第4幕〜師匠
新たに働き手の二体のホムンクルスを生成したメル!翌日に張り切ってもう二体生成させ……合計四体!セリーヌ設定の目標の五体まで……あと一体!集中力が無くならぬうちに、生成し始めるメル!産まれたホムンクルスの初期教育はメルノートとチビちゃんに任せた。ホノカは居ると、邪魔されてしまうのでオボロ達のお世話係にさせた。
生成基に素材のシーサーペントの鱗一枚を静かに沈める……。他の四体も、同じ素材で成功したので同様にした。
オボロの血と……毛取りした抜け毛を摘んで入れ……ゆっくり魔力を注ぐ……。
しばらく放置して様子を見る……。
培養液が循環し……コポコポ……コポンコポン……と音が響く……。
D=Dの開放状態の維持の訓練しながら本を読むオボロ……。魔力をここ数日使用し続けたせいか……頬が少しやつれた……。
(魔力って……こんなにも神経使うんだな……クロネやアミュは……平然としてるのに……)
改めて思い知るオボロ……。
D=Dを出たり入ったりしてるホノカ……。
「すっげーなマスターここ!火ぃ吹いても問題ねーぞ!」
「火事だけは……やめてくれよ?ホノカー」
火災=財産をも失うことの恐ろしさを知ってるオボロ。
奥の部屋━━
床に体育座りで生成基を眺めてるメル……。
(五体揃ったら……マスターと旅の続き……師匠とも……お別れかぁ……ぐすっぐすっ)
涙ぐんでしまうメル。
生成基に変化の兆しが━━!
底の素材の鱗が……カタカタ、コトコト動き、振動する!
生成基の前に行き、集中し魔力を注ぐ!
(このタイミングよっ!)
素材が生成基中心へ浮かび……粘土状になり人型へ変化して行く!そして背中から薄い羽が生えて来る!
メルが観察するに、先に羽から型どられたり、身体から変化したりと順番はまちまち。それでも生成出来てるから問題無しと判断していた。
培養液の中で静かに目を開けるホムンクルス……。メルをじっと見つめ……羽に力を入れ……培養液からふわり飛び上がった!そしてメルの前に立ち、マスターだと思い鳴き声を発した。
「産まれて来てくれてありがとう!私はメル!マスターは別に居るから後で紹介するね!」
と、メルは告げ、お決まりの台詞になりそうだなと感じた。
(ふぅー!五体完成っと!)
気が抜けたのか……床でひと眠りしてしまうメル。チビちゃんが、薄い布を静かにメルに掛けてあげた。
大部屋━━
オボロは、ガイアールの地理や地形に関する本を読んでいた。実際は半分くらいしか理解出来ないが……何も知らないよりは良い。
魔法陣の訓練をしていたクロネが涼しげな顔で戻って来た……と、思いきや空いているソファーになだれ込むように、ドサッと座った!
「は、張り切り過ぎましたわ……」
クロネを気遣いホノカに水分補給を促すオボロ。ぐびぐび飲み干したクロネ。
……ゆっくりと時が経過……
奥の部屋からメルを先頭に現れた!
「マスター!師匠!皆を紹介するね!」
ずらりと並ぶホムンクルス達!一応チビちゃんとホノカも並んでいた!他の五体のホムンクルス達は髪型、髪色、羽の数や着ているワンピースがそれぞれ違う。
セリーヌとオボロを交互に見てるメル……。
(あれ?順序的にはどっちから紹介すべきなのよー?師匠が先……?……んーんマスターが先?……わからなーい!!)
恐る恐るセリーヌに目で訴えるメル……。
ため息ひとつ、頭を抱えたセリーヌは、研究机の陰に手を隠しオボロの方を指差した!
(ありがとうー師匠ぉぉ!)
オボロの前に移動するメル一同!
「マスター!お待たせ!やっと働き手のホムンクルスが出来たよ!……はい!みんな!前に居るのがマスターで、隣のお姉さんがクロネで、こっちのお子様がアミュ!……じゃー挨拶して!」
ホムンクルス達は各々挨拶する。
「ピッピッ」
「ピピピ」
と、鳴き声と頭を下げたり、ワンピースの裾を持ち上げたりと様々。
最後にオボロの周りを歌うように鳴き声を出し、列を組み踊ってくれた!……透き通る羽の色鮮やかさと、愛らしい鳴き声が印象的。紹介されたクロネは優しく微笑み、アミュは綺麗だなと感じ……口をポカンと開けていた。
拍手をしそれぞれのホムンクルス達を肉球に乗せてみるオボロ。
「メルの言う事をしっかり聞いてね。これからよろしく!チビちゃんもホノカも、先輩ホムンクルスとして励むように!」
続いてセリーヌの方へ向かうメル一同。
「……師匠ぉぉ!頑張りました!……えーと私の師匠のセリーヌ。はい挨拶してー」
先程と同じ様に、歌うように鳴き声を出し、列になり舞う!ホムンクルス達にこんな挨拶されてしまい目頭が熱くなるセリーヌ。
「私は、どうでも良いさね……名前くらい覚えて貰えれば……メルの手伝いをやってくれさね」
(オボロちゃん達とは……そろそろお別れさね……)
そうも想うと……切なくなるセリーヌ……。
と、セリーヌは、自分のホムンクルス達に何か指示した。
中央のテーブルに……二基の生成基!
