第3幕〜セリーヌの工房・⑥クロネとアミュの異変
血の盟約が成功し、『ブレインマウス』と言う新たな能力を得たオボロ達。その夜はささやかな宴となった。少し多めな食事、メルとホムンクルス達の可愛い輪舞曲、クロネとアミュは自ら獲ってきた獲物、セリーヌは変わらずお酒……。オボロも疲労を回復するためか、ガツガツ食べた!
メルにイタズラされながらも楽しく過ごしたオボロ達……。
その夜は、メル以外のホムンクルス達を除いて、庭で夜を明かすことになる……。
━━明け方
まだ陽は昇ってなく薄暗い……。
セリーヌはテーブルに突っ伏して寝てる。オボロもテーブルに腕を置き顎を乗せて眠っている……。メルはオボロの腕に寄りかかり眠っている……。
オボロの座っている少し後方で眠っているクロネ……。
何か頭の中に流れ込む感覚……。オボロが爽太だった頃の記憶……?その人は気さくに笑って話しかける……そして真剣に怒ってくれる……何か問題があると行動力が早い……。誰かしらこの女性?オボロ様と関係ある女性?オボロ様は頭が上がらない感じ……。心臓の魔力の源が震えだす!その魔力振動がクロネ全体を包み込む!
━━クロネの身体に異変が!!
同じ頃━━
アミュはクロネよりも後方の木に巣を張り眠っている。
アミュにもクロネ同様、頭の中に何か流れ込む感覚があった。オボロが爽太だった記憶だろうか?小さな笑顔の可愛らしい女の子が、こちらを見上げている。両脇に男女がいて三人で手を繋ぎ歩いている……。その女の子が見上げる先に微笑みかける女性、そして優しそうな顔の男性……。女の子は両手を大振りに振って笑いながら歩く……。なんか幸せそう……。心臓の心拍数が上がり魔力の源が震えだす!その魔力振動はアミュ全体を包み込む!
━━アミュの身体に異変が!
陽が昇り始め工房の山頂を朝陽が照らす。
━━━「くしゅんっ!」
メルはくしゃみで目を覚ます……。
皆、寝ている模様……。
腕を伸ばしながら、ふらふら飛ぶメル━━━━!
羽根の生えた女性と……巣に捕獲されている小さな女の子!
メルは口に両手を当て声を出さぬようにした!
慌てて工房に入り、他のホムンクルス達を呼び、窓のカーテンを無理やり取り……庭へ!
協力して、裸の女性と女の子にカーテンをかけるメルとホムンクルス達!
メルは誰から起こそうか、左右に飛び悩む……。
━━━と、羽根の生えた女性が目を覚ます!
(あら?これは人の手?肌色……)
上体を起こし、顔を触り長い髪を触る……。
(私、人型に慣れたのでしょうか?)
と、メルがカーテンを持ち上げ肩にかけ
「……クロネ?」
羽根の生えた女性は自信無く
「え、ええ、おそらく」
メルは裸じゃマスターが驚くからカーテン巻いててと。
クロネは両脚を横に出し上体を上げ座っている……。足首辺りから下は……かぎ爪のまま、羽根と3つに割れてる尾は、身体の大きさに比例した雰囲気……。羽根を広げて見る!自分の身体を包むように両羽根を前へ……。問題なさそうだ。人型に慣れてないのか、頭がぼうっとしているクロネ。
━━どさっ!!
巣からカーテンに巻かれ裸の女の子が落ちた!
「もぉーいったーいっ!!」
キョロキョロする女の子!
口から牙をニョキッと出し不規則な動きをしている……。
(あれ?いつもと見え方が違う……)
立とうとするが目眩がし、身体が言う事を聞かない!
メルが寄ってきて
「……アミュ?」
声に反応する女の子。
「ん━━━?アミュだよっ!」
このお気楽な話し方はアミュだと確信したメルとクロネ。
前方にいるクロネがアミュを見つめ
「アミュ、私達人型に変異したみたいですわ」
その場でアミュ
「そうなのっ?全然動けなくて、どうしようぅぅ!」
「2人とも!!裸だからカーテン取らないでよね?」
とメルがクロネ、アミュの順にピシッと指を指す。
メルは寝ているオボロの口髭を引っ張る!
「んにゃー!またかー!!」
痛みで目を覚ますオボロ!
そっぽを向いて口笛を吹いているメル!
オボロの口髭を引っ張り顔を後方へ向けさせ、クロネとアミュを指差すメル!
━━━!!
目をパチクリさせ、メルを見るオボロ!
口に手を当て笑いを抑えているメル!
「も、もしかして……クロネとアミュ?」
それぞれを指し尋ねるオボロ。
「ええ、クロネですわ」
「うん!アミュだよっ!」
それぞれ返事をする。
「おぉ━━!人型になれたんだ━━!!凄いな!二人とも!!」
椅子から立ち上がり、メルと手を繋ぎその場で踊り始める!
その歓喜の声で、頭を押さえながら起きるセリーヌ……。
(全く朝から騒々しいねぇ……二日酔いで……頭が……)
━━━!!
一気に酔が醒めたセリーヌ!
クロネとアミュの方へ行き
「ほう?稀なケースになったようさね!おめでとう、オボロちゃん、クロネ、アミュ」
オボロと踊っているメルを呼び
「メル!総動員でクロネとアミュの服を作りな!」
と、号令を出すセリーヌ!
メルは工房へ飛んで行き、他のホムンクルスに知らせに行った!
カーテンで隠れてない部分のクロネとアミュを見比べているオボロ……。
クロネは大人っぽい顔立ち、目は人間ような白の球体に眼球……しかしその眼球は……金色にちかい黄色。髪は長くふわっとパーマのかかった金髪。
アミュは……見るからに子供っぽい顔立ち。目はクロネ同様だが……眼球が真っ赤!二人とも魔獣の時の色が反映されてるのか?髪は薄紫で後ろは首が見えるくらいの長さで頬に行くにつれて斜めに長くなっている。頭部には左右対称に赤い玉のようなのが見えている……。
「オボロちゃん?少し工房へ行っててくれない?女同士で話ししたいさね」
と、手首を工房の方へサッサッと振るセリーヌ。
とりあえず言われた通り工房へ向うオボロ……。すれ違いにメルと数名のホムンクルス達……。
工房へ入るのを確認するセリーヌ。
「どうだい気分は?……戸惑いはあるさね……今まで生きてきた身体と作りが違うからね。しばらくは人間の身体に慣れるのが一番さね!」
ホムンクルス2名が大きな布を広げクロネとアミュを工房から見えないように遮断した。残りのメル達は2人の採寸を始めた!
気になり窓から覗くオボロ……なんだか仲間外れにされたようで、もどかしい……。
遮断され、採寸中のクロネとアミュにセリーヌが
「確認さね!……血の盟約……あんたら二人が死んでも……オボロちゃんは、悲しむだけ……。逆にオボロちゃんが死ねば……あんたら二人も死ぬさね。きっとオボロちゃんは、2人を守るだろうさね!だから、死ぬ気でオボロちゃんを守ることさね!自分のためにもさ!」
採寸されながら2人は返事をする……。アミュは事の重大さを知ってか知らずか……相変わらず軽そうな返事。クロネは、そこを理解した上での盟約をしたと自負している。
(オボロ様に護られてばかりでは駄目、ですわ!)
セリーヌの真剣な言葉に、真摯に向き合うクロネ。




