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第3幕〜猿の大移動

 

 亀孔雀に群がる小猿達……。触りたいが打ち寄せる波が怖いのか、近くで見て興奮してる。


 亀孔雀が首を真上に持ち上げ高音な鳴き声を発した!


『あとニ体ほど仲間を呼びました』


「仲間がいたのか」


『私達、亀孔雀は個体数は非常に少なく、今は海神様に保護されてますのよ』


「絶滅なりかけなんだな……無理させて申し訳無い」

 首の背びれを触りながら伝えるオボロ。


 と、広場に居た猿達も合流し始めた。何やらキョロキョロしてるミリル……。ダリルに何か話しかけてる。


「だぁー!アニキから貰った武器ー!先代のもか!」


 頭を抱えるダリル。


「兄さん、私取ってくるよ」

 小猿達を集めるのに忙しいダリルを思って気遣うミリル。森の中へ走って行く。


(今から広場に行ったら時間かかるよな……それに1人では……)


 オボロは後ろにいるクロネに

「ミリルを飛んで広場までお願いできるかな?」


「ええ、構いませんわ」


 翼を広げミリルの後を追うクロネ。


 ━━ザバザバーン!


 ニ体の亀孔雀が海面から頭を出し横並びで現れた!合計三体の亀孔雀達!


「よーし、それぞれ乗ってくれ!水は怖がらなくて良いぞ!」

 声をかけるオボロ。


 班分けは……


 オボロ&ダリルと老いた猿。

 クロネ&アミュとミリルとメス猿。

 トツ、ローグ、リップ&ヤップと若い猿と小猿。


 多少不満のある者も居るようだが……我慢してもらう事に……。


 ミリルを追うクロネ━━


 森を駆け抜けているミリル。ダリルの妹だけあってか、サッと枝から枝へと身のこなしは良い。


 後方から声が!


「ミリル、脚に捕まりなさい!」


 真横を飛ぶクロネ!


 タイミング良くクロネのかぎ爪を長い腕を伸ばし掴むミリル!


「あ、ありがとうございます」


 クロネが怖いのか、おっかなびっくりに話すミリル。


 上昇し森の上を飛ぶクロネ。

 空を飛ぶのが初めてなミリルは、広大な景色に圧巻され興奮してしまう!


(空を飛べるって……凄い!こんな景色初めて!)

 首が痛くなるほど左右に振り見渡すミリル。


 広場に到着。


 高台を難なく登っていくミリル。後を飛んで追うクロネ。高台の少し奥には長の部屋があり、そこに入っていくミリル。


 ……


 ……


 ダリルの武器と、少し大きな皮袋を抱えて部屋から出て来るミリル。


「クロネさん、また砂浜までお願いします」


 頭を下げるミリル。


「ちょっとお話しません?」

 広場が見渡せる所まで歩くクロネ。


 身長はクロネの方が明らかに高く、普通に話かけられても身長の低いミリルには、上から言われてるようで萎縮してしまう。クロネの隣に立つミリル。


「そんなに、怖がらないでほしいわ……」


 高台の端に脚を投げ出して座り、立っているミリルと同じ目線になるクロネ。


(こ、こんなに近くでクロネさんを見るのは……初めて!)


「す、凄く綺麗な顔立ちですね……」


 持ってる皮袋を強く握りながら話すミリル。


 空を見上げクロネ

「そうかしら?元は黒鳥ですわよ?お忘れかしら?」


 首を横に振るミリル。


「ねぇ?オボロ様のこと……好きなの?」


 ズバリ聞くクロネ!


 顔を赤くするミリル。


「あっいえ!き、気になると、言うか……なんか格好いいな、と言うか……魅力的だなって……」


 目を細めるクロネ。


「ふぅん……なるほど……」


「あっ!あのっ!……クロネさんとオボロさんは……どの様な関係……なのでしょう……か?」


 頑張って聞くも、後半になるにつれ声が小さくなってしまうミリル……。


 人差し指を顎に当てクロネ


「そうねぇ……『ただならぬ関係』とでも言っとくわ」


(や、やっぱり!)

「で、では!アミュちゃんって子は……クロネさんとオボロさんの……子供?」


 思い切って聞くミリル。


 目を丸くしミリルを見るクロネ。


「ぷっ!ははははっ!」


 お腹を抱えて大笑いするクロネ!


 手で顔を隠すミリル。


「ミリル?貴女面白いこと言うわね。アミュは……仲間よ。第一、獣人と黒鳥で子孫は残せないわよ」


 両手をばたつかせミリル

「あの、でも、小猿達がアニキに子供が出来たって騒いでたの」


「ふふっ!小猿達には、私達が家族みたいに見えたのかしらね」


 微笑むクロネ。


 ━━!


(え?ちょっと待ちなさいよ!……それって……私とオボロ様が……『つがい』と見られているのでは?)


 羽扇子を広げ顔を隠し、ミリルと逆の方を向き、尾をパタンパタンさせ、にやにやしてしまうクロネ。


「だ、大丈夫、ですか?」

 クロネの方を覗き込むミリル。


「え、えぇ、大丈夫ですわ」

 平常心を取り繕うクロネ。


「さ……さぁ!同じメス同士、仲良くしましょー」


 飛び上がり、ミリルの肩を掴み砂浜へ向かうクロネ。


 ━━砂浜


 それぞれ亀孔雀に乗り終え、ミリルとクロネを待つオボロ達。

 クロネが見えてきた。

 ダリルの居る亀孔雀まで行き、武器と皮袋を渡すミリル。クロネとミリルはメス猿達の居る亀孔雀へ誘導される。アミュがその場でジャンプして、こっちこっちと手を振る。


「夕方には着く予定だから!最後のお別れは……済んだか?」

 声を上げて猿達に伝えるオボロ。


「それじゃーお願いします!亀孔雀さん」


 笑顔の猿、名残惜しむ猿、泣きそうな猿……各々の想いを惜しみながら亀孔雀はひと鳴きし方向を変え、ザザ村へ動き出す!



