第3幕〜洋館再び、そしてザザ村
━━現代
ナナは中学2年へ進級、サキの息子ダイキは志望校へ進学し高校1年生。ゴールデンウィークも終わり、新学期に慣れた頃の週末土曜日。
冷房は必要ないくらいな陽射しと、爽やかな風が青葉家のリビングへ射し込み、そよぐレースのカーテン……。
ソファーに寝転がるサキ。
仕事は休みで午前に家事を済ませ微睡んでいる……。
ふにゅ……ふにゅふにゅ……。
サキの腹部に重み……。
うっすら目を開けると……。
真っ白な顔のきぬが、箱座りしている!きぬの前には……子猫おぼろが、サキの谷間に顔が挟まれるようにそこにいた!
(首輪を買った後くらいから……徐々に距離が縮まったものよね……)
とは言え、以前きぬには距離を取られていたサキにとっては……嬉しい誤算!!
自分の上でくつろいでいるきぬとおぼろの背中を、優しく撫でる……。2匹とも安心したのか、喉をゴロゴロと鳴らしていた……。
おぼろの耳が動く!
サキを土台にしソファーから飛び降り走って玄関へ向かうおぼろ!
(これ、痛いのよね……)
玄関が開きナナが帰宅!
お出迎えをするおぼろ。ナナの足にまとわり付き自分の匂いをマーキング。ナナはおぼろを抱っこしてリビングへ。
「ただいまぁ」
テーブルの椅子に鞄を置き椅子に座り、おぼろをテーブルに置き……わしゃわしゃと撫でまくるナナ。
(毛並みもだいぶ良くなってきたぁ)
しかし、眉間と左肩の体毛の禿げた所は依然としてそのまま……。
サキもきぬをお腹からどかし、テーブルの椅子へ座り冷蔵庫から冷や奴をナナに出す。一緒に住むようになってからは、ナナに話しかけ学校のこと、友達のことを聞くようにしているサキ。冷や奴を頬張りながら、今では普通の親子のように話してくれるナナ。微笑み方や笑顔は……まだぎこちなく感じていた。
━━ガイアール
例の洋館へ向かうため、魔法陣が使いたいのでメルに同行してもらうことに。地上へ降りたら徒歩で行くつもりなオボロ。と、クロネは私が飛びますので、オボロ様とアミュは足に捕まってもらえればと言ってくれた。もちろんアミュは人型で、ではあるが……。
メルに魔法陣を起動してもらい地上へ……。
クロネは魔獣化へ。片方のかぎ爪に捕まり洋館へ向かう。アミュは何故かお尻から糸をかぎ爪に巻きつけぷらぷらしている。その方が楽しそうだからと。メルは外が見たいからと……クロネの黄色の鶏冠にしがみつき風を感じている。
━━洋館
湿気多い森の上空を飛び、洋館の庭の石畳みへ降りるクロネ……そのまま人型へ。
オボロとクロネが倒した眷族の死骸がまだ残っていた……。腐敗臭漂う洋館の庭……。
━━洋館入り口のドアが破壊されていた!
(誰か先に侵入されたか?)
━━と
「あっ!アミュがドア壊しちゃったのっ!」
と、照れ臭く言うアミュ。
なんとなく想像がついてしまったオボロとクロネ……。
メルが薄気味悪いらしくオボロの背中にへばり付いてしまった……。
中へ侵入するオボロ達……。
(アミュは嫌な記憶しかないだろうな……)
そう思うオボロは
「アミュ?中へ入れるかい?」
口から牙を出しモゴモゴさせながら
「平気だよっ!……嫌なこともあったけど……王子様に逢えた場所だからっ!」
ニカッと笑い牙をカチカチ鳴らすアミュ。
オボロが突入したステンドガラスから射し込む陽の光り……。床はその破片や戦闘の跡……。そしてネチル伯爵の死骸!
燭台が逆さまに床に刺さり、胸部と、腹部が分断された死骸……。あの時のまま……。
アミュが嫌嫌近づき……赤いエナメル質の靴で腹いせのように頭部を蹴った!!
「この変態ナルシストっ!」
オボロもクロネも、笑ってしまう。
アミュは腹部の方をじっと見つめ
「あっ!やっぱりあるよっ!………んーとね……お腹の真ん中あたり!」
……て、誰が取り出す?
二人を見るオボロ……。
アミュは自分の役目が終わったかのように、メルを連れて洋館探索へ行ってしまった……。クロネは……羽扇子を口に当て……あからさまに嫌そうな視線……。
(はぁ……やっぱり俺だよな……)
腹部に近づき、腐敗臭がきついので息を止め……爪を出し……
ゆっくり十文字に裂く!
腐敗が進んでいるため、すんなり裂ける!裂け目から体液が溢れ出る……。
1度離れて息を吸い直すオボロ!
