第3幕〜セリーヌの工房・⑤血の盟約と脳の口
「……ター」
「……スター」
「マスタ━━━━!!」
口元の髭を思いっきり引っ張るメル!!
「いってぇ━━━━!」
不快な思いで目が覚めるオボロ……。
見渡すと、窓の外にアミュ……工房扉を開けてクロネ……机に腰掛けているセリーヌ……そして目の前にメルが空中で仁王立ち!
かなり寝入ってしまってたようだ……。セリーヌは少ない魔力を使ったのだから仕方ないとフォローしてくれた。
セリーヌ
「さぁてオボロちゃん?そちらの2匹は、血の盟約受けるそうさね!」
オボロが寝ている間に、クロネもアミュも覚悟をセリーヌに伝えていたようだ。
クロネはオボロを見つめ頭を下げる。アミュは窓の外から、牙をカチカチ鳴らし前脚を挙げていた。
(アミュよ……そ、そんなに楽しみだったのか?)
そんな疑問を抱きつつ、ソファーから立ち上がり、背伸び。
一同は庭へ……。
クロネが庭の中心で待っている!
セリーヌは魔法紙と同じようにすれば良いと言い、かしこまった言葉や文章は特に無く、オボロ自身の言葉で相手に伝えれば大丈夫と、後押ししてくれた。
手渡される1枚の血の盟約の紙……。
受け取るオボロの手が、爪が震えてる!
「きっと上手くいきますわ!」
クロネが胸を張り励ます。
血の盟約の魔法陣にオボロとクロネの血を垂らす……。
クロネは羽根先で胸の当たりを指している。
(そこに魔法陣が良いんだな)
唸りながら魔法陣に魔力を流すオボロ……。
オボロの頭の中でクロネの事を考える……。最初の出逢い、はぐれ島とザザ村での生活……猿達や蜘蛛、シーサーペントとの戦い、どんな場面でもクロネは頼りになった!なんか歳上って雰囲気なんだよな……。と、関連付くかのように、サキが浮かんで来た!
(あぁ、サキ姉は歳同じだったけど、姉御肌だったもんな)
━━!
魔法陣が赤く光出す!
「クロネ!これからも俺は頼りにしてるからな!」
目を見て伝えるオボロ!
それを受けクロネは
「お任せ下さい!オボロ様!クロネは影となりお支え申し上げますわ!」
魔法陣をクロネの胸に押し当てるオボロ!
唸りながら……絞り出すように魔力を注ぐ!
紙が灰になり……魔法陣だけが残る……。
……
一同緊張し見守る……。
……
魔法陣が吸い込まれて行く!
クロネの中に魔法陣が全て入って行った!
━━!
首と胸の間あたりに、吸い込まれた魔法陣よりも小さい魔法陣が浮き出て来た!
━━!
それを見たセリーヌは
「オボロちゃん!成功さね!」
オボロもクロネも一安心!
(これでオボロ様と一緒ですわ)
心躍る気分なクロネ。
メルは魔法薬をオボロに渡す!ふらふらなオボロは、一気に飲み干す!
クロネはセリーヌの隣に移動し、次はアミュの番。
落ち着きなくその場で跳ねている……。
オボロは、少しだけじっとしてようかと優しく言う。
オボロは魔法陣どこにすれば良いか、アミュの身体を色んな方向から見る。
と、アミュが
「ここっ!ここでいいよっ!お兄ちゃん!」
と、両前脚で頭部の上を指している。
セリーヌを見るオボロ。
オッケーサインを出している。
深呼吸するオボロ。
もう一度、深呼吸……。
血の盟約の魔法陣にオボロとアミュの血を垂らす……。
先程と同様に、唸りながら魔力を流すオボロ……。
アミュの事を考えるオボロ……。
出逢いは突然だったよな……。いきなり王子様とか旦那様とかは驚いたな……でもちょっぴり悪くは無いなとも思っちゃってた……。無邪気で明るいアミュ……。
と、小学生くらいのナナが思い出される!
(あの頃は元気いっぱいで、倒れるくらい遊んでたよな……。明るくホッとするナナの笑顔……)
━━!
魔法陣が緩やかに光り始める!
(良し今だな!)
