第3幕〜猿達の今後・①
サハギンの残党を追い払うオボロ、アミュ、クロネ。トツは仕留めたジェネラルの隣でぐったりしている。
クロネが『闇巻き』でサハギンを巻き上げ、降ってくるサハギン達をオボロとアミュが仕留める。
「裂空連爪!」
「魔操撚糸・糸鋸っ!!」
「剛翼打」
それぞれ使える技で仕留めていく!
……
砂浜に無数のサハギンの死骸……。砂浜がサハギンの緑の血で染まる……。
「ふにゃ━!なんとか蹴散らしたな!」
腕組みをするオボロ。
洋服の汚れを気にするアミュ。羽の内側についた砂を羽扇子で払っているクロネ。
ジェネラルに突き刺した角錐をゆっくり引き抜きオボロの所まで持っていくトツ。
「お借りした武器、使いやすかったです!ありがとうございました!」
丁寧に頭を下げオボロへ返却するトツ。角錐を受け取りD=Dへしまうオボロ。
「トツ、嫌じゃなければ……あれ貰っちゃえば?」
ジェネラルに横たわってる鉄の槍を爪をニョキッと出し指すオボロ。
横たわる槍を見つめるトツ。
「……仲間を殺した……槍です……使える理由がない!」
強く握り拳を作るトツ。
静かに波の音……。
「んーにゃ!違うぞ!戦いに勝った勲章だにゃ!トツ!」
肩にそっと肉球を当てるオボロ。
砂浜に転がるサハギンとジェネラルの死骸を見渡すトツ。
(……そうか……見方を変えればそうなるな……クロネさんに助けてはもらったが仕留めたのは自分!)
ゆっくり砂浜を歩き、鉄の槍を手に取り、くるくる回転させ砂浜に突き刺す!
「この槍!我が貰い受ける!仲間を守るために!」
何か吹っ切れたのか、自信に満ちた顔のトツ!
━━
集落の広場へ戻ったオボロ達。
ダリルがトツの所へ泣きながら駆け寄り両腕を掴む!照れるトツ。高台に避難していたミリル達も広場に降りていた。
皆、ダリルの後ろで片膝を付き、長い両手で握り拳を作り地面に押し当てた!トツも槍を置き同じようにする。
最後にダリルも同じ態勢になり
「オボロのアニキ!遠い所からお助けいただき感謝しかありません!勇敢に死んで行った仲間もいますが……弱き者は守り抜きました!」
涙ぐみながら代表して気持ちを伝えるダリル!
「いやいや、そんなかしこまらないでよ。海神様にお願いされて来たんだよ」
照れ臭そうに言うオボロ。
(あぁ!海神様に願いが届いたのね!)
安堵するミリル。
ダリル達は集落の隅に穴を掘り出す。サハギンの死骸の下から猿達の死骸を引っ張り出す者、散らばった猿達の死骸を集める者……。皆、無言であった……。
ダリルにそれとなく聞くと、土に埋めるだけだと、弱々しく漏らす。
(土葬ってことか)
オボロ達も手伝う。さすがに死骸を運ぶのはさせられないのでクロネとアミュには穴掘りの手伝いを、オボロは集落周辺の森まで範囲を広げ猿達の死骸を探しそして運ぶ……。
穴には無念にも、勇敢にも散っていった猿達の死骸……。言葉に表現するには、言いようのない状態……。ダリル達はすすり泣きながら、土を死骸に落として行く……。少し盛り上げた土にダリルとローグが、丸太を突き刺した。
「びんな……ばぼれなぐで……ずまん……」
長い腕で目を擦り、泣きじゃくるダリル……。半分何を言ってるかわからない……が、散っていった猿達には伝わっているだろう……。隣に妹ミリルが両手を合わせ祈っている。
━━翌朝
サハギンの死骸をどうするか、という問題が発生していた。さすがに放置は生活に支障が出る……。土葬するにも大量。
「お魚なんだから海にドボーンだよっ!」
アミュがいきなり意見!
それなら、きつと他の魚の餌になるだろう!アミュのひと声で何故か満場一致。まずは集落の死骸から海へ運ぶ事に……。魔獣化したアミュが糸で網を出し、そこに死骸を集め、そのまま海へ運び投げ込む。クロネも魔獣化し、網を持ち飛んで海上まで。
何往復しただろうか……。大方集落のは片付いた。あまりの死臭で、オボロは途中何度も隠れて吐いてしまっていた……。
━━そして翌日
浜辺のサハギンの死骸の片付けをすることに。前日動揺に淡々と作業する猿達とオボロ達。メルがサハギンジェネラルの死骸を見ている。どうやら素材として欲しい様子。息を止めながらD=Dへ放り込むオボロ。
「ねぇマスター?この島の素材になりそうな物探すの、一緒に手伝って」
目を輝かせて訴えるメル。
片付け作業も任せても良いと思い、ダリルに話をつけてメルと島の散策へ行くオボロ。何故か一緒に付いてくるアミュ。面白そうだから一緒に行きたいとのこと。散策に行くオボロ達を、ちょっと羨むクロネ……。
(ふ、二人きりになれないのであれば意味がありませんわ!)