クロネは羽根と羽扇子で風を送っている……。
再度息を止め……
十文字の裂け目に手を入れる……。
ぐしゅぐじゅぐじゅ……ぐしゅ……。
手に!腕に!生温かい死骸の熱が伝わってくる!
目を閉じ……肩手前まで気合いでねじ込むオボロ!
腹部の中で手を動かす……。
少し横へ……。
下の方へ………!
何か爪に当たった!
違っていても、離れたかったオボロは掴み取り足に全力で力を込め、後ろに転がった!
すかさずクロネはアクアボールをオボロの腕に当てる!
(臭いオボロ様では……みっともないですわ!)
オボロはクロネにアイコンタクトで、助かったと視線を送る!
手を広げ掴んだ物を見るオボロとクロネ。
━━小石程度の真っ赤な魔石
アミュを呼び確認してもらうことに……。
2階廊下から、何故か魔獣化になっていて頭にメルを乗せて戻ってくるアミュ!人型へ戻り、魔石を見つめるアミュ……。
「うん!これだよっ!お兄ちゃん!やったねっ!」
と、ジャンプしてオボロの肉球にハイタッチするアミュ。
メルとも可愛くハイタッチするアミュ。
皆、異臭放つ所は居たく無いので足速に洋館を出て、庭も抜け、湿気多い森へ入る……。
一同深く深く深呼吸……。
と、オボロが
「ザザ村様子見てから戻ろうか」
せっかくここまで来たのだから、気にはなっていたオボロ。クロネは新鮮な魚がまた食べられるかもと考え、アミュはマーマンの子供らとまた遊べるかもと思っていた。さて、メルはどうしようか……。
メルと目が合うオボロ……。
「師匠に聞いてみる!」
集中しブレインマウスしてるメル……。
……
「遠くて……駄目みたーい」
ペタンと地面に座ってしまうメル。
と、アミュとクロネ
「試してみましょうか?」
「アミュやってみようか?」
二人とも集中しブレインマウスでセリーヌへ……。
……クロネは、首を横に振り無理と仕草。
……
……
……
━━アミュが口を開く!
「んーとね?マーマンなら大丈夫だと思うけど、危険と思ったら直ぐに避難させてほしいって!」
セリーヌから受け取ったブレインマウスを復唱してくれたアミュ。
あと、工房に戻るのは遅くなるかもと、アミュとしては珍しく気が利くことを伝えてくれた!この一件で完全に魔力量ではアミュが1番と認識するオボロであった。特にクロネは認識するとともに、若干ライバル心を燃やしているのであった……。
クロネには運んでばかりで申し訳ないが……この森だけ飛んでもらうことにした。そこからは歩きでザザ村へ向かうことに。
森を抜けザザ村付近の道……。
相変わらず地面は凸凹で舗装されておらず、気を許すと躓きそうである。歩きながらアミュは、洋館からオボロを探すために、森の中を彷徨い、森から出ても方向がわからず右往左往していたらしい……。アミュもそうだが、オボロもクロネもまさかあんな崖で再開するとは考えてもいなかった事は奇跡としか言いようがなかった。メルは話半分で外が楽しいのか、雑木林を近くで観察したり地面に生えてる雑草を珍しがって触ったりしていた。メルもアミュも好奇心は同じくらいであろう。無邪気な所は一緒だが……メルは節度のある無邪気さ……反対にアミュは……恐れを知らない無邪気さ……。クロネは周りの空気も読めるし、常識あるほうだとオボロは思っている。
━━ザザ村の入り口が見えてきた!
入り口近辺にマーマン達が何かしている……。
グリナ、ゴーラ他大勢のマーマン達。
手を振り、グリナ達を呼ぶオボロ。
マーマン達が一斉にこちらへ向く。オボロを確認出来たのかグリナ、ゴーラが走ってきた!
久しぶりとお互い挨拶を交わす……。
グリナ、ゴーラの視線は……。
人型のクロネとアミュとメルへ。
何故かクロネもアミュも黙っている。メルはオボロの後頭部へ隠れてしまった。
……
……
「えーと……こっちがクロネで……こっちがアミュ……それと……メル」
変な間があったのでオボロから紹介した。
グリナ、ゴーラは目を逸らしクロネとアミュを見る!
「あら?ゴーラさん?もうお忘れですの?」
羽扇子を広げ口に当て微笑。
「アミュだよっ!」
と、後ろを向き蜘蛛の腹部を見せた!
……
……
ようやく一致したようだ!
ゴーラもグリナも、あまりの変わりように驚いてはいたが、長老の所まで案内してくれた!他のマーマンも、ゴーラの一声で理解したらしく歓迎してくれた!
村へ入り振り返ると、雑木林が伐採され広くなり見通しも良くなっていた。
(俺のアドバイス……ちゃんと聞いてくれたんだな)
ちょっぴり嬉しいオボロであった。




