第3幕〜話し合いと勝負事
集会所内の大きな丸テーブル上で、硬い握手を交わすダリルとゴーラ!丸太椅子に座り直す二人。
ゴーラ
「どうやらダリルさんも、オボロさんとはご縁があるようで……」
両腕を後頭部へ回し、まんざらでも無い顔をするダリル。
「先ほどオボロさんの話していた、時間をかけて種族間の問題を解決して行く方向が良いと考えてます」
首を縦に振りダリル
「あぁ、同じ猿同士でも問題があるくれぇだ!俺もそこは賛成しやすぜ!」
と、スムーズに話し合いが進む。
決まった事……。
ダリル達は、村隣接の森で生活。海岸は共有。村内はダリル、ミリル、トツと許可された者だけ。食料はその日ごとの量で相談し配分。
先日のアームファイトで、オス同士気があったのか、驚くほど話がまとまっていった。
と、黙っていたトツが手を上げ
「狩り隊長のトツです。村の防衛体制はどのようになってますか?」
(うんうん!そこ大事だぞ、トツ)
感心するオボロ。
グリナが答える
「村への獣の被害は、ほとんどありません……来ても野犬か猪くらいです。しかし我々は漁に出ますので、海鳥による魚の強奪被害の方が多いです」
ダリルがテーブルを叩き!
「よそに獲物を取られるのは気に食わねぇ!俺達が蹴散らしてやるぜ!」
ゴーラ、グリナ
「それは、頼もしい!」
トツはダリルに耳打ちし
「なんなら、昼間も夜も、俺達が交代で村の警護しますぜ?」
「ありがたい!戦いに秀でた者は少ないので、助かります」
頭を下げるゴーラ。
なんとなく話の区切りがつきそうなので、ルーベの肩を叩き、猿達に何か武器を作って欲しいとお願いしておいた。特に鳥を射抜ける弓がベストとアドバイス。ルーベも乗り気で任せてと返答。皆に挨拶し集会所を出るオボロ。
━━村内広場
中央の大木が存在感を出している。
その周りでマーマンの子供と小猿そして……アミュが、走り回り遊んでいる。皆、笑いながら楽しそう。なんか微笑ましい光景。
(ナナとも公園で、追いかけっこしたり、遊具で遊んだっけな……)
爽太の時の記憶が脳裏に浮かぶオボロ。
笑顔で遊ぶアミュを見ると、つい幼い頃のナナを思い出してしまう……。
アミュに呼ばれ手を引かれ半ば強引に子供らと遊ばされるオボロ!
(たまには……いっかな)
大木の周りで、子供のように走り回りはしゃぐオボロ。
いつもの長椅子に座ってる長老がニコニコしながら、オボロ達を見ていた……。
漁から戻ってきたクロネは、はしゃぐオボロを見つけ
(あら?オボロ様……子供みたいで可愛らしいわね)
母性とも呼べる感情が芽生えた!
━━夜
集会所でゴーラ達にもてなされるダリル、トツ、ミリルそしてオボロ達。テーブルの上にメロウ達が食事を運んでくる。湯気が立つ温かい食事とお酒。他の猿達は配られた食事を森へ各々持ち帰り食べる感じになった。色々雑談しながら皆で食事とお酒を楽しむ。オボロ達はお酒を飲まないので果実を絞ったのを飲む。
「アニキもぉ……早くぅ飲めるよぉにぃ……なりやしょうぜぇ……」
飲むペースが早いダリル……だいぶ酔っている。
眠たそうに食べているアミュ……。ミリルが気付き、アミュを抱えて自分のベッドに寝かせた。
「あ、あのっ!オボロさん!アミュちゃんは今日はここで寝かせていいですか?」
恥ずかしいのか顔を下にして話すミリル。
焼き鳥を食べながらオボロ
「アミュ寝ちゃったかー。うん!気が利くねミリルは!ありがとう」
小さくコクンコクンと首を縦に振るミリル。そのまま席に戻り絞った果実をチビチビ飲んだ。
そのやり取りをクロネは、黙って見ていた。
(私は普通にオボロ様と話せますわよ?ミリル)
大人の余裕を出すクロネ。
食事の片付けも終わり、集会所を出るオボロ。トツに呼び止められる。
「オボロさん!少しお話が……」
━━!
