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第4幕〜メルとホノカ

 

 大空に消えて行くホノカのファイアブレス!


 見事な火力に驚いたオボロ達!


(火だ!火だ!……待望の火!)


 心で喜んでいたオボロ!


 クロネ(何やらライバル臭がしますわ!)


 アミュ(すっごい火だったっ!)


 セリーヌ(色々と謎だが……メルを褒めておかないとさね)


 と、反応はバラバラ。


 ホノカを呼ぶオボロ━━急降下で向かって来た!


「はいっマスター!」


 背筋伸ばし返事をする!


「ホノカは火が扱えるの?」


 オボロは質問。


 横を向き……口から炎を吐いてみせるホノカ!


「おー!マスター!……ファイアブレス!温度調節も可能!……あっ!さっきのは熱く無かったでしょ?マスター?」


 と、手を口に添えてクスクス笑うホノカ。


(だから熱く無かったのか!)


「きっと……いや!必ずホノカの火が俺達の役に立つから……期待してるぞ!」


 と、やたら持ち上げるオボロ!


 指先をツンツン合わせながら


「ま、ま、任せとけっ!マスター!」


 照れ混じりで答えたホノカ。


 やり取りを後ろで見ていたメル。


(はぁぁ……私にホノカ……教育出来るかなぁ……?)


 自身を無くし欠けてたメル。


 と、手招きしてるセリーヌに気付き、近づく。


「詳しことは後さね……マスターとメルは同格さね!自信持ちなさね!」


 と、小声で告げた。


「うっ!うぅっ!ひっくっ!しぃしょぉぉう!頑張るよぉぉ!」


 半べそなメルを優しく手で包むセリーヌ……。


(これだけ長く一緒に居たんだ……あんたの事は……たいていわかるさね……)


 両手を広げるセリーヌ。そこから飛び立ちホノカの元へ行くメル。


「はいっ!ほらっ!ホノカ!マスターから呼んでもらえたんだから……今度は私の番っ!」


 後頭部に両手を回し口笛を吹くホノカ。時折口から火が漏れ出す!


 ━━!


 ゆっくりセリーヌの方を向き助けを求めるかのようなメル……。


「しぃーしょぉぉうぅぅ!!」


 困り果てたセリーヌ……。

 前へ進み……大きな咳払いをひとつ!


「私はセリーヌ。メルを生成したマスターさね。訳あって今のマスターはオボロちゃんさね。そしてホノカ!あんたはメルが生成したさね!序列を重んじれば……オボロちゃんとメルは同格さね!」


 鋭い目付きのセリーヌ……。普段とは違い力強い口調。


「ほらっ!オボロちゃんがきちんと言わないと……ホムンクルスの規律が乱れるさね!」


 バッチーン!と尻を叩くセリーヌ!


 クスっと後ろで笑ってしまうクロネとアミュ。


 叩かれたお尻を手で保護しながらオボロ……


「俺とメルは……強い信頼で結ばれてる!だからホノカ!メルの言う事も信用して聞いて欲しい!直ぐに、とは言わない……時間をかけてメルと仲良くなって欲しいな」


(やだぁマスターったら……強い信頼とか)


 身体をくねらせ喜んでいるメル。


(強い信頼ですって?私とはどうなのです?ねぇ?オボロ様?)


 もの凄く気になってしまうクロネ……。


 腕組みしてるホノカ……。


「マスターがそこまで言うなら……わーったよっ!」


 あまり納得してなさそう……。


「ホノカ!さっ!戻って教育よっ!」


 手を取り工房へ戻るメルとホノカ……。


 工房内・大部屋━━


 オボロ達はテーブルを囲み軽く食事中。セリーヌのホムンクルス達が用意してくれた食事。魔力を使い空腹なのかオボロもクロネもアミュも普段よりも食べた。


 談笑してる中……セリーヌが口を割る。あのホノカって子は働き手と言うよりは……戦闘向きではないかと、推測を話してくれた。それに……火を吹くホムンクルスなど見たことも聞いたことも無い、と。その推測にクロネも賛同していた。強気で真っ直ぐな性格、火を吐くと言ってもあの火力では戦闘も可能、と。二人の意見を聞くオボロも、薄々は感じていた……。あれだけの火力……魔法と似た感覚……。事の真意は本人に聞くしか無いだろうと……。アミュはそんな事どうでも良さそうな顔をして、残り物をもぐりもぐりと貪っていた。


