第3幕〜ダリルの意地と話し合い
(あれは……腕相撲?)
直ぐに理解したオボロ!
「マーマンは酒の強さと……この腕っぷしの強さ……『酒飲みアームファイト』でひと勝負しませんか?」
(あー腕相撲って言わないんだ……)
あてが外れて凹むオボロ……。
説明し始めるゴーラ……。
初回はお互い小さいコップで飲む……その後アームファイト。勝った方は小さいコップか大きなジョッキを選んで酒を飲む。負けた方は残ったほうで酒を飲む。その後アームファイト。それの繰り返しで降参か倒れるまで、ひたすら続ける。
ゴーラは近くのマーマンとアームファイトを力を入れずに見本をやってみせた。台に肘を置き互いに手を握り審判の合図で相手の腕を倒す。もちろんオーラ、魔力は無しの純粋な力勝負と。
ダリルは真剣に説明を聞いていた。勝負事だからなのか、少し鼻息荒い!
「理解できたかなダリルさん?」
ゴーラの微笑みが少し怖い。
肩を回し
「やりますぜぇゴーラさん!」
頑丈な台の前に立つダリル!身長はゴーラの方が少し高いし上半身もしっかりしている!体格だけではゴーラの方が強く見えてしまう。ダリルは猿達の中でもローグの次に大柄。
(さて、これは見物だにゃ)
周りのマーマン達が騒ぎ始めた!
「ゴーラ負けるなよー!」
「船長、負けたら魚の餌にするぞー!」
などマーマン達の声が飛び交う。
こうなると猿達も負けてない!ダリルを応援するかのように鳴き声を上げる!
審判はグリナが担当。
アドバイスしたい気持ちがあるオボロ……だがこれはオス同士の勝負!ぐっと堪える。
お互い小さいコップに樽から酒を汲み……飲み干す!
(味は飲みやすいか……俺が普段飲んでる酒よりは強く無さそう……)
ダリルの印象。
両者、肘を置き手を組む!
グリナが互いの手を包み……
「ファイッ!」
力を入れ睨み合う二人!
「やるねぇダリルさん!」
「いやいやゴーラさんこそ!」
━━バッターン!!
ダリルが一瞬会話で気を取られているうちに、ゴーラがダリルの腕を倒した!
そして選んだ容器は……ジョッキ!余裕と見せかけなのか……一気に飲み干す!マーマン達から歓声が飛ぶ!ダリルは小さいコップで酒を飲んだ!
続くアームファイト!
慣れているゴーラがやはり有利。対してダリルは慣れない酒、そしてアームファイト……大勢の見物人……決して有利な状況ではない……。それでも長としてか、オスのプライドなのか……負けじと喰らいついている!何回も繰り返しているうち、ゴーラの負けが酔いで増えてくる。3回に1回はダリルが勝てている。猿達は懸命に鳴き声を出しダリルを励ます。静かに見守るトツ。手を合わせ祈るミリル。クロネは……あまり興味無さそうな顔……。アミュは応援してたが……クロネの足元にしゃがみ眠たそうにしてる。オボロは二人の勝負を色々考えながら見ていた……。
(ここまで来たら……腕力よりも精神力の戦いになるだろう……ゴーラも強がっているが……足がふらついてるし……)
台の前に立つゴーラ。
「この村では、俺が酒飲みアームファイトでは一番。今の女房もこれで勝ち取った!」
酒の勢いなのか……口の回るゴーラ。
「へぇーそれは羨ましいですぜ、ゴーラさん……勝負事はおらぁ嫌いじゃねぇんで!」
先ほど負けて、ジョッキをやっと飲み終えたダリル。
台へ向かおうとするが……足がふらつき倒れそう……。
━━「うっうぷっ」
口を抑えるダリル!
(マーマンの胃袋は底なしか?大恥さらしたくは……ねぇ!)
腕を震わせながら立ち上がるダリル━━!
「す、すまねぇ……吐かせて……くれ」
口を押さえ見物人を掻き分け、岩壁まで走る!!
「降参って言ってないから……続行でーす」
審判のグリナが皆に知らせる。
ダリルのもとへ急ぐトツ、ミリル!オボロは駆け寄りたいが……ジッと耐えている。
岩壁に手を置き……嘔吐しているダリル……。
心配するトツとミリル
「ボス……」
「兄さん……無理しないで」
少し落ち着きを取り戻しダリル
「あ、あぁ……だ、大丈夫……俺がここで負けたら……マーマン達に下に見られるかも知れねぇ……だろ?だから、意地でも負けられねぇ!」
背中を擦るミリル。
トツの肩を借り、台まで移動するダリル……。
「待たせちまったな……ゴーラさん」
台に肘を置くダリル!
ゴーラも同様に肘を置く!
「ゴーラさん……おらぁ猿達の為に死んでも負けねぇぜぇ?」
気迫を振り絞るダリル!
首を回し、ゴキゴキ鳴らすゴーラ
「俺も負けたら……女房にしばらく飯抜きって言われてるんでねぇ!」
(あっ!やっぱりゴーラ尻に敷かれてたんだ)
クスッと笑ってしまうオボロ、そしてクロネ。
とは言え、ダリルは酔いと自身のプライドに潰されそうな顔をしていた……。
(仕方ない……)
オボロは大きく息を吸い込み、両手を口に添え━━!
