第3幕〜セリーヌの工房・⑧お礼とお披露目
メルが有り合わせで作成したシルバーの翼のネックレス……レプリカと言っていいほど出来が良い。
椅子に腰掛けオボロ
「セリーヌさん、ホムンクルスは手先が器用なんですか?」
ほろ酔いセリーヌ
「そうさねぇ……ドワーフには劣るだろうが……器用さね。あと賢い」
メルから目を逸らし言う。
そんなことないもん!とセリーヌに突っかかるメル!
(こんなにも良くしてもらって何もしないのは……失礼だ)
と考えていたオボロ。
「あのぉ?セリーヌさん?色々な知恵や貴重な物を頂いたので、何かお礼がしたいと考えてます」
と、腰の鞄をガサガサ漁り……出て来た物は……
ぐしゃぐしゃの薬草と薬丸
シーサーペントの鱗5枚
水色の透き通る小石
を、テーブルに並べるオボロ。
クロネもアミュもテーブルに集まる。
品定めするセリーヌ。
……
「これと……これで良いさね!」
と、鱗1枚と、水色の小石を自分の方へ寄せた。
そして水色の小石を見せて
「オボロちゃん?これ何だか知ってるのかい?」
オボロ一同「???」
━━━『魔石』
魔獣や獣の体内で精製される魔力の結晶。大きさは様々で『魔石片』『魔石』『魔結晶』と呼ばれ、見つける事も困難で貴重な物。高値で売買されるほどらしい。
オボロはザザ村でシーサーペントを倒した時に、角の下に埋まっていたと話した。
強い魔獣、魔法を使う魔獣や獣なら魔石保有率は高いとも説明してくれた。実は……この魔石からもホムンクルスが精製可能……だから貰う事にしたと。メルの代わりになり得るかもしれないから、後でじっくり精製するよと、少し嬉しげなセリーヌ。
オボロは、ここにいる間は何か手伝えることがあれば相談してくださいと伝え、またD=Dの訓練をするオボロ。
クロネもアミュも、それなりに歩いたり、座ったり、手で物を掴むと言った簡単な動作が出来るようになっていた!
オボロは相変わらず魔力操作は苦手らしく、D=Dの発動、解除がようやく出来るようになっていた……。
数日後━━
魔法陣のイメージの仕方が慣れたのか、扱いも様になっているオボロ!
クロネは、人型のまま羽根を使い飛ぶことも出来るようになった!
アミュは多少ふらつくが、人型で腹部から糸を出し、蜘蛛の時のように巣を張ったりぶら下がったりできるようになった!
遠くでセリーヌが首を立てに振りながら、感心している。
と、メルが工房のドアから顔を出し、クロネとアミュだけ呼んだ。どうやら2人の服が完成したらしい!クロネもアミュも工房へ入って行く……。
オボロはどんな服か楽しみであった!
(やはり異世界だから……クロネは鎖帷子とかかな?アミュは軽装で革の鎧みたいのかな?)
しばらく経ち━━
工房のドアからメルを先頭に2人が布をマントのようにして出て来る!
恥ずかしそうに歩くクロネ。
元気に手を振り歩くアミュ!
メルがオボロの耳元へ来て
「マスター?どっちから見たい?」
小声で話す。
オボロは2人を見て……クロネを差した。
顔を下に向けているクロネ。
(何だか緊張するし、恥ずかしいわ……)
メルがクロネの所へ行き……布のマントを一気に引っ張った!
━━!!
背はオボロよりも少し高い。背中には黒光りする羽根と3つに割れた尾……足はかぎ爪のまま。
黒を基調とし、黄色で縁取られたノースリーブで胸元はざっくりと開き谷間が露わに……太ももの脇には長いスリットが入っているチャイナドレス、とでも言おうか……。とても魅力的である。肘の手前まである黒の手袋……血の盟約の魔法陣は谷間より少し上に浮き出ている。
髪は少し切ったのか……金髪で緩やかなパーマ、胸にかかるくらいな長さ。
そして、何故か腰に黒い羽の扇子らしき物が携帯されている。
鈍感なオボロが見ても……非常に照れて恥ずかしがっているクロネ……。
「う、動きやすいとは感じてますが……その……この辺りが、すーすーして、恥ずかしいですわ……」
と、胸元と、太もものスリットを差すクロネ。
オボロは谷間から目を逸らすように
「あ、うん!すごく綺麗だよクロネ!……そう!人間ってのは服を着る種族だから慣れて行こう」
(クロネ、スタイル良すぎだろ?ある意味注目されるぞ)
クロネはオボロの言葉に勇気を貰ったのか、羽根と尾を小刻みに動かしていた!
続いてアミュ……。
ニヤニヤしながらアミュの布マントを引っ張るメル!
━━━!!
アミュも髪型変えたのかな……。背はオボロよりも低く、髪は薄紫、ショートでサイドは後ろから前に行くにつれて長く、目は顔に2つ、頭部に2つそこから髪を束ねて短めなツインテール、首に4つの赤い目、そしておでこに魔法陣が浮かび上がっている!
濃い紫を基調のフリル付きの半袖メイド服、細かなメッシュの黒の手袋、膝上までのスカートで腰から生えてる腹部が隠れるくらいに後ろは広く、中はゆったりしたかぼちゃパンツ、膝上までの白ニーソで赤エナメル質の靴。頭の目と目を繋ぐようなシルバーの可愛らしいカチューシャ。
赤い靴の爪先をコンコンと地面に叩いているアミュ。
……
(どう見てもゴスロリファッションでは?)
と、思うオボロ。
━━と、アミュが
「見て見てっ!お兄ちゃんっ!」
と、お腹のコルセットのような物が、4本ガバッと広げ、カチャカチャ動かすアミュ!
━━!!
オボロもクロネも、セリーヌまで驚いている!
どうやら魔獣の蜘蛛の名残で4本脚が残ってしまったようだ……。アミュなりに上手く誤魔化しているのだろう。オボロは特に責めはしなかった。
アミュには謎が多すぎる……と感じるオボロとクロネ……。
メルがオボロの耳元へ……小声で
「爽太の記憶ちょっぴり覗かせてもらったの!マスター好みなら嬉しいな!」
それを聞いたオボロは……頭から煙が出そうなほど恥ずかしくなる!
(メルのやつめ!俺のどの記憶を参考にしたんだよ!?)
じっくりクロネとアミュを見る……。チャイナドレスに……メイド服……。
━━!
多分あれだ……。
ナナが小学校6年生の時のハロウィンのコスプレだ!俺が仕事から帰宅したら……マキちゃんはチャイナドレスで、ナナはメイド服で……出迎えてくれたな。確かナナは、とんがり帽子被ってたっけな……。
そんな記憶を思い出したオボロ……。
(いつか俺の趣味では無い!と、誤解を説かねば!)
こっそり心に誓うオボロ!
メルはかなり満足している様子!クロネとアミュの周りを確認するように飛び回っている。
クロネが腰に差している羽扇子を取り出し、ビシッと広げて、メルに使い方を教わっていた……。おそらく、自分の羽を使用した羽扇子だろう……。
黒光りする気品溢れる羽扇子……。
鳥であるクロネにはピッタリなアイテムとは思うのだが━━
オボロは見て直ぐにわかってしまった!
━━『ジュリ扇!!』
ため息を吐き、頭を抱えてしまうオボロ……。
(メルには悪気はないだろうが……なんて物を異世界に………)
アミュがオボロの後ろへ来る……。首だけで後ろを見るオボロ。
腰ベルトに付けている鞄が気になるようだ……。
「……アミュも、お兄ちゃんみたいなこう言うの欲しいっ!」
と、メルの方を見て訴えた。
飛んで来るメル。
オボロの鞄を見て……
「アミュなら……小さいリュックが似合うかも━!」
と、早速工房へ飛んで行くメル!
クロネは自分の羽の扇子が気に入ったようで、顔をゆらりふわりと仰ぎ金髪をなびかせていた。
クロネとアミュのお披露目を見ていたセリーヌ
(人型はしてるが……それでも人間から見たら……まだ異質に見られてしまうさね……オボロちゃんも、クロネもアミュも……心折れるんじゃないさね!)
【装備】
・クロネ
羽扇子(ジュリ扇)
***『ジュリ扇』***
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