 と、ヘロヘロに飛ぶメルとは対称に勢い良く飛んでくるホノカ!その後ろからチビちゃん。

 セリーヌは三人をテーブル中央に立たせた。キョロキョロする三人。まず、セリーヌはホノカの素材は何かをメルに問い正した!メルは思い出しながら……


「んーと……私の魔力と……【赤い魔石】でしょ……マスターの血液……あとこっそり抜いたマスターの口髭!」


(メルめっ!寝てる時か!)


 口元を触るオボロ。


 ドンッ━━!


 ジョッキを勢い良くテーブルに置くセリーヌ!


 一同驚く!


 ため息を漏らしセリーヌ


「メールー?魔石は貴重だってあれほど言ってたさね?」


(あちゃー!師匠に叱られるとは思ってたけど……)


「あっ!えーとぉ?鉱石とか鱗じゃ上手く行かなかったからぁ?何か他に無いかなぁって探してたらぁ?……培養液に入れちゃってたぁ?」


 意味不明な身振り手振りと半疑問形で、乗り切ろうとするメル!


 手を振りかぶるセリーヌ!


「ひ━━━っ!」


 頭に手を乗せしゃがみ込むメル!


 手を下ろしセリーヌ。


「まぁ……ホノカの素材が何か判明したから……良いさね……」


 セリーヌの顔色を伺い安心したメル。


(貴重な魔石からの成功率は低いから、試してなかったけど……間近で成功例を見せられては……試したくなるさねぇ)


 広角を上げ、にたにたしてるセリーヌ。


 貴重な魔石を使ってしまい必死にオボロに土下座しているメル!気にするなと落ち着かせてるオボロ。


「で、ホノカは……もしかして戦えたりするの?」


 ズバリ聞くオボロ。


 即座に返答するホノカ!


「当然だぜ!マスター!何でも丸焼きにするぜ!」


 ガッツポーズを決め、超低温の炎を吐くホノカ!


 しばらく考えているオボロ……。


「ありがとう!ホノカ!助けて欲しかったら呼ぶから……それ以外はメルとチビちゃんの手伝いをしてくれないかな?」


 ━━!


(素晴らしいさね!その対応)

(さすがオボロ様。当たり障りない言い方)

 感心するセリーヌとクロネ。


「オッケー!マスター!」


 ガッツポーズのまま返事をし……


「仕方ないから手伝うぜ!メル!」


 と、上から目線のホノカ!


 何か立場が危ういメル……。


「はぁ……もう!マスターの旅を少しでも楽にするのが私達の務めなのっ!やる事沢山あるんだから、しっかりしてよね?」


 立ち上がりホノカの手を引くメル。


「さっ!続き、するわよぉー」


 と、言いながら奥の部屋へ戻った。


D=D(ディメンション=ドア)の中も賑やかになりそうだな!メルには苦労かけるけど……頑張ってもらおう)


 そんな事を思うオボロ。


 まだ残り物をもぐりもぐり貪っているアミュを見てクロネは


「ねぇ?アミュ?魔法使う時、魔獣化に戻るのはなぜ?」


 と質問。

 それにはセリーヌも何となく気にはなっていた。


 貪ってたのを……ゴクリと飲み込みアミュ


「んーとねっ!そっちの方が魔法出しやすいのっ!人型だと……なんか上手くいかない……」


 それを受けクロネ


「私が欲張りなのかしらね……確かに魔獣化してた方が扱いやすいとは感じてましたわ……」


 顎に手を添え、考えながら呟くクロネ。


 二人のやり取りを聞くセリーヌ……。


「扱いやすい方でするのが良いさね!戦闘では何が起こるかわからない……クロネは深く考えず教えた魔法陣を使いこなすことさね!」


「ありがとうございます。セリーヌ!」


 目を見て返事をするクロネ。


「……それとアミュ!魔力の強さの加減を知りなさい!戦う場所、相手、周囲に危険や無関係な人が居ないか確認すること!」


 強めに言われ、下を向いてしまうアミュ……。


「少しきつく言ったけど……きっとオボロちゃんが悲しむ事になるさね……」


 顔を上げアミュ


「うんっ!お兄ちゃんが悲しむのは……やだっ!」


 口から牙をニョキリと出し、笑顔で答えたアミュ!


