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第4幕〜セリーヌの魔法塾・②

 

 ひと通り解説し終えたセリーヌは質問を受け付けた。


 即座にクロネが質問する。解説してもらっていない覇級魔法と天級魔法、その他の魔法陣について。


 しばらく考えているセリーヌ……。何やら小難しい顔をしていた……。口から出てきた言葉は……


「今は魔法陣の扱い方を会得し、戦闘に活かせる事を優先さね!」


 と、やんわりはぐらかされてしまった……。


 恐る恐る手を挙げたオボロ。


「はーい!オボロちゃん!」


 ピシッと指差した。


「えと……少ない魔力量の俺でも……魔法陣をその……伸縮魔法陣ってやつ……可能ですか?セリーヌさん?」


 自信無く質問するオボロ……。


 オボロをじっくり観察するセリーヌ……。


 ……


 妙な緊張感が走る!


 ……


「まずは魔法陣を素早く展開出来るようになったら、試すと良いさね!コツは……頭に魔法陣を描く時に大きさも意識することさね!」


 と、アドバイスしてくれたセリーヌ。自由に訓練すれば良いと言い、何かあったら聞きに来てと言い残し工房へ戻るセリーヌ。


 目を瞑り何か集中してるクロネ……。邪魔しちゃ悪いと感じ、眠たそうにしてるアミュを抱えて一旦工房へ戻るオボロ。


(絶対アミュは後半話聞いてなかったよな……)


 心配してしまうオボロ。


 以前集中しているクロネ。


(使える魔法はエアカッターとアクアボールのみ……魔法陣の扱いが容易になれば……決定打にはなりませんが相手への牽制くらいには、なりますわ!)


 カッ!と目を見開くクロネ!


 サッと立ち上がり……魔法陣を展開……。


(大きく……広く……意識……)


 特に反応無しな魔法陣……。


(広く大きく!広く大きく!)


 集中力が途切れそうなクロネ!


「はぁぁぁぁ!」


 一気に広がる魔法陣!


 自分よりもはみ出るほどの魔法陣になった!!


(出来たわ!慣れないからかしら……魔力の減り方が多く感じますわ)


 間を開けず、小さい魔法陣に挑戦するクロネ。


(今度は……小さく……狭く……小さく……狭く……)


 魔法陣が小さくなって行く!

 最終的には手のひらに収まる程度になった!

 ひと呼吸するクロネ……。


(小さくする方が比較的簡単でしたわ)


 手のひらの魔法陣を見つめるクロネ。


 前に出し唱える━━


「エアカッター」


 ヒュン━━!


 かなりの速度で小さな三日月型が大空へ消えて行く!


 そして大きな魔法陣でエアカッターを放ってみる。


 ビューン━━!


 目で追うのが容易い速度で、厚く大きな三日月型が飛んで行った!


(かなりの差がありますわね。使う判断は重要ですわ)


 試して解析するクロネ。



 工房内大部屋━━


 ソファーにアミュを寝かせるオボロ。なんか幸せそうな寝顔のアミュ。セリーヌはやっと酒が飲めるぞと言う雰囲気でグラスに注いでいた。


 ……メルが見当たらない……。


 酒をグイッと飲み、メルなら今試練与えてるから、ここには居ないと教えてくれたセリーヌ。メルの働き手として最低五体は生成し使えるように教育すると言う試練らしい。


「オボロちゃんの血も生成に使ってるから……生成された子はマスターをオボロちゃんだと認識してくれるはずさね!」


(なるほど……だから採血して保管してたのか)


「メルには驚かされてばかりですよ!セリーヌさん」


「やかましいだけさね」


 呆れ顔で答えるセリーヌ。


 手を振りオボロ


「いやいやそんな事ありません!薬草や素材や雑学的な知識もあって、器用だし、助かってます!」


 お世辞ではなく感じた通り話す。


 ふぅんと目を細め疑う態度のセリーヌ……。


「まぁ、あそこまで啖呵切ってオボロちゃんに付いて行くって言ったんだ!しっかりしてもらわないと……師匠としての面子が保てないさね……」


 同意するように頷くオボロ。


「いたずらするし、やかましいし、顔の周り飛んで鬱陶しいし……それでも彼女は……メルは……ずっと……私と一緒に居てくれてたからね……どうか可愛がって欲しいさね」


 涙を堪えたのか?天井をしばらく見上げていたセリーヌ。


 どう言葉を掛けて良いか悩むオボロ……。


 研究机を数体のホムンクルスが、片付けをしている……。


「メルは……アミュと良く遊んだりしてくれるので、助かってますよ」


 顔を正面に向けるセリーヌ。


「ふふふ。無邪気な子供らしい所が合うのかねぇ?」


「ははは!セリーヌさんの言う通りですよ!ザザ村では二人してちょっかい出しながら砂遊びしてましたし!」


 二人のエピソードを色々セリーヌに話して聞かせたオボロ。聞いているセリーヌの顔は……娘を嫁に出した母親のように切なくも、しっかり育てたと言う満足感があるように感じたオボロ。

 そして魔法陣の訓練をしに庭へ行く。


 アミュは気持ち良くお昼寝中……。ここ最近はお昼寝が欠かせないようだ……。


 工房・庭━━


 岩壁付近の椅子で休憩してるクロネがいた。

 調子を尋ねるオボロ。


「見て下さい!オボロ様!」


 と、器用に魔法陣を広げたり小さくしたりして見せてくれるクロネ。


(上達早いなクロネは)


「えっ?こんなに小さく出来るの?」


 手のひらサイズの魔法陣をまじまじと見るオボロ。


 手が触れ合い……はにかんでしまうクロネ。


(あぁ!オボロ様のお手!ずっとこのままで良いですのよ?)