かぎ爪で砂浜をザクザク掴むクロネ。
砂浜の岩場に腰掛けているクロネ。周りには若い猿達が集まっている……。高音の鳴き声を浴びせられているクロネ。魅力的なメスに群がるオス猿達……。憧れと求愛ともとれる雰囲気。それらを適当にあしらっているクロネ。トツは猿には興味が無いのか?と思いながらクロネをチラッチラッと何度も見てしまう。
ダリルが群がる猿達に割って入る!散っていく若い猿達。
「あーあの姐さん……姐さん達は、大陸へ戻るんすよねぇ?」
空を見上げクロネ
「そうねぇ……私はオボロ様に付いていくだけですので……。そちらはここで生活していくのかしら?」
頭を掻きながらダリル
「まぁ、若い猿達もいるんで、種族繁栄させますぜ」
その会話をトツもミリルも聞いている。トツはオボロ達に付いて行き強くなりたいと考えていた。ミリルは、もうオボロに会えないのかもと悲観していた。
島の散策中のオボロ達━━
あちこち動き回るメルとアミュに翻弄されているオボロ……。幼稚園児と行動しているように思うオボロ……。薬草から雑草……木の実や果実、その辺の石ころから鉱石まで……
こんなの不要では?と思える物まで言われるがままD=Dへ放り込むオボロ……。アミュも面白がって、何でもかんでも放り込む……。いったいD=Dの内部はどうなっているのか疑問視してしまう。
『ひょうたん梨』と言う名前らしい。オボロとクロネが気に入っていた果実をメルとアミュに与えると……二人とも気に入ったらしく、実っているのをほとんど回収するほど。しかもメルは木ごと欲しいと言い出し、丸々1本D=Dへ放り込んだ。
見晴らしの良い岩壁の最上部。海風で木の葉揺らぐ……。
「ありがとうマスター!中をチビちゃんと整理するから、まったね!」
オボロの肉球に両手でタッチしD=Dへ戻るメル。チビちゃんには、頑張ってもらわないとメルも苦労するだろう。
木に寄りかかり、ひょうたん梨を齧りついているアミュ。オボロも小腹が空いたので隣で食べる。
木々に小鳥が数羽集まり果実を突付いている。
(さて、ザザ村に戻るつもりだが……ダリル達これから大丈夫だろうか)
ひょうたん梨を飲み込むオボロ。アミュが静かだと思ったら、食べかけのひょうたん梨を手に持ち、オボロにもたれかかっていた。
(寝顔だけは……憎めないんだよな)
アミュの頭を優しく撫でるオボロ。
「……んん……アミュの……王子様……みんな……仲良く……が、良い……な……」
夢を見ているのか……寝言を言うアミュ。
━━!
アミュの寝言を聞き、思いつくオボロ!
(んにゃ……可能性は、あるにゃ!)
砂浜━━━
お昼寝しているアミュを、お姫様抱っこで岩壁を降りてくるオボロ。クロネはその光景を見て
(え?何なのアミュ!オボロ様がお姫様抱っこ?私もされたことないのにいぃぃ!)
嫉妬と憧れが入り混じる……。
D=Dから適当な布をメルから出してもらいそこに、アミュを寝かせる。
「この砂浜に猿達全員いるのかな?」
ダリルに聞くオボロ。
「広場にまだ居ますぜアニキ」
答えるダリル。
周りを見渡しオボロ
「生存してる猿達ってどのくらいいるんだ?」
キョロキョロするダリル
「いやぁ、ちっと数えねぇとわからないですぜ?」
大きな岩の上に立ち、大雑把に数えるオボロ……。
(んー100匹くらいか)
岩の上で腕組みするオボロ……。
小猿達の遊んでいる、楽しそうな鳴き声……。
押し寄せる波の音……。
「なぁダリル……ここを離れて、マーマン達と生活しないか?」
唐突に提案するオボロ!
━━セリーヌの工房
相変わらず色々散乱してる工房内……。メル用のホムンクルスを生成する培養液とケースが二つ完成していた。
「これで3個になるから、問題ないだろうさね」
何気に面倒味の良いセリーヌ。
「オボロちゃん達……どこまで油売ってるんだか……」
ため息一つ、ジョッキのお酒を飲み干すセリーヌ……。




