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第3幕〜猿達の今後・②

 

「なぁダリル……ここを離れて、マーマン達と生活しないか?」


 唐突に提案するオボロ!


(ちょっとオボロ様!陸の生き物と海の生き物……相容れないのでは?)

 奇抜な提案に困惑するクロネ!


(マーマンっていやぁ……サハギンと似たような奴……仲間を無差別に殺した奴……さすがのアニキの提案でも……)


 あまり乗り気ではないダリル。もちろん他の猿達も、喜んでいる様子は……無い。


「だ、だよねぇ……いきなり言われたら……戸惑うよね……」


 肩を落とすオボロ……。


 クロネが目の前に行き

「オボロ様!あまりにも獣の事を知らなさ過ぎますわ!猿は森で暮らす、対してマーマンは海の生き物!種族が違えば生活様式やしきたりで、さらに問題や争いが生じますわ!」


 珍しく語彙が強めなクロネに驚くオボロ。


 続けてクロネ。

「反対はしませんが……今一度、考えてもらえませんか?ダリル達とマーマン達の気持ちや意見を聞くべきかと!」


 魔獣化しどこかへ飛んで行ってしまうクロネ。


 後頭部を触りながら……オボロ

「ここまでクロネに言われたの……初めてだよ……。ダリル達の気持ちを無視した提案で、悪かった!」


 猿達に頭を下げるオボロ。


「いんや、俺達の事を考えてのことですやね?皆と少し話し合いしますぜ」


 と、猿達を砂浜に残し、ミリル、トツを呼び森へ入っていくダリル……。


 オボロは昼寝をしてるアミュを抱え、ここで生活していた洞穴へ入っていく……。

 アミュを静かに寝かせる。たくさん動いて疲れたのか、幸せそうな寝顔……。

 懐かしい洞穴……。薄暗く湿っぽい……。ここでクロネと寝食を共にした思い出が蘇る……。

 洞穴の壁に向かい、本能なのか、爪研ぎを無心にするオボロ!


(考えていても仕方ない!俺が上手く橋渡しをすれば!)


 爪研ぎした爪を口に含み、サッとしまうオボロ!

 洞穴前の岸壁に立ち『海神の鱗』を数回擦り合わせる!


 ……


 しばらく経ち、海面から亀孔雀が静かに顔を出す。


 ━━はぐれ島上空


 魔獣化したクロネは上空をゆったり飛んでいた。

(少し感情的になってしまいましたわ……。オボロ様が、どことなくしょぼくれてたわ……。なんてお詫びをすれば……)

 先ほどの強めな発言を悔いていたクロネ……。その場に居られず、逃げるように飛び立ってしまっていた。


 と、オボロと亀孔雀の姿が目に入る!


(も、もしかして私を置いて戻るおつもりでは?)


 焦りと不安なクロネ!


 オボロの所へ一直線に飛んで行く!


 ━━森の中


 砂浜から少し歩いた森の中。木々から木漏れ日が差し込む。丸太に座るミリル。立ったまま木に寄りかかるトツ。地べたに座り込むダリル。


「とりあえず二人の意見があれば聞くぜ」


 顔はうつむいたままのダリル。


 ……


「兄さん……私はここに居るよりは安全かなって思う。マーマン達と仲良く出来るかは不安だけど……。あ、あとオボロさんに会えなくなるのは……悲しい、かな……」


 ミリルは思いをダリルに伝えた。

 まだうつむいたままのダリル……。


「サハギンはぜってぇ許せねぇ!でも、マーマンは穏和な種族と聞いてます……それに、数も減った我々では、同じ事が起きた時に……対処出来ないと思います。ボス!俺はこの助けられた恩を、オボロさんと旅をして返して行きたいと考えてます!」


 うつむいたままのダリルをしっかり見て伝えるトツ。


 オボロから貰った黒羽の首飾りを握り締めるダリル。


「おめぇら、アニキの事は……好きか?」


 トツ、ミリルともに

「もちろんです!」

「はいっ!」


「うっひっひっひっ」

 少し泣きながら笑うダリル!


「そうだよな!あぁそうだよな!俺はぁ大好きだぜぇ!トツ!ミリル!先代達にゃ悪いが━━移住するぞ!」


 ようやく顔をあげるダリル!


「でぇ?トツよ、アニキに付いて行きたい事は、話したのか?」


「あ、いえ……まだ……」


 下を向くトツ。


 トツに近寄り耳元で

「ほんとはクロネの姐さん目当て、だろ?」


 にやにやするダリル。

 顔が真っ赤になってしまうトツ。何も言い返せなかった……。


 ━━洞穴前の岸壁


 亀孔雀の嘴を肉球で撫でてるオボロ。


『おや?何か来ますわよオボロ』

 ブレインマウスで伝える。


 ━━!!