「ありがとうセリーヌ」

「アミュのために、すいませんね、セリーヌさん」


 と、クロネとオボロが感謝を伝える。


 工房・奥の部屋━━


 メルとチビのアシスタントによるホノカの教育が再開されていた。


 しぶしぶ教育ノートを眺めているホノカ……。木の枝を持ち手のひらにパチパチ当てて監督する!さながら鬼教師のように……。ホムンクルス自体、学習能力はどういう原理だか不明だが……獣人や人間よりも非常に高く、器用である!


「メルー……だいたい理解したぞぉ?もう良くね?……そうだ!要らない物あれば燃やすぜ?」


 と、火を吹くホノカ!


「無いっ!無い無い無い無━━いっ!何かしら利用価値は有るの!」


 木の枝をフンフン振り回し、反抗するメル!


「そんなカリカリしなさんな!マスターに笑われるぜ?」


 メルより高く飛び指を指して言い返すホノカ!


「カリカリしてないもんっ!」


 木の枝を振り回し、ホノカに反撃するメル!


 軽々と避け、舌をペロッと出し、追って来たメルをヒラリとかわすホノカ!


 しばらく続く無駄な鬼ごっこ……。


 気弱なチビは止めようとしてるが……中々止めに入れない……。


「はぁ……はぁ……ふぅ……」


 床に崩した正座になり、息切れしてるメル……。


 まだまだ動けるアピールのホノカ!


「……ホノカは凄いね……速く飛べるし……火も吹ける……私には……何も……無い……」


 涙ぐむメル……


「ひっくひっくっ……マスターを守りたいのに……術が無い……ぐすっぐすっ……それでも……マスターのために……一生懸命……頑張るの!」


 涙を手のひらで拭い……


「……ぐすっぐすっひっ……私のお手伝いも……して欲しい……けど……ちゃんとマスターの事……ひっぐすっ……守ってよね?ホノカ!」


 空中でメルの声を聞くホノカ……


(ったく……繊細と言うか喜怒哀楽が激しいと言うか……なんか放っとけ無いんだよな……)


 頭をポリポリ掻きながら……静かに降りるホノカ……。


「わーったよ!ほら立ちなよ!」


 手を差し出すホノカ。


 手を取り立ち上がるメル。ほんのりホノカの手のひらが熱い。


「この中じゃメルがトップなんだろ?……それは理解したよ……まぁ、俺は大雑把な所あっけどよ……よろしくな!」


 ━━!


 泣きじゃくりながらホノカに抱きつくメル!


「うわーんっ!ひっひっくっ!ありがとぉぉう!ホノカァァァ!」


 顔を背け照れながらホノカ


「マ、マスターのため!……だからな!」


「うんうん!それでも良いよぉぉぉ!」


 ホノカの胸で涙を拭くメル……。


「わっ!ちょっとやめろー!汚れる!」


 突っ放すホノカ!


「えー?良いじゃん!減る物じゃないんだしぃ!」


 少し赤い目のメルは舌をペロッと出して天井まで飛ぶ!


 顔を上げ天井まで飛び目線を同じにするホノカ!


「その小綺麗なワンピース……灰にするぞ?」


 炎を吐き脅すホノカ!


「それはダメェェェ!」


 精一杯逃げ回るメル!


 そんな互いをからかい合う光景がしばらく続く…。


 床から見上げていたチビちゃん


「メル……ホノカ……ナカヨシ……」


 安心したのか……そんな気持ちが言葉になり呟かれた……。




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