「ほらさ、頑張ったご褒美と……今まで一緒に居てくれた……お礼さね!」
照れながらメルに伝えるセリーヌ。
その言葉を受け……じわじわと涙ぐむメル!
「……じぃじょぉぉう!!あびがどぉぉう!……ひっぐすっぐすっ……今度は……大事に…使うね……ぐすっぐすっ」
自分のホムンクルスにD=Dに運ばせたメル。
「マスター……中で色々作業してるね……」
すぅーっと虹彩うごめくD=Dへ消えて行くメル。
メル達が居なくなると……騒々しさが無くなる……。
(メルの目標も達成できたし、そろそろかな)
と、考えてたオボロ。
「オボロちゃーん?そろそろ町へ向かうんだろ?」
セリーヌに見抜かれたかのようなタイミングで言われたオボロ!
━━!
「あはは……さすがセリーヌさん……察しが良いですね!それは考えてましたよ!……明日、明後日には……スーデルの町へ行ければと考えてますよ」
ゆっくり頷くセリーヌ。
「それじゃ今夜は少し豪勢に食事さね!」
セリーヌのホムンクルス達が食事の準備で慌ただしく動き始めた!
翌朝━━
アミュはセリーヌと本棚の前に居た。何冊か目ぼしい本をアミュに譲っていた。ニコニコしながら本を抱えてオボロの所へ来る。
「お兄ちゃんっ!セリーヌからもらった!預かっててくれる?」
と、本を渡される……。表紙をちらっと見ると……動物や植物の図鑑ばかり……。受け取りD=Dへ放り込むオボロ。ついでにメルを呼び出し、そろそろ出発する旨を伝えた。
工房を見渡すオボロ。
(セリーヌさんには迷惑かけたけど……得るものは多かったな……メルとの出会い、魔法陣の扱い方とD=D……そして血の盟約……クロネとアミュが不自由無く町に入ることが出来そうだ!……きちんとお礼は言わないと!)
色々思い出すオボロ……。
「良し!行こう!」
先に外に居るクロネ達に合流するオボロ……。
庭・移動魔法陣前━━
セリーヌ、クロネ、アミュが揃って待っていた!
歩いて合流するオボロ。
セリーヌがクロネ達に何か話していた。
「良いさね?二人とも!しっかり盟主であるオボロちゃんを守ることさね!クロネは大丈夫そうだが……アミュは心配さね……この前伝えた事忘れてないさね?」
頭を上げ……思い出すアミュ。
「……うん!ちゃんと周りを確認して魔法を使うことっ!」
「そうさね、そうさね!」
優しく頭を撫でるセリーヌ。
そのままクロネの隣に行き……耳元で
「しっかりオボロちゃんの手綱握ってないと……取られちゃうさね?」
細目でにたにたしながら告げたセリーヌ!
顔が赤くなるクロネ!
(まったく私の気持ちと苦労も知らない癖に……。でも……魔法の事指導してもらったし……)
「わ、わかってますわよ!」
クスクス笑ってるセリーヌ。
と、オボロとメルが合流。
(話が弾んでるのかな?)
「お待たせしました!」
手を挙げたオボロ。
セリーヌから話しかけられた。
「オボロちゃん!メルの事頼んださね!もう一度言うけど……メル達は人前も単独行動もダメさね!そこはメル?責任持って教育しなさね!……それと……D=Dも人前では極力控えることさね!」
「はい!ありがとうございますセリーヌさん!」
「わかってるよぉ!師匠!」
オボロ、メルそれぞれ返事する。
「セリーヌさん!こんな俺達に、色々親切にしてくれて、そして無理な協力をしてもらって……何とお礼を言って良いか……」
割り込むセリーヌ。
「良いさね!私はオボロちゃん達が気に入っただけさね!……私こそ……こんなに楽しく会話したのは久しぶりさね……」
後頭部を撫でながらオボロ。
「嬉しいような……恥ずかしいような……何かあったら頼りにさせてもらいますよ!」
移動魔法陣に乗るオボロ達!
と、オボロからブレインマウスが━━
『出発の挨拶は……で、行くからね』
クロネ、アミュ、メル共に頷く!
セリーヌが見守る中、移動魔法陣を発動するメル!
オボロ
「せーのっ!」
全員
「ありがとう!師匠!」
手を振るオボロ達……。
ゆっくりと下降する魔法陣……。
……
見えなくなる魔法陣……。
メル以外に師匠と呼ばれ、動揺するセリーヌ!
「ふふ……まぁ……悪くはないさね……」
と、強がるセリーヌ……
……
━━オボロ達との日々と、メルとの数十年の生活の日々が、頭の中で目まぐるしく展開されていた……。
膝を崩しその場にしゃがみこむセリーヌ!
溢れる涙……別れの寂しさ……頼りにされた嬉しさ……。
折り重なり……
両手で目を隠し年甲斐もなく大泣きしてしまうセリーヌ……。
長く真っ青な髪が地面に着くほど頭を下げ、大泣き……。
「……楽しくて、充実した日々だったさね……私こそ……ありがとうさね……」
心情が声になった。
第4幕〜終幕