8つの赤い単眼を見つめオボロ
「アミュの中で、お兄ちゃんが一番になれるよう頑張るよ!これからも仲良くしてね!」
それを受けアミュは、前脚同士をくるくる回転させながら
「うんっ!お兄ちゃんはアミュの中で王子様で旦那様っ!だから……仲良くするよっ!」
前へ進み頭上に血の盟約の紙を押し当てる……。
そして魔力を絞り出すように流し込む………。
またも緊張が周囲を包む……。
(二度も上手く行くのか?)
オボロもセリーヌもクロネもメルも同じことを考えてしまう!
と、紙が灰になり空気中に散る!
残る魔法陣!
唸るオボロ!
魔法陣がゆっくりアミュに吸い込まれて行く!
大きく息を吐き、後ろに倒れるオボロ!
クロネが羽根をクッションにして、ゆっくり寝かせた!
じっとしているアミュ……。
クロネと同じく小さくなった魔法陣が頭部に浮き出て来た!
「これも、成功さね!」
セリーヌとメルはハイタッチを交わす!
アミュは前脚で頭上を突付いたり撫でたりしている。オボロは成功したよと頭を撫でてあげた。嬉しそうに牙をカチカチ鳴らし、ぴょんぴょん跳ねている姿は、健気で可愛らしいかもと、思うオボロ。
「どうだい?何か変化はあるさね?」
セリーヌが興味深く聞く。
「んー今のところは……慣れない魔力使ったから怠さがある」
と、肩を触りながら伝えるオボロ。
クロネが鋭い目付きでアミュを見ている!
アミュは、じっとしてクロネを見ている!
オボロ「???」
アミュ
「やだぁクロネちゃん!お兄ちゃんのことばっか考えてるっ!」
クロネ
「ええ、そうですわよ?アミュこそ、オボロ様のことと食べることばかり考えてますわよね?」
アミュ
「えーだってほんとのことだもんっ!」
クロネ
「あぁもう!セリーヌさん?これ、何ですの?話してないのにアミュの考えてるのが勝手に伝わるのは!」
我慢出来ずに問い正す。
「ぷっ!ははははっ!そうかい!そうかい!」
大笑いしてるセリーヌ。
オボロ一同「???」
涙目になるまで笑うセリーヌは
「それは『脳の口』または『ブレインマウス』ってやつさね!魔力高いやつなら使えるさね!言葉を発せず、脳から魔力を飛ばし会話をする。」
クロネは急に恥ずかしくなる!
アミュは前脚を叩き、意図がわからぬ行動……。
「盟主とも、ブレインマウスは使えるはずさね!……オボロちゃんは魔力少ないから……慣れるまではお預けさね」
ニタニタしながら言うセリーヌ。
それを聞き益々恥ずかしくなるクロネ!
(これ、ちょっとやばくないです?私の考えてることが……オボロ様や……アミュにまで……)
早速アミュがブレインマウスで
(クロネちゃんっ!アミュはねっ!お兄ちゃんと同じくらいクロネちゃんと仲良くしたいっ!マザーみたいに優しい時もあるし、叱ってくれるからっ)
クロネも負けじとブレインマウスで
(あら?そう思ってくれてるのね?私はオボロ様一筋ですの!でもアミュの事も頼りにしてますのよ?)
思わずオボロ一筋宣言をブレインマウスでしてしまったクロネ!
またも、恥ずかしくなっている。
オボロは、クロネとアミュを交互に見ている。
(何か話をしてる感じはするが……わからぬ)
まだ少し笑いながらセリーヌ
「大丈夫さね!魔力で制御すれば伝えたいことだけ飛ばせば良いだけさ!そうさね……魔力で思考を包んで、その中から選ぶイメージさね!」
クロネは早速実行する!
(これ以上恥ずかしくはなりたくないわ)
……
……
なんとなく出来た気がしたクロネ。
アミュは特に気にしてなさそう……。
と、クロネが
「セリーヌさん、魔力が高い方なら誰でも使えるのですか?」
「そうさね……私は使えるけど、魔力が高くても使えないのも居るさね!」
と、さり気なくブレインマウス使えるアピールするセリーヌ。
ここ数日で目まぐるしく変化するのに対応しきれていないオボロ……。お腹を触り……少し痩せたのでは?と感じていた……。
【能力】
・オボロ、クロネ、アミュ
ブレインマウス(脳の口)