「ダリル━━━!ここで負けても……お前の強さは……俺が……わかっているから━━━━!」
オボロの方を向くダリルとゴーラ。
(なるほど……オボロさんらしい)
と、ゴーラは感じた。
対してダリルは
(アニキ……すまねぇ……こんな俺のために……)
と、涙を堪える。
グリナが二人の手を組ませる。
互いの意地が両手を通し伝わる……。
酒に酔い顔が赤いのか、揺らめく松明に照らされ赤いのか……。
「ファイッ!!」
グリナが号令をかける!
二人の気迫で付近の松明が激しく揺らぐ!
両者譲らぬ力比べ!
頑丈な台の丸太の脚、そして両者の足が砂浜に埋まる!
「猿達の未来の為にー!」
「飯抜きは……懲り懲りだー!」
━━━バッターン!!
「勝者……ゴーラ!!」
グリナがゴーラの腕を持ち上げコールする!
マーマン達から勝利の声と歓声が飛び交う!
台から滑り落ちるように倒れ込むダリル……。
「すまねぇ……みんな……」
「降……参……する……ぜ……」
その場で後ろに倒れ気絶するダリル!
ゴーラもふらつき、奥さんにビンタされながら村へ担がれ連れて行かれてしまった……。
項垂れている猿達……。トツとローグはダリルを担ぎ、グリナに集会所へ案内されて行く……。その後を肩を落とし追うミリル……。
見物していたマーマン達も各々村へ戻る。残った猿達は森へ散って行った……。
夕陽も沈みすっかり夜になっていた。
パチッパチッと音を鳴らす松明。
「お疲れ……ダリル」
月だけの夜空を見上げ呟くオボロ……。
アミュは完全に寝てしまい、クロネに被さるように抱っこされていた……。
言うまでも無く、翌日の双方話し合いは……お互いに二日酔いで中止となった……。
その翌日━━
集会所で話し合いが行われた。大きな丸テーブルを囲み集まる。
マーマン側は……船長ゴーラ、大工グリナ、雑貨屋ルーベと、何故かゴーラの奥さん。ちなみに名前は……「メロウ」と言うらしい。
手長猿側は……会話が出来る長のダリル、妹ミリル、狩り隊長トツ。そして、仲介役オボロ。
クロネはゴーラ不在の漁では不安だと、漁船を追って飛んで行き、アミュは小猿とマーマンの子供らと遊ぶと言い残し出て行った。オボロ的は、居ない方が余計な邪魔が入らず、二人には悪いが好都合と思ってしまった。
話し合う前にオボロが仲介役として話す。
(ダリルもゴーラも俺の言う事は全く聞かない訳ではない)
「仲介役のオボロです。よろしくお願いします。クロネから指摘されたのですが……種族が違えば相容れない物事があるかと思う。焦らず、時間をかけ一つ一つ解決して行って欲しいと考えてます!」
と、皆に話しかけた。
さらに続けて、住み分けはしたほうが良いこと、何か問題が起きた時はきちんと報告し、解決に向け努力すること。食料は皆に振り分けられるようにすること。
そして━━
「俺の理想は……お互い長所を活かし、協力して種族繁栄をしてもらいたい」
とも伝えた。
皆オボロの話を聞き拍手をする。
と、ゴーラの奥さんのメロウがミリルを手招きする。
「ちょっとゴーラ!どうせ私らがやってる事、何も知らないだから、メスはメス同士やらせてもらいますからね」
と、言い残しミリルの手を引き集会所を出て行ってしまった……。
下を向きゴーラ
「昨夜女房と話し合ってですね……その方が良いに決まってるって……」
「俺も同感だ!食事や宴はダリル達もゴーラ達もメスが仕切ってたから良いと思うよ」
と、オボロ。
その意見に頷き、ゴーラが席を立ちダリルに
「村に来て早々いきなり勝負を持ちかけてすまなかった。次は勝負無しで飲みましょう!」
ダリルも席を立ち
「あぁ、もちろんだぜ!体調整えて、な!」
テーブル上で硬い握手を交わす二人。
セリーヌの工房━━
ソファーで本を広げ目隠しにし昼寝中のセリーヌ。
ニ体のホムンクルスが、リュックを持ち、頭の周りを飛ぶ。
「……ヌ」
「……リーヌ」
「セリーヌ!」
━━━!!
名前を呼ばれ、本を床に落としむくりと起き上がる。
「なにさ?メル……あんたに名前呼ばれたことなんか一度も無いさね……」
大欠伸するセリーヌ……。
━━━!!
(ん?メルはオボロちゃんのとこさね)
目の前には、リュックを持つ二体のホムンクルス!
「で……き……た」
━━!!
(話しかけてたのが効果あった?)
リュックは以前、アミュが欲しい欲しいと駄々をこね、メルが作ろうとしていた物。
重たそうに二体その場で浮きながらリュックを持つホムンクルス。
「セ……リーヌ……でき……た……で……きた……」
片言ながらも二体とも話している!
「そうさね……奥に保管しておいて」
ソファーから見える景色を眺めセリーヌは
「話し相手が出来そうさね、メル」