 と、気持ちを高ぶらせたクロネ。


「んにゃ!俺もやってみるかにゃ!」


 肩をぐりんぐりん回すオボロ。


(意識……拡大……縮小……)


 脳裏に魔法陣は描かれてはいるが……大して変化しない……。


「んにゃにゃにゃー!」


 息むオボロ。


(真剣なオボロ様も可愛らしいわ)


 うっとり眺めているクロネ。


(拡大!縮小!拡大!縮小!意識!意識!)


 ……


「ぷっはぁー!……直ぐには無理にゃぁ……」


 地面に寝そべるオボロ。


 と、うっとり眺めていたクロネ。


「あっ!あの……オボロ様の……好きな物や……その……あの……好きな雌を、ですね……それを……大きくしたり……小さくしては……どうでしょうか?」


 恥ずかしながらもアドバイスしてみたクロネ。

 事実クロネが出来たきっかけは……オボロをイメージして大きくしたり、小さくしてたからであった。そんな事は流石に言えず、濁して伝えたクロネ。


「にゃるほどっ!それはわかりやすいかも!」


 ぽんと、手を叩くオボロ!

 あぐらをかき、思い描く……。


(好きな物……好きな物……マキちゃんの作ったアップルパイかなぁ……)


「むむむ……ぐむむむっ」


 またも息むオボロ。


 頭の中に魔法陣とマキ、それとアップルパイが浮かぶ……。


(大きいアップルパイ、大きいアップルパイ……大きなマキちゃん……大きなマキちゃん……)


 繰り返し意識し続ける……。


「んんんむむ━━」


「んっにゃー!ダメだぁ!」


 両手を広げ寝転がるオボロ。


(ここはもうひと声!)


「私、小さい魔法陣の方がやりやすかったですわよ?」


 と、伝えたクロネ。


(あーそっちも試すか)

「うんうん。試してみるよ!クロネ」


 テーブルに頬杖を付き、頑張るオボロを眺めるクロネ。


(小さいアップルパイ、小さいアップルパイ、小さいマキちゃん、小さいマキちゃん、小さいマキちゃん……)


 繰り返し意識する……


 オボロの右手から通常の魔法陣が現れている……。


(小さく小さく……小さく小さく……小さいマキちゃん!小さいマキちゃん!)


 ━━!


 ゆっくりではあるが魔法陣の円が徐々に小さくなりかけた!


(あっ!頑張って下さい!オボロ様!)

 両手を重ね合わせ祈るクロネ。


「んむむむ!……むむっ!」


 ━━!


 時間はかかったが、手のひらサイズの魔法陣となり、小さな扉のD=D(ディメンション=ドア)が発動した!


「やったにゃ━!クロネ━━!」


 飛び上がり、座ってるクロネの両手を取り踊るように喜ぶオボロ!!


「えぇオボロ様!私も自分の事のように嬉しいですわ!」


 クロネは尾を叩くように激しく上下させながら、オボロと喜びあった!


(あぁ!今日は……なんて素敵な日!)


 やたらと感情的なクロネ。


(魔法ってやっぱり凄いな!D=D(ディメンション=ドア)を使いこなせるようにならないと!)


 クロネと喜びながら思うオボロ。


「あの……オボロ様は……何を思い描いたのでしょうか?」


 思い切って聞くクロネ!


 ━━!


 踊りを止めたオボロ!


 繋いでいた手を離すオボロ!


 ……


「内緒!だよ?クロネ!」


 斜め上を見て、照れながら告げるオボロ……。


(……私では……無さそう……ですわね……)


 サッ!と、羽扇子を広げ自分の口元へ運び……そのままの態勢でオボロの顔に、口元に迫るクロネ!二人の口の間には、一枚の羽扇子のみ……。


 目と目が合う……。


「いつかその内緒が……聞けると……嬉しいですわ」


 と、意味深な発言をし、飛び去るクロネ……。


 頬を赤く染めて上空を飛ぶクロネ。


(少し攻め過ぎましたかしらね)


 口を両手で押さえているオボロ……。


(ちょっとドキッとしちゃったよ……)


 ドクンドクンドクンと速度を増す心音……。



 工房・奥の部屋━━


 コポコポ……コポンコポン……。

 室内には流動する培養液の音が響く……。

 赤い魔石の培養液をチビちゃんと交代で休み無く観察していたメル。


(そろそろ魔力注いでみようかな)


 両手を前に出し、ゆっくりと優しく魔力を注ぐメル……。


 生成基の中はオボロの血で培養液が真紅に染まり、底の赤い魔石は薄っすら輪郭が視認出来る程度。


(もう何回注いだか忘れたぁー)


 魔力を注ぎ疲れたのか、ふらふら飛び……ホムンクルス用の小さなソファーに座るメル。


 培養液の中では、魔力を注がれた赤い魔石がかすかに光り変化しようとしていた……。



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