 魔獣化から人型になり━━

 オボロの後ろから、胸が潰れるほど強く抱き締めるクロネ!


「私を置いて行かないで下さいませ!とても、悲しいですわ!」


 唇を震わせ気持ちを伝えるクロネ。


 背中に弾力ある胸の感触、強く抱き締められているオボロ!

 喉がゴロゴロ鳴ってしまう!


 強く抱き締められたままのオボロ

「待って!待って!クロネ!何か勘違いしてないか?まだ戻らないよ?」


 後ろから抱きついたまま、オボロの頬にクロネは頬を当てる

「私の勘違いだとしても……しばらく……こうしていたいのです……」


 クロネは頬を動かし、オボロのふさふさな頬を感じていた。


 ━━!


「あぁー!クロネちゃんっ!何してるのっ?独り占めは……めっ!」


 お昼寝から起きたアミュが、腰に手を当て、むくれて立っていた!!

 オボロを抱き締めたまま、アミュの方へ首を向かせ


「あらぁ?オボロ様にお姫様抱っこされてたお子様には……言われたくないわぁ?」


 と、クロネは後頭部に頬をスリスリする。


 両手を頬に当て驚くアミュ


「えぇ!?アミュ、お兄ちゃんにお姫様抱っこされてたの?アミュ寝てたから……知らないもーんっ!」


 口から牙をニョキッと出し、くるりくるりと回す。


 長い髭と耳を細かく動かし、ため息をつくオボロ。


 腰にあるクロネの手を優しく外し


「クロネ、アミュ……亀孔雀呼んだのは……長老と連絡取りたかったからだよ」


「そ、そうでしたのね」

 髪をかき上げるクロネ。

 寝ててお姫様抱っこされたことを悔やんでいるアミュ。


 亀孔雀の方へ向き直すオボロ。サハギンの1件を説明し、この島の手長猿達をマーマン達の住むザザ村で一緒に暮らせないかと言うことを長老に伝えて欲しいと亀孔雀にお願いした。


 頷く亀孔雀。


『お待ち下さいね』


 ……


 ……


『何匹くらいかと、海神様は仰ってます』


「だいたい100匹くらい」


『伝えますね』


 ……


 ……


『統率は取れているのか?と仰ってます』


 ……


「んー長が1匹で、その下に4匹で、小猿やメス猿、老いた猿ばかり」


『伝えますね』


 ……


 ……


 ……


『とりあえず全員連れて来て欲しいと、海神様が仰ってます』


 ━━!


(さすが長老!)

「ありがとうございます!俺が責任持って、マーマンと手長猿を仲介します」


 胸を張るオボロ。


『では伝えますね』


 ……


『皆さんを私に乗せて来ればよいと仰ってます』


「砂浜に居る猿達の気持ちを聞いてないから、待っててくれるかな?」


『それなら、私も砂浜へ行きますわ』


「アミュ、甲羅に乗りたーいっ!」

 空中で一回転し、甲羅に両足でピタリと着地!

「お兄ちゃんもっ!クロネちゃんもっ!乗って!」

 遊園地の乗り物扱いされてしまう気の毒な亀孔雀……。

 甲羅に飛び乗るオボロとクロネ。


 と、言うか砂浜は……直ぐそこなのに……。


 ━━砂浜


 優雅に亀孔雀に乗り波打ち際まで来るオボロ達。

 猿達が、ざわめく。


 近くの小猿に

「ダリル達は居ないかな?」

 尋ねるオボロ。


 ききっと鳴き声を出し呼びに行く小猿。


 ……


 森からダリル、ミリル、トツが歩いてきた。


 妙な生物に乗ってるオボロ達を見て、驚くダリル達。


(な、なんでぇ?あの生き物は!)


 甲羅に乗ったままオボロ

「話はまとまったか?ダリル」


「まだ皆には言ってねぇんで……」


 ダリルは猿達に聞こえるように大声で━━━


「皆!良く聞けぇー!」


 大きく息を吸い込み


「俺達はここを捨て、新たな大地で生活する!それもマーマン達とだ!反対の者は居るか?」


 目が真剣なダリル。


 鎮まる砂浜……。


「居ないようだな!」


 オボロの方へ向くダリル。

「聞いての通りですぜ!アニキ!」


 数回頷くオボロ。

「うんうん。マーマンの長老は、とりあえず来て欲しいってさ!会ってからまた話せば良いんじゃないか?」


 目から涙が溢れそうなダリル……。

「本当に、本当に、何から何まで面倒かけて……ずばねぇー!」


 歳なのか、と思えるほど涙もろいダリル。


「じゃ、猿達集めてザザ村へ行こう」


 右腕を高く上げるオボロ。



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