(来たなトツ!)
亀孔雀でザザ村に向かっている途中にダリルから言われていた事があった。トツは何度も助けられた恩を返したいらしく旅に同行したい、と言う事を。さらにダリルから、決めるのは自分に任せると、寂しそうに告げていた……。
肉球をトツに見せるように前に出すオボロ!
「うん!話は明日浜辺でしよう!」
トツは何か見透かされたのでは?と思ってしまい
「わ、わかりました」
と言い残し森へ消えて行った……。
(言われる事は、わかっている……きっと話をしてもトツの気持ちは変えてくれないだろうな……そうなるとやはり……)
明日の事を考えるオボロ。
と、バサッバサッと羽音が!
振り向くと魔獣化したクロネが、黄色い目を細めこちらを見つめていた!
(あっ!気付いてくれましたわ)
「オボロ様?良ければ今宵は……私の羽の中で寝ませんこと?アミュの巣のハンモックもありませんし!」
(アミュが早く寝てくれてチャンスですわ)
計画していた訳では無く……クロネにとっては好都合。
(巣のハンモック無いのは辛いな)
「じゃ、じゃーお言葉に甘えて」
久しぶりのクロネの羽の中で緊張するオボロ!
そして黒い羽に優しく包まれて、眠るオボロ……。
羽の中でオボロが眠りにつくまで見つめるクロネ……。
翌朝━━
浜辺で何やら準備をしてるオボロ。日陰でオボロをうっとりと眺めているクロネ……。
(昨夜は充実した時間でしたわ)
砂浜に角錐で線を引く。
その線から離れた所にアミュに作らせた砂山に、角錐を倒れないように先端から刺した。そこから少し離れてアミュに砂山を作らせた。楽しそうに砂山を作っているアミュ。
「お兄ちゃんっ!こんな感じぃ?」
手を砂だらけにして聞くアミュ。
「うんうん!上手上手!ありがとうアミュ」
肉球でポムポムと拍手をしながら答えるオボロ。大きく口を広げ牙が出てしまい喜ぶアミュ。
(なんかオボロ様とアミュ……親子みたいですわ)
まだ昨夜の余韻に浸るクロネ。
トツが槍を肩に掛け砂浜へ歩いてくる……浜辺には見物人とオボロ達……。何か準備をしてる……。
(もしかしてアームファイト?いや、台が無いな……どう見ても話しをする雰囲気では無いな)
「おぉー来たかトツ!槍を貸してほしいんだけど……」
サクサク砂の音をさせ、トツへ駆け寄るオボロ。
言われた通り槍を渡すトツ……。受け取り走り去るオボロ。オボロの行動を見る……。
砂山にトツの槍が先端から突き刺せられた。
「まぁ、遊びの延長と思って勝負しよっか?」
口髭をピンとさせトツに話すオボロ。
「勝負に勝ったら……トツの気持ちの通りに行動すれば良い!」
(……オボロさんは……俺の気持ち知っているのか?)
そんなに疑問を持ちつつ
「はい、わかりました」
と、返答するトツ。
勝負内容とルールを説明するオボロ。
お互いうつ伏せになり手に額を乗せ待機し、合図とともに先にある自分の武器を取り、スタート地点の線を超えてゴールする。相手の妨害とオーラ、魔法は禁止。三本勝負とし先に二勝したほうが勝ち。
オボロが何度かやってみせた。スタートの合図はグリナ、ゴール判定は……魔獣化したアミュが八個の単眼でする。上空でクロネが違反無いか確認。練習としてトツにも何度か体験してもらった。
……
(砂場はあまり慣れていない……オーラも禁止……有利な所は腕の長さくらい……機敏さならオボロさんの方が上……。とにかくやるしか無い!)
砂を掴み、意気込むトツ!
「準備はどうかにゃ?」
話しかけるオボロ。
「大丈夫です!オボロさん!」
ビーチブラッグスならぬ━━
「ビーチウェポン!開催するにゃー!」