 ━━海上


 海神様の力か亀孔雀の能力かは不明だが、波は穏やかで天候も荒れる気配は無い。1列になり波飛沫を上げ進んで行く亀孔雀達。


 クロネ率いる亀孔雀では……メルが配った木の実や果実を食べながら、ワイワイキャッキャッとメス猿達が騒いでいる。クロネは抜け落ちた黒い羽を配ったり、アミュが撚糸輪を指でくるくる回して皆を楽しませていた。まるで女子会のようだと感じるオボロ。


 トツ率いる亀孔雀では……小猿と若い猿が何やら言い争っていた……。どうやらクロネ派とアミュ派、ミリル派で争っているようだ……。トツは収集つかないので、すでに諦めて放置。

(ボスもオボロさんも、俺に試練でも与えているのか?)

 空を見上げ、本当はクロネと同じ亀孔雀に乗りたかったトツ……。


 オボロ率いる亀孔雀では……進んで行く景色をダリルや老いた猿達が物珍しそうに見物していた。オボロはダリルの隣に行き、はぐれ島を脱出した後の事を簡単に話した。ギリギリの所でこの亀孔雀に助けられて、村で手当てしてくれた事。

 そんなに感動したのかダリルは

「うぉーん!ぐすっ!あにぎぃぃ!いぎでぐれでで……よがっだぁー!」

 なだめるように背中を軽く叩くオボロ。


「トツの言ってた通りマーマンは優しい奴らなんだな!」


 ダリルは手のひらで目を擦りながら言う。


 オボロは皮袋の中身が気になってついチラッチラッ見てしまう……。それに気付くダリル。


「気になります?アニキ」


「ん?あぁちょっとね」


 ……


 ……


 皮袋の紐をほどき広げる。

 中を除くオボロ━━!


「まぁあんまり良いもんじゃねぇです……。先代達の手の骨ですぜ……。先代が死んだら片手の骨を残すしきたりなんです……これだけは持って行かないと先代達に呪われそうで……」


 後頭部に手を当て、申し訳無さそうに語るダリル……。

 風習やしきたりは、どこの世界でもあるんだなと思ったオボロ。


 ……


 オレンジ色の夕日が水平線を照らす。

 ザザ村の浜辺が見えてきた!


 ━━!


 浜辺に大勢のマーマン達が揃っていた!後方には村の入り口まで通路のように対に松明並べられ炎が揺らめいていた!


 亀孔雀で波打ち際まで進む……。マーマン達が亀孔雀様だと、祈りそして歓喜をあげていた。長老とその隣にゴーラが太い腕を組みどっしりと構え立っていた!


 オボロとダリルは亀孔雀から降り、砂浜を歩き、二人の前に立つ。


 ダリルをジロジロ見るゴーラ……。


「ようこそ!ザザ村へ!隣に居るのが長老。俺は船長兼村長代理のゴーラだ」


 水掻きのある大きな手を出すゴーラ。


 唾をゴクリと飲み込むダリル。凶暴なサハギンとは真逆の印象。大勢のマーマン達に見られ尻込みしてしまうダリル。

(ここで下手したら、台無しだ……)


 ゆっくり長い腕を伸ばしゴーラの手を取り、握手する。


「は、はぁじめぇましてぇ!俺はぁ手長ぁ猿達のぉ……長をしてるぅ……ダリルですぅ」


 緊張したのか声が裏返ってしまったダリル!

 横で笑いを必死に堪えるオボロ!後ろでクロネも笑いを堪えている。ミリルとトツは……頭を抱えて残念がっている……。ゴーラも顔を下にしてニヤついていた……。

 見兼ねたオボロは━━


 バシッ!!


 思いっきりお尻を叩いた!


「シャキッとしろよ!」

 励ますオボロ!


 お尻を叩かれ、自分を取り戻すダリル!


 顔を平手打ちするダリル。

 気を取り直し━━


「先ほどは失礼しやした!後ろに居る猿達の長をしてるダリルと言います!マーマンの皆さんには、これから末永くお世話になりやす!」


 ゴーラと握手をしながら頭を下げるダリル。後方に居る猿達もばらばらではあるが頭を下げる!


 ゴーラとダリルは握手を解く。


 長老が一歩前に出た!


「はじめましてぞえ、ダリルさんや……歓迎するぞえ。わしは名ばかりの長老ぞえ。何かあればゴーラに話すと良いぞえ」


 と、言い残し村の方へ戻ってしまった。


 亀孔雀から続々と浜辺へ降りる猿達。クロネとアミュはオボロの隣に来る。


 ゴーラがダリルを見て


「ダリルさんお酒は飲めるかい?」


「おう!飲めますぜ!」

 飲むジェスチャーをするダリル。


 ダリルの腕を触るゴーラ


「うーん……腕っぷしも良さそうだ」


 水平線に夕日が半分沈み、薄暗くなってきた。


 ゴーラはダリルの手を引き、松明付近まで連れて行く。


 そこには━━


 太い丸太で作った頑丈そうなテーブル……と言うか台!その近くには大きな樽と木製のジョッキ!


「話すのは明日にして……ダリルさん、代表同士……ひと勝負しませんかね?」


 台に肘を置き、腕相撲の形をとるゴーラ!



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