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第3幕〜セリーヌの工房・⑦それぞれの特訓

 

 工房のソファーに独り座るオボロ……。

 採寸から戻って来るメル達。ホムンクルス達は奥へ行ったり来たり忙しない。メルがオボロの所へ来る!

「マスター、クロネもアミュもマスター好みに仕上げてみせるからね!」

 と意気込みを言い残し、奥へ行ってしまった……。


 扉が開く━━


 セリーヌに手を引かれ入ってくるクロネとアミュ!

 二人とも歩き方が、ぎこちない……。オボロは直ぐにソファーから移動し、2人を座らせる。

 メル達が間に合わせでしてくれたのか、カーテンが1枚のドレスのようになっていた!

 落ち着いて座っているクロネ。ソファーが高いせいか、両足をパタパタと動かしているアミュ……落ち着きのない子供のよう。


「何か言う事は無いのかい?オボロちゃん?」

 首に腕を回し、撫で肩に弾力のある胸が押し当てられ、何か期待しているかのようなセリーヌ。


 2人を見るオボロ……。


 クロネは羽根と足が元の魔獣のままのよう。アミュは……蜘蛛の腹部が腰から生えていて、気になるのは……頭の赤い玉くらい……。


「完全では無さそうだけど……人間には見えなくもない。とりあえず人間の姿に慣れるのがいいんじゃないか?」

 と、セリーヌと似たような事を言うオボロ。


「ねぇねぇっ!お兄ちゃん?アミュ可愛いっ?」

 と、普通に聞く。


「あぁ可愛らしいよ、アミュ」

 小さい頃のナナを思い出し応えるオボロ。


 すかさずクロネも、恥ずかしながら

「あっ……いかがでしょう?オボロ様?」

(なんか、この姿だと緊張しますわ)


 クロネに顔を近付け観察するオボロ……。顔が近くなり余計に緊張し目を反らしたくなるクロネ!


「うん!なんかお姉さんって雰囲気でクロネに合ってると思うぞ!」

 どこかサキ姉に外見が似てるなぁと思いつつ応えるオボロ。


 と、奥の椅子に座ってたセリーヌが

「ここまで、面白いもの見せてもらったんだ!最後まで付き合うさね!」


 セリーヌを見るオボロ達。


「んーそうさね……クロネとアミュは服が出来るまで、歩き方とか人間の動きに慣れてもらうとして……オボロちゃんは……D=Dの訓練さね!」


 と、パンッと両手を叩くセリーヌ。


 工房の奥ではメルやホムンクルス達がせっせと仕立ての準備や作業をしていた。

 クロネとアミュから譲ってもらった、黒い羽根と透明な糸!それをメインの材料に服を仕上げる予定。なのだが……デザインが決まらずメルは、パタパタと飛び回っていた……。

(師匠の服は直ぐに決まるのに……なんでよ━━!)

 やきもきしてるメル。


 と、メルは爽太の記憶を銀の翼から掘り起こそうと……意識を集中する……。

 爽太が元の世界で見聞きしたり経験したこと……。爽太が気に入っていた物や好きな食べ物……好みの女性像……そして家族……。

 メルは爽太の人生を覗き見しているようで、ちょっぴり罪悪感を覚えてしまう━━が、これはクロネとアミュと……それにマスターのため!と、強引に割り切った。

 メルは器用に羽ペンを両手で持ち、紙にデザインを描き始めた!どうやらアミュの服が先に決まりそう……。次にクロネのデザイン画も描き始めた!

(あはっ!これならマスター喜ぶかな?)

 仕上がった後の事を想像し、笑顔になるメル。


 そしてメルは仕立てをひとまず、他のホムンクルス達に任せて、独りで何かを作り始めた……。



 その頃、工房前の庭では……


 オボロの手に引かれクロネとアミュが、ぎこちない歩き方で移動している。セリーヌも酒瓶とジョッキを持ち、後から出てくる。


 元々2本脚だったクロネは、ゆっくりだが自立歩行が様になって来た……。

 問題はアミュ……。

 8本脚から2本足へ……赤ん坊がハイハイから立ち上がり、よちよち歩きをするかのような状態……。オボロは両手を添え、声をかけながらアミュの手助けをする……。今までに無い必死さのアミュ!

