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第4幕〜ハッピーバースデー

前の話と続けて読んでもらえると効果的です。

 

 7月7日はナナの14歳の誕生日!


 青葉家では、平日だろうが休日だろうが誕生日は家族だけで祝う習慣になっていた。子供のナナは、それとは別の休日に、友達を呼んでの誕生日会を開催するので、実質2回誕生日を祝えるお得なイベントでもあった━━


 ━━去年までは!


 今年は……パパもママも居ない誕生日……サキとダイ兄ときぬ、おぼろと誕生日を迎える。もしかしたら……独りで誕生日を迎えたかも知れないナナ……。


 誕生日当日━━


 生憎の平日であった……。サキは有給をわざわざ取り、買い出しや料理の準備をする。

 サキ家族と青葉家の交流は頻繁にあり、家族旅行や誕生日などイベント事は都合が付けばやり合うほど。

 毎年購入してる馴染みのケーキ屋さんで受け取りをし、商店街を抜け帰宅する。途中、商店街の店員や顔馴染みに声をかけられ……立ち話……。一年も利用してば自然とそうなってしまう。

 帰宅し、きぬとおぼろのお世話をしオードブルやその他の準備に取り掛かる。血は繋がっては居ないが……可愛い姪っ子のため!寂しく無いように……貧しく無いようにしてきたと自負するサキ!ダイキには迷惑かけているのは承知のうえで……。準備もひと通り済ませソファーでくつろぐサキ。


(ねぇマキ?……せめてナナちゃんが成人するくらいまでは……一緒に居ても……良いよね?)


 スマホのアルバムに保存されているマキや爽太との写真を見ながら想うサキ……。


 と、ナナが元気良く帰宅した!おぼろもきぬも玄関でお出迎え!部活を休んでまでして帰って来た!ちなみに部活は……読書部。友人のモモカちゃんが既に入部しており、一年生の終わりに入部したナナ。基本各々好きな本を読むだけの部活……。ナナとモモカちゃんは、流行りのライトノベルを好んで読む。二人とも異世界転生や異世界恋愛が好きなようで交換し合って読むほどの仲。小さい頃から魔法少女系は好きだったため、ライトノベルにはすんなりのめり込めた。

 ナナの帰宅から二時間ほど遅れてダイキが帰宅……。外が暑いのはわかるが……ポロシャツが絞れるくらい汗びっしょりで戻って来た!強制的にシャワーをさせられる。遅くなった理由は……ナナへの誕生日プレゼントをギリギリまで悩んでいた事だった。


 夜━━


 テーブルには所狭しとオードブルが並べられ中央には蝋燭が13本立てられたケーキ!もちろんオードブルの中にはナナの好物の豆腐料理もある!目を輝かせテーブルを見渡すナナ。


「うっわぁぁ!ありがとう!サキさん!」


 テーブルに両手を置き前のめりで喜びを伝えるナナ。

 照れながらもサキ


「作ったのと、買ってきたのが……半々くらいかなぁー」


 シャワー終わりのダイキも着席し……ポケットから袋を取り出す……。少しくしゃくしゃな紙袋になってしまっていた……。


「……これ……誕生日おめでと……ナナ」


 照れて片手でプレゼントするダイキ……。


「じゃー私からも!」


 と、サキはラッピングされた細長い箱を手渡し


「誕生日、おめでとう!」


「私と……マキと爽太くんからね!」


 二人の名前が出た途端、泣きそうに顔を緩ませてしまうナナ!堪えて……


「うん!ありがとう!サキさん、ダイ兄!……先に開けても……良い?」


 サキもダイキも頷く。


 目を左右に動かし……どちらから開けようか迷うナナ……。

 先にダイキの方から開ける……。しわくちゃの紙袋を開けて中身を出す。


 ━━彫金の栞!


 ナナの誕生日の七夕にちなんだのか、天の川の流れるデザインの彫金の栞!ダイキはライトノベルが好きなナナには良いだろうと、考え抜いてこれにしたと、ぼそぼそと伝えた……。


「長く使えそう!嬉しいよ!ダイ兄!」


 ニコリと微笑むナナ!

 その微笑みに……毎回ドキッとしてしまうダイキ。


 そしてサキからのプレゼントを開ける……。リボンのラッピングを解き……ケースをパカッと開けると━━━


 ━━チェーンのネックレスに指輪が二つ通されていた!


「???」


 首を傾げるナナ……。目の細かなシルバーのネックレスに、見た事がある様な指輪が……二つ……。

 その指輪を指でつまみじっくりと観察する……。

 サキは、黙ってナナを見ている……。


 ━━!


 何かに気付き……両目の目尻から、綺麗に一本の涙が流れ……床に落ちた!


