第4幕〜多忙なメル
鼻歌交じりで工房へ戻って来たメル。大部屋に居る皆を素通りし奥の部屋へ行ってしまった……。
四基並んだ生成基を睨むメル!
(さぁて……やるぞー!)
素材置き場から、可能性の有りそうなものを、サクサク見繕い……生成基へ放り込む!はぐれ島やザザ村、洋館で拾って来たもの……鉱石、骨、牙、金属……。それぞれにオボロの血とメルの魔力を注ぐ……。
次の魔力を注ぐまでの間、休まずに動き回る!
ホノカを捕まえて、櫛と袋を渡し……オボロの毛取りを頼む!チビには生成基の見張りと、素材置き場の整理や雑務……。
大部屋に戻っていたオボロにメル
「ちょっとマスター!D=Dを開放状態にしててくれる?」
と、言い放ちどこかへ飛んで行く……。
「ようやく……やる気出したさね……」
呟くセリーヌ。
「そうそうオボロちゃん?魔法使い続ければ、わずかだけど魔力量は増えると思うさね!」
思い出したかのように伝えるセリーヌ。
それはありがたいと思い、自分の隣にD=Dを出し扉も開放させた!
数分後━━
ゼェゼェと息を切らすオボロ……。
「ふふっ根気よく、焦らずコツコツすることさね」
優しく声掛けするセリーヌ。
今日のオボロは、セリーヌの戸棚の本を読み知識を深めることと、D=Dの開放状態の維持となった……。
アミュは……床で例の図鑑(ガイアールの生き物大図鑑)を捕食行動を必死に抑え、よだれが垂れるのを我慢しながら眺めている……。
クロネは庭を飛びながら、魔法陣の扱い方を自分なりに試している。セリーヌのように上手くいかず苦戦している。
オボロの毛取りを終えたホノカはメルの元へ。奪うように袋を取り、それぞれの生成基に摘んで落として行き、順に魔力を注いで行く……。
「意外と……大変だな……」
慌ただしく動くメルを目で追いながら呟くホノカ……。
魔力を注ぎ終えたメル……ぶつぶつ何か言っている……。
「ここはオッケー……隣は……なんか違う……その隣は……保留で……端のは……なんか良い感じ?」
生成基の前を行ったり来たり……考え事しながら……。
(師匠に聞いても……適当な教え方だったしね……)
「そうさね!そんな雰囲気さね!とか……素材は……閃きさね!とか……魔力配分は……優しくさね!とか……良くそれで私達が産まれたものよね……」
セリーヌの真似をするメル……。
……こっそり様子を見に来てたセリーヌ!
コンコン━━!
壁をノックする音!
「へーぇ?そうやって私の真似したからって……産まれないさね?━━メ・ル・師・匠?」
にたにたするセリーヌに気付くメル!
飛び回り慌てまくるメル!
「げっ!?し、し、師匠?聞いてたの?今の聞いてたの?」
耳をほじりながらセリーヌ。
「あぁバッチリさね!メ・ル・師・匠」
くどいセリーヌ……。
部屋を見渡すセリーヌ……。
━━!
五基あった生成基が……四基しか無い!部屋の隅にひっそりと置かれた生成基の残骸……。
「メル?どういう事さね!」
語気を強め迫るセリーヌ!
(やばい!言うの忘れてたー!!)
「えーとこれは……ですねぇ……私じゃなくて……その……ホノカが……産まれた時に……壊してしまって……」
しどろもどろなメル!
「生成基作るのに時間も材料もかかるのは……知ってるさね?」
詰め寄るセリーヌ!
縮こまるメル!
「……知ってますぅ……」
呆れ顔でセリーヌ
「まぁ……壊れてしまった物は仕方ないさね……で、この素材の山は片付けてくれるんさね?」
床に直立不動になるメル!
「は、はいっ!師匠!ホノカ隊員と共に片付けるでありますっ!」
何故か敬礼してるメル!
続けてセリーヌ
「それと……最低五体は居ないと苦労するのはメル!あんたさね?ちなみに……チビとホノカは……ノーカウントさね」
追い打ちをかけられるメル!
「うぅぅ……やりますよぉぉ……」
セリーヌの圧力に潰されそうな……メル。
大部屋に戻って来たセリーヌ……。ホムンクルス達が話しかけている……。それぞれのホムンクルスに話しかけ何やら指示したり、頭を撫でたりコミュニケーション的なこともしていた。
その光景を見ていたオボロ……。
(たまに口は悪いけど……面倒見は良いよな)
と、感心していた。
床に寝そべり本を読んでいたアミュ━━
「セリーヌ……紙が挟まってたっ!」
と、折りたたまれ薄汚れた紙を手渡した。
受け取り紙を広げるセリーヌ……。
(こんな図鑑に魔法紙が入ってたとは……)
「ほーぅ!やるじゃないさアミュ!」
アミュ「?」
「確かアミュは……土魔法に適切あったさね?」
確認するセリーヌ!
