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第4幕〜これからの指針

 

 ガイアールで娘のナナの誕生日を独りで祝うオボロ……。


 静まり返る寝室……。


(……直感と言うか……感じると言うか……ナナは元居た世界で生きているのかも!ガイアールでは無いとも言い切れないが……元居た世界のように強く感じる……)


 薄明かりの中、考えをまとめるオボロ。


(だとしたら……元居た世界になんとかして戻る方法が無いか探らないと!)


 両脇のクロネとアミュを起こさぬように……そぉーっとベッドを降り部屋を出る……。


 少し経過して……起きてしまったメル……。両腕を伸ばし欠伸する……。


(あれ?マスター居ない……)


 工房の大部屋へ行くオボロ……。


 灯りがまだ灯っていた!


 隅の研究机でセリーヌが酒を……いや!本を読んでいた!研究机には、真面目で勤勉なチビちゃんも一緒に読んでいた。


 声をかけるオボロ。


「お酒は辞めたのですか?……珍しく本を読んでて……」


 オボロに気付き、本を閉じその上に別の本を置いたセリーヌ……。


「おや?オボロちゃんかい?」


 椅子から立ち、研究机とは反対にあるソファーに腰掛けるセリーヌ。


 閉じた本のタイトルは━━


「ホムンクルスの生成と飼育」


 パタパタチビちゃんが寄ってきて、寝て起きたからなのか……


「マスター……オハヨ……」


 と、言って去っていく……。


 オボロとセリーヌはクスクス笑う。


(まだ夜なのに!)


 細目になり顔を傾げて……胸元を強調しセリーヌ


「でぇ?……クロネが相手してくれないからぁ……私に……夜這いしようとか考えてるさね?」


 ━━!


 両手を前に出し、後退りしながらオボロ━━


「ちょっと!何言ってるのセリーヌさん?違うってっ!!クロネが相手してくれないとかって━━やっぱり酔ってる?」


「……クロネがもたもたするからさね!」


 小声でぼそりと呟くセリーヌ。


(?……何か言ったような……)


 顔を通常に戻しセリーヌ。


「冗談さね、オボロちゃん!……こんな時間にどうしたさね?」


 一歩前へ出る……真剣な面持ちなオボロ。


「単刀直入に聞きます!俺が……元の世界に戻る方法があれば……教えて欲しい!!」


 膝を組み換え……考え込むセリーヌ……。オボロが転生しこの世界に存在してることは、それとなくは聞いている……。


(まず転生と言う言葉自体、ここでは聞いたことないさね……別世界がある事を知る人なんてまず居ないだろうさね……私の知ってる知識では……)


 思案するセリーヌの邪魔するようにオボロ━━


「━━この世界には魔法がありますよね?……だったら俺を元の世界へ戻す魔法とかありませんか?噂でも何でも構いません!」


(ちょっとオボロちゃん?何か焦っている?少し変さね……)


「とりあえず落ち着くさねオボロちゃん!」


 手首をクイクイ下げ、なだめるセリーヌ。


「す、すいません……セリーヌさん……さっき元居た世界の人の歌声と……娘の『ナナ』って言葉が聴こえたもので……」


 少し落ち着きを戻すオボロ……。


 真剣な顔でセリーヌ。


「今の私の知識では……無い!」


 ━━!


 肩をがっくしと落とすオボロ……。


「そう気を落としなさんな……可能性だけど……【固有魔法】と【有能な魔法使い】なら……」


 一見使い道無さそうな固有魔法でも……使い方次第では……化ける固有魔法もあるはず。そしてそれを魔法陣や知識を使い実現可能な魔法使いがいれば可能性はあると。


「あくまでも……可能性、さね」


 お手上げ気味に手を挙げ、話すセリーヌ。


 それでも真剣に聞いたオボロ。


「いえ!可能性あるなら……希望は捨てません!」


 諦めて無い顔のオボロ!


 固有魔法を持つ者自体見つけるのは難しいから、この辺だと王国が所有してる固有魔法紙を何とかして見るくらいとアドバイスしてくれたセリーヌ。


(王国、かぁ……要はお偉いさんが居るんだろ?)


「あのぉ……俺みたいのがすんなり王国に出入りって……」


 自信なく聞くオボロ。


「━━うん!厳しいさね!」


 あっさり答えたセリーヌ。


「そうさねぇ……オボロちゃんの名が広まって有名にでもなれば……関係者から声はかかる可能性はあるかもさね」


 肉球をぽむっと叩きオボロ


「おぉ!なるほど!」


「スーデルの町でギルド登録するつもりさね?冒険者として名を揚げれば……良いさね!」


 ピシッと指差し言い切るセリーヌ!


