表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/166

第1幕〜別世界での日々・3

 

 黒い鳥を手当てして3日目。


 すっかり回復し、狭い洞窟で羽をばたつかせている。


(そろそろ頃合い、かにゃ)


 オボロは決心していた。


 黒い鳥が巣立つ時である。


 オボロは黒い鳥に近づき

「そろそろ、仲間のとこへ行くにゃ」

 身振り手振りも、織り交ぜて話しかける。


 オボロをジッと見つめる黒い鳥。


 構わず洞窟の外へ行かせようとするオボロ。


「さぁ、おいで」


 黒い鳥は、ぴょこぴょこ跳ねながらついて行く。


 ━━洞窟入り口


 岸壁に打ち寄せる波の音。

 眩しいくらいの太陽と思える物の光。


 オボロは、意思疎通は伝わったか不安な所はあったが、心を鬼にし


「ほら、仲間の所へ戻るんだ」


 大きな背中を、肉球でポンポン軽く叩く。


 黒い鳥は、動こうとしない。


 オボロを首をかしげながら見つめる黒い鳥。


 今度は両手で、黒い鳥の背中をグイグイ押す。


「ほーら、仲間の所へ行くにゃ!」


 グイグイ押しながら、オボロは手当てをして今までの事を思い返していた。


(言葉ではなかったけど、話し相手ができて、嬉しかったな。意思疎通はなんとなくだったけど………)


 ちょっぴり切ないオボロ。


 同じように黒い鳥も、今までの事を思い返していた。

(助けてもらい手当てまでしてもらって、何も返せていない………一緒に居たら迷惑?でも、この猫の獣人から目が離せない……)


 オボロは心を鬼にして

「さっさと━━仲間のぉ━━所へ━━いっけぇ━━━」


 思い切り体当たり!


 黒い鳥はよろめく。


 先の大きな声で、黒い鳥はなんとなく察した。

(自分のことを思っての衝突、だと)

 黒い鳥は、振り向きジッとオボロを見つめる。


 オボロは咄嗟に身構え

「しょ、勝負、するのか?」


 なおもジッとオボロの目を見る黒い鳥。

(きっと本心ではない)

 獣の本能で理解したようだ。


 ゆっくり首を下げ

 くちばしをオボロの鼻に軽く当てる。

(黒い鳥なりの感謝の態度)


「んん?」


 オボロは軽くびっくりする。


 黒い鳥は振り返り


「くかかか━━!!」


 透き通る鳴き声を発し、羽を広げ飛び立った!!


 光に照らされる艷やかな黒い羽。

 優雅に飛ぶ姿に、オボロは感動と別離の入り混じる涙が、溢れた………


(俺の気持ち理解してくれたのかな)


 何度かオボロの前を、鳴きながら飛んで、海の彼方へ、優雅に飛んで行った黒い鳥。


 しばらく、見届けるオボロ。


「……一期一会ってやつだ!!」


 と、自分に言い聞かせ、洞窟へ戻るオボロ。


 ……ピチョン


 ……ピチョン


 洞窟内で響く水が落ちる音。


(なんだろ?子供が親を離れて行くって……こんなにも、複雑な気持ち……なのだろうか)


 頬を伝う涙を拭い、娘のナナのことを想うオボロ。


(ナナの安否が気になる。だが、知る手段すらない)


 オボロは膝まずき、肉球と肉球をムニュッと合わせ、神に祈るように、静かに願った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