「うんっ!あるよっ!」
元気な返事のアミュ。
「魔法紙さね!これ!……ロックピラーって魔法さね!アミュにピッタリさね!ダメ元で契約してみるさね?」
口から牙を出しモゴモゴさせお悩み中なアミュ……。
両肩に手を置き、やってみようと声をかけるオボロ。
「うんっ!やってみるっ!」
指先に針を刺し魔法紙の魔法陣に血を垂らす……。魔力を込め……魔法陣が光出す!その魔法紙を自分に当てる……。魔法陣がアミュに吸い込まれて……残った紙は灰となった!
「成功したさね!」
「アミュ強くなったっ?」
ニコニコしてる。
頭に手を添えオボロ。
「強くなったかはわからないけど……ひとつお利口さんになったんだよ!」
園児を褒めるように話しかけた。
早速使って見ると言い、庭へ行ったアミュ!
庭━━
クロネは多重魔法陣の練習をしていた。大きい魔法陣で二つ、小さな魔法陣で三つが限度のようだ……。それぞれでエアカッターを放ち確認していた……。
と、人型のアミュがひょこっと庭へ来る!
足元に普通な魔法陣……。
何かしでかさないかとヒヤヒヤしてるクロネ……。
「えぃ!ロックピラー!」
魔法陣からゴツゴツした円形石柱が勢い良く飛び出す!!高さはクロネの倍近くあるだろうか……。
(あら?あんな魔法使えてたかしら?)
と、気付くクロネ……。
なんか喜んでるアミュは……
魔法陣を足元に三つ並べた!
「んんーえぃ!ロックピラー!」
三つの魔法陣から三本の石柱が!!
見上げてるアミュ。
「うわぁ!これ凄いっ!」
(これならお兄ちゃんもっ!クロネちゃんもっ!守れそう!)
満足したようで工房へ戻って行くアミュ!
とりあえず、アミュの魔法で大事は避けたいクロネであった……。
工房・大部屋━━
開放状態中のD=D……。
メル、ホノカ、チビちゃんが素材と言うガラクタを何度も往復し、せっせと運んでいる……。D=Dの隣ではオボロが本を読んでいるが……ちょろちょろと視界に入り……集中出来ない……。本を閉じ……手伝おうとすると……メルにピシャリと止められ……チビちゃんにも首を横に振られ……拒否……ホノカに至っては……超低温ファイアーブレスを吹かれる始末……。
そのやり取りをセリーヌのホムンクルス達が心配そうに見ていた……。ケラケラ笑いながらセリーヌは
「オボロちゃんは……ドッシリと構えてれば良いさね!」
とは言われたが……性分なので手伝いたいオボロ……。
少し息を切らせながら素材を運んで来たメルにオボロは休憩を勧める……。
「えー?大丈夫だよマスター!ホノカもチビちゃんも、お手伝いしてくれてるから!……でも……心配ありがとう!」
サッサと奥の部屋へ行ってしまう……。
「メル達ホムンクルスは……病気もしないし、睡眠もそんなにしなくても問題ないさね!自己管理は出来るから心配無用さね!」
セリーヌは話してくれた。
「まぁ……セリーヌさんが……そこまで言うなら……」
半分納得するオボロ。
奥の部屋━━
素材片付けも終わりそうなので、ホノカとチビちゃんに残りを任せたメルは生成基に魔力を注いでいた。
━━!
四基のうち二基の素材が変化し始めた!
(あっ!この感じだ!)
目を閉じ集中し魔力を注ぐメル!
注ぎ終わり祈るように様子を見る……。
素材から薄い膜の羽が生え……
人型へ変化する……
培養液の中心で体育座りのようになり……浮いている!
(後は目を開けてくれれば!)
……
……
━━!
ほぼ同時に二体のホムンクルスが目を開けた!
「やった━━━!」
両手を挙げて喜ぶメル!
パチャーン!パチャーン!
培養液から飛び出した二体のホムンクルスが、メルの前に近づき……鳴き声を出す。
「ピ……ピピ」
「ピッピッ」
小さな両腕で二体を一緒に力強く抱きしめたメル!
「産まれて来てくれて……ありがとう……私は……メル!マスターは別に居るから……後で紹介するね」
少し苦しそうな産まれたてのホムンクルス達……。
━━セリーヌが決めた目標まで……
あと……三体……。
【能力】
・アミュ
ロックピラー