「サキさん……これって……?」


 静かに頷くサキ。


 それぞれの指輪の裏側に、マキと爽太と……自分の、ナナの名前が刻印されていた!


 ━━パパとママの結婚指輪!


(……確か私が産まれてから、ママの提案で私の名前を刻印してもらったって話してたような……)


「付けて見せて?ナナちゃん」


 優しく話しかけるサキ。


 金具を外し……身に着けたナナ。

 二つの指輪はちょうど鎖骨より少し下に位置するくらい。


(なんか指輪のあたりが……温かい……)


「うんうん!似合う!似合う!ちょっと大人になったんじゃない?」


 と、茶化すサキ!


「そ、そんな事ないよぉ━!……でも……嬉しい!……パパとママが……ここにいるみたいで……」


 と、胸元の二つの指輪を手で包み込むナナ。


「大切にするねっ!サキさんありがとう!」


 と、笑顔で答えたナナの顔は……事故以前の時の笑顔に近くなって来ていたように感じたサキ。


(パパ……ママ……私は今……サキさんとダイ兄と一緒に住んでるよ……。きぬにね?オスの子猫産まれたんだよ!もちろん名前は……前から決めていた『おぼろ』……私達を……見守ってね)


 二つの指輪を優しく握り、目を瞑り願ったナナ。


 ━━パンッ!


 サキが手を叩く!

 ダイキがケーキの蝋燭に火をつけ始めた!サキは一本の火が灯った蝋燭をナナに手渡す!


 受け取りケーキに静かに刺す……。


 ダイキが部屋の明かりを消す!


 リビングには揺らめく蝋燭の灯火が三人の顔を照らす!


 着席する三人。

 ナナはおぼろを捕まえて膝の上に置き、背中を撫でている。気分良さそうなおぼろ……。


 サキが数回咳払いし、誕生日の歌を歌い始めた━━


 ハッピーバースデー


 トゥーユー


 ハッピーバースデー


 トゥーユー



 ハッピーバースデー



 ディーア




 ナナちゃーん!

『ナーナー』



 ━━!


 時が止まったかのように、皆気付く!



 ━━おぼろの鳴き声!



 はっきりと『ナーナー』と鳴いていた!


 おぼろを抱き上げたナナ!


「私の名前呼んだの?ねぇ!おぼろぉー!さっき『ナーナー』って鳴いたよね?」


 興奮気味なナナ!


 抱き上げられたおぼろは、尻尾を揺らして喉をゴロゴロと鳴らし、ペロッペロッと口を舐め……ひとつ大欠伸をしていた!


「……たまたま、なのかな?」


 また膝上におぼろを置き、人差し指で顎を優しく撫でるナナ。


 おぼろの首輪の肉球アクセサリーが……ほんのり光った!


 残りの一小節を歌うサキ。


 ハッピーバースデートゥーユー


「14歳おめでとう!ナナちゃん!」


 口元が歪み泣きそうなナナ!

 鼻を啜り


「んずっんずっ……ありがとう!サキさん!ダイ兄っ!……今日の事は絶対、忘れないよ!」



 セリーヌの工房・寝室━━


 一つの大きなベッド……。

 クロネ、オボロ、アミュの順で川の字で寝ている……。

 メルとホノカはおぼろの頭付近で丸くなり寝ている……。


 静寂な寝室……。


 聞こえるのは寝息……。


 ……ディ


 ……ユー


 ……バースデー


 ……トゥーユー


 聞き覚えある歌が聞こえたオボロ!


「んんん……」


 ……ハッピーバースデー


 ……ディーア




 ……ナナちゃーん!




 ━━!



「ナナ!?」



 ガバッと勢い良く起き上がったオボロ!

 周りを見ると……クロネ、アミュが寝ている見慣れた光景……。寝ている間に、元居た世界へ戻れたのかと勘違いするくらいはっきりと聴こえていた歌声!


(んーなんか聞き覚えある声なような……。もしかしてナナの誕生日会なのか?……だとしたら……元居た世界で……生きてる?)


 そんな推測を立てるオボロ!


 ……


(誕生日迎えたんだなナナ……いくつになったんだい?……歳を取って……少しは大人に近づけたかな?……パパは……遠くに居るけど……見守っているからね!)


 などと、思いふけるオボロ……。


 オボロの【願いの首輪】が、鈍く光る!


 なんか顎が……むず痒い!


 撫でられていたような感覚


 顎をしゃくり上げ、触り確認する……。


 ナナを想い、考えて嬉しいのか……ゴロゴロ鳴る喉。


 小声で誕生日の歌を口ずさむオボロ……。


 ……



 ……



 独唱し、妙な恥ずかしさが込み上げてしまった!



「ハッピーバースデー」



「ナナ」




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