(ナナが異世界の小説読んでて……ギルドがどうだとか……冒険者があーだとか……話してたっけな……)


 思い出したオボロ。


「ありがとうセリーヌさん!ぼんやりだけど……目標と言うか……進むべき道が見えてきました!」


 目を閉じ頷くセリーヌ。

 オボロの後方に何やら気配を感じたセリーヌ!


「道は険しいかもさね?……それに……オボロちゃんには頼りになる仲間も居るさね!……フフッ……一匹やかましいのはいるようだけどさね?」


 ━━!


 もの凄い羽音が後ろから聞こえた!!


「んもーぅ!!ぜぇーたいっ私のことでしょっ?師匠━━!!」


 オボロを通り過ぎ━━セリーヌに体当たりしたメル!!


 ━━ぽふぅぅぅん!


 少し態勢をずらし谷間に当たるようし嘲笑うセリーヌ!


「んっはっはっはっ━!」


 セリーヌの谷間に両手でグーパンチを浴びせるメル!


 ぽこぽこっ!ぽよんぼよん!


 可愛らしい音がした……。


「くぅぅ!バカ師匠!バカ師匠!このっ!このっ!」


 そのやり取りを大笑いして見届けるオボロ。


「はははっ!セリーヌさん、メルは良いムードメーカーですよ?俺は頼りにしてますよ!」


 サッと振り返り、今度はオボロの胸元へ飛んで行くメル。

 もふもふにしがみつき━━


「さっすがマスター!どっかの誰かと違って……扱いが出来てる!」


 首だけ動かしあっかんべーをセリーヌに飛ばすメル!


 苦笑いのセリーヌ!


「ふん!トラブルメーカーの間違いさね!」


 と、そっぽを向く。


 むくれてメル


「ふーん!違うもーんだっ!」


 ぱっと顔を上げ上目遣いで━━


「私……頑張るから!マスターのためにね!」


 と、愛らしくアピールするメル。


 その憎めない愛らしさに思わず微笑み返すオボロ。


「あぁ!頼むぞ?メル!」


 そっぽを向いていたセリーヌ。


「……私と長く一緒に居たから、それなりに知識はあるさね!頭でっかちだけど……そこだけは頼りにしても良いさね!」


 まだ、もふもふにしがみつきながらメル。


「ひと言余計だよぉぉ……師匠はぁぁ……」


 と、文句を溢す。


 ━━窓から朝陽が差してきた!


 しがみついたメルごとオボロは工房から出て庭へ行く。


 真横からの朝陽がオボロの顔を照らす……


 手で影を作り、座れそうな岩に腰掛けたオボロは、眩しくて目を細めてしまう。

 メルはお腹のもふもふにしがみついたまま。


「なぁ、メル?……本当に俺が……いや……爽太が……海に投げ捨てた銀の翼のネックレスなの?」


 確認したかったオボロ……。


 もふもふにしがみつきながらメル。


「産まれた時から……マスターに会うまでは……気にもしてなかったし……知らなかったよ」


「そうなんだな……」


「最初にマスターに会った時……懐かしいって気持ちが溢れて……『マキ』って名前に……温かさ、を感じたの!」


 うんうんと頷くオボロ。


「そのあたりから……私の身体の中に銀の翼が……ふわり……ふわりって浮かび出て……マスターの爽太の時の記憶とか……気持ち……それと……『マキ』の記憶と……気持ち……断片的だけど……理解するようになったの!」


(やっぱり爽太の記憶がメルの中にあったんだな!)


 疑念から確信へと変わったオボロ。


 もふもふから離れ、朝陽を背に浮遊したメルは━━


 胸元で手を重ね合わせ━━


 微笑み━━


「……私は……マスターも……爽太も……どっちも大事!」


 指先まで伸ばし両手を広げた!


 メルの透き通る四枚の羽が朝陽に照らされ━━煌めく!


 小さな小さな天使が現れたように思え、見惚れてしまうオボロ!


(凄く……綺麗……)


「ちょっとマスター?じぃーって……いつまで見てるのよぉ━━!」


(なんか……恥ずかしいじゃないのよ……)


 ━━!


 腰に手を当て、ぷんぷんしてるいつものメルになっていた!


「いや、メルの羽が……凄く綺麗だったから、つい……」


 感想のような言い訳のようなオボロ。


「もぅ!私はやる事あって忙しいから!」


 と、告げて工房へ戻って行った……。


 後ろで手を組み、楽しそうにそして、踊るように飛んで行く後ろ姿を見届けたオボロ。



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