房の大部屋のセットや小道具を映す。
散乱したセリーヌの服や肌着……転がった酒の空き瓶……古めかしいテーブルやソファー、本棚や壁をひとつひとつ映す。どの小道具もセットも、忠実に再現されている。
セリーヌ「まさかのアクションからのスタートだったから……稽古してたとはいえ……緊張はしたかな」
メル「うんうん!私は師匠の華麗な魔法陣に見惚れちゃってた!クロネには悪いけど……」
セリーヌ「そうね……私の見せ場だから、頑張ったよ」
メル「優しい師匠や叱る師匠、茶化す師匠や切ない師匠……それから……泣いちゃう師匠……感情の起伏が激しかったですが……苦労した所はありますか?」
……
……
椅子をキィキィ言わせ思案してるセリーヌ……。
その間研究机やメル、ホノカの顔を映すカメラマンチビ。
長く愛用した羽ペンとジョッキ……元は光沢あったであろう古くなった燭台……倒れてる酒瓶……重ねられた本……。
ホノカはぼんやりしていた……口から煙を漏らして……。
メルはセリーヌにマイクを向けるタイミングを計っている。
セリーヌ「感情の起伏のタイミングには気を配ったかな……細かな表情やその感情に入る前の仕草だったり……後ろの席のお客さんにはわかりにくかったですよね……」
メル「うんうん!」
セリーヌ「……やはり泣く演技は……苦労したし努力もしたわ……演出さんに何度も何度も叱られ、アドバイスされ……灰皿も投げられたわ……」
メル「そこは軽快に避けましたよね?師匠?」
セリーヌ「演出さんも、そこまでバカじゃないわ……少し離して投げてたから……」
メル「残念!軽快に避ける師匠見たかったぁぁ!」
セリーヌ「それに別れの後の大泣き……しっかり溜めて……シーンを思い返して……やり遂げましたね!」
メル「私も……叱られたり、喜んだり、泣いたり……頑張ってたでしょ?師匠?」
セリーヌ「二人で残って稽古……したもんね……心に残るシーンだったって言われたいよね!」
メルは感慨深くふんふんと頷く。
舞台装置の工房ドアが開く━━!
???「あら?薄暗くて……見にくいわね……」
素早くカメラを向けるチビ!
━━羽を外したクロネが居た!
クロネ「セリーヌ居るかしら?」
メル「居ますよ!居まーす!」
ホノカは超低温ブレスを数回か吐き、辺りを照らす。
メル「気が利くじゃない?」
ホノカ「たまにはな!」
クロネはセリーヌの前に来て
「第4幕お疲れ様でしたわ……よろしければ……こちらをどうぞ」
と、紙皿に乗せた色とりどりのクッキーを研究机に置いた!
クロネ「お口に合うかどうか……」
メルとホノカ、チビはクッキーに釘付け!
セリーヌ「クロネさん、ありがとう!頂くわ」
一枚手に取り口へ運ぶ……。
カリッ━━!
セリーヌ「うん……甘さも控え目で美味しいわ」
……
クロネ「台本を読んだ時……貴女と戦闘シーンがある事に驚いたわ……」
セリーヌ「ええ、私も同じよ」
クロネ・セリーヌは、同じ気持ちで微笑み合う。
クロネ「『似たようなキャラは一人で良いのよー』……私の気に入ってる台詞よ」
セリーヌ「そこ私も好きよ……後はクロネの恋心を茶化したり……煽ったりする台詞は……好き」
お互いクスクス笑い合う。
メル「クロネも師匠も……仲良さそうですね!」
クロネ「ほらメル達も食べて?クッキー」
その台詞を待ってましたとばかりに、聞き入れるメル達!
紙皿の周りに座り……両手でクッキーを持ち……口の中いっぱいに頬張る!
クロネ・セリーヌ「食べている姿も可愛らしい……」
中継そっちのけで、クッキーに夢中になってしまうメル、ホノカ、チビ……。




