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第3幕〜セリーヌの工房・③魔導士ゼクセンとメルの変化

 

 固有魔法紙を手に取り工房へ入っていくセリーヌ。後に付いて行くオボロ。クロネは入れないので扉を開けたまま頭を少し工房内へ入れる。

 セリーヌがソファーに座り、壁にかかっている古い地図で説明しながら語り始める。


 800年ほど前、ここガイアールでは、魔族と人間の争いが頻繁にあった。魔族は魔法で戦い、人間は獣人やドワーフ、エルフを巻き込み武器、魔法で争っていた。魔力では魔族がエルフよりも高いため魔族優勢。しかし人間の中に魔力量が魔族に匹敵する程の者が現れた!


 ━━『魔導士ゼクセン』


 理由は不明だが、彼は様々な地域の争いを魔法で鎮静化させて行く。その魔法は魔族も人間も……戦場すら巻き込むほどの威力。ここの帝国領の北方で大規模な争いが始まった。魔族も人間も全兵力で争う。ゼクセンは争いの中心地にありったけの魔力で魔法を放ち、魔族も人間も巻き込み大地ごと消滅。生き残った魔族はさらに北の不毛な荒野大陸へ逃げて行く。人間やほかの種族はそれぞれの地域に戻り、争いを避けるかのように生活をしていった。

 ゼクセンの名は大戦の直後から広まっていく。大戦を終わらせた『大魔導士ゼクセン』を信仰する者と、世界を滅ぼそうとした『大魔導士ゼクセン』を崇拝する者の二極化となりさらに広まって行った……。


「で、この固有魔法紙は……ゼクセンの物さ!文字が薄くてわかりにくいが、間違いなくゼクセンの固有魔法紙!」


 オボロもクロネも歴史に付いて行けてない……。


「私は半魔で魔族の血も流れてるから、これと契約することは無理だと思うさ」

 とセリーヌは残念そうに言う。

「ちなみに、ゼクセンの固有魔法がどういう魔法かは私は知らないさ。魔法紙を読み取る限り解るのは……ディメンション=ドアって記載されてるの、かな……」


 オボロはセリーヌに聞く。

 自分に魔力はあるのか?と。

 じっと観察するセリーヌ……。


「ふぅ……オボロちゃん……魔力量………ゼロでは無い」


 なんだか嬉しいオボロ。


「と、言うことは……俺でも契約可能?」


 セリーヌ

「可能性はあるさね。さぁどうする?」


 ……


 ……


「セリーヌさん、血の盟約とか固有魔法紙とか、歴史や魔獣のこと教えてもらい助かります。……沢山あり過ぎて少し整理したり相談したいので待ってもらえますか?」

 と、丁寧に言うオボロ。


 セリーヌは、いつでも声かけておくれと言い、ワインを飲み始めた……。


 クロネと庭へ行くオボロ。

 一人遊んでいるアミュ……。

 オボロはアミュには難しいから結果と意思確認だけにしようとクロネと決めた。脇のテーブルの椅子に座るオボロ、前にクロネが地面に座る。

 ……長老の話、セリーヌの話を元に整理し相談していく。クロネは理解力もあって自分の意見もあり、それを伝えられて、頼りになるなと思うオボロ。相談すること一時間ほど経過し……

 固有魔法紙はオボロが契約してみることに。血の盟約に関しては少し考えさせてほしいとクロネの意見を尊重することに。


 オボロとクロネが今後の大切な話をしている中……アミュは庭で転がったり跳ねたり、木に糸を垂らしゆらゆらしたり、石ころを蹴ったりして独り遊んでいた……。

 石を蹴っていると、工房脇の水場の方へ飛んで行っていまい、追いかけて行くと………。

 水場の隅っこにメルが座っていた……。


「あぁ!メルちゃん見っけっ!」

 前脚で指すアミュ。


 メルは驚き、屋根の上まで避難。

 メルを見上げるアミュ……。

 口の牙をモゴモゴしながら

「あ!あの時は……驚かせてごめんなさいっ!」


 下に降り、タライの縁に座るメル。

「……うん……ありがとう……」

 どこか元気のないメル。


 アミュは8つの単眼でメルを見つめている

「………アミュねっ、皆のお話難しくて……全然わからないのっ!………でもねっお兄ちゃんはアミュの王子様で、助けてくれたり、褒めてくれたり、お話してくれたりで、楽しいよっ!……だから……お兄ちゃんのこと、嫌いにならないで欲しいなっ!」

 と、前脚を左右に振り、庭へ小さく跳ねながら行ってしまった……。

 生後1ヶ月ほどの蜘蛛に諭されてしまったかのような、生後10数年のホムンクルスのメル………。


 タライの縁に座ってるメル……。