「お、お兄ちゃんっ!アミュ頭がクラクラしてて、進みたい方向に行けないのっ!」

 と、訴える!

 それを聞いたセリーヌが

「アミュ?あんた目はどこにあるんだい?」

 と、聞く。


 口から牙を出し、モゴモゴしながら

「んーとねっ!ここと、ここと、ここっ!」

 と、顔面の2つと頭の赤い玉の2つと……首の後ろの4つを指で差した!


 ━━━!


 蜘蛛だったアミュには8つの単眼があり、人型になり位置が今までと違っていた!アミュはどの目を使って良いのか混乱していたようだ!セリーヌは、まず顔の2つの目だけに集中しなさいとアドバイスする。


 目を閉じ、集中するアミュ……。

 目を開け、赤い目が光った!

 まだ、ぎこちない歩き方だがクロネと同じくらい歩けている!


(セリーヌさんは知識もあるし、的確な助言してくるな)

 オボロはセリーヌが先生や塾の講師のように思えた!……酒臭いのは別にして……。


 オボロはセリーヌのテーブルへ行き、少ない魔力でも上手く扱うコツを聞いてみた。しばらく悩むセリーヌ。固有魔法を契約したのだから、魔法陣はイメージ出来ているはず……慣れれば扱うのも容易いと言ってくれた。とは言え基本的なことが微妙なオボロには時間かかるとも言われた。


 集中し、魔法陣をイメージ……


 出て来ない……


 唸るオボロ……


 オーラとは違う何かを感じるオボロ……


 自分の中にあるオーラとは違う魔力を探るオボロ……

 僅かに燻っている魔力を発見!ゆっくり慎重にその魔力を脳へ送るオボロ……。


 オボロの前に魔法陣が現れ……D=Dが出現!!


 ゼェゼェ息を切らすオボロ!


 テーブルでは酒を飲みながら見守るセリーヌ。


 岩肌伝いに手を置き、歩くクロネ……。羽と尾があるため重心が取りにくいようだ……。

(……これでオボロ様と一緒に町を歩けますわ)

 その望みを胸に慣れようとしていく!


 アミュも同じく腰から生えた腹部が重く……尻もちを付きながらも健気に奮闘している。

(アミュ……この姿で捕食できるのかなぁ…?)

 食べる事のほうが優先されているアミュ。


 少し酔っているセリーヌに、口を挟まれながら、D=Dの扱いを練習してるオボロ……。魔力量が少ないため、休み休みしていた。

(早く使いこなせるようになれば、旅が楽になるよな)

 そんな希望でいっぱいなオボロ。


 と、工房のドアが少し開き……メルが飲み物を持ってきた。

 セリーヌの居るテーブルへ人数分を……。言うまでもなくセリーヌには酒。

 木陰で休んでいるオボロの前を……背筋を伸ばしわざとらしく飛び回るメル……。


 目で追うオボロ……。

(なんだ?メルのやつ……)


 ……


 ……


 痺れを切らせたメルは、オボロの鼻先に立つ!

 そして、ピーンと背筋を伸ばす!

「マスター?まーだわからないの?レディのちょっとした変化にっ!」


 ほろ酔いなセリーヌが笑っている。


 近すぎてわからないから、肉球の上にメルを乗せるオボロ……。


 ポーズをとるメル……。


 ━━━!!


(これって………?)

「俺が……爽太が……海に投げ捨てたシルバーの翼のネックレス!?」

 目を見張るオボロ!


 ようやく気が付いたかと言わんばかりに、ため息を漏らすメル……。


「同じじゃないけど……記憶を頼りに……有り合わせなんだけど作ってみたの!どう?マスター?」

 両手を腰に当て自信満々なメル!


 メルの胸元からは、キラリと光るシルバーの翼のネックレス!


 爪を出し、翼の部分を持ち上げ見つめるオボロ……。

 懐かしさと当時の思い出が駆け巡り、目が熱くなる……。

(ホント涙もろくなってきてるかも……)


「あぁ……そっくりだよ……メル!器用なんだな!その、なんだ……俺のために……ありがとうな」


 肉球で優しくメルの頭を撫でたオボロ。


 メルは嬉しそうに、オボロの周りを飛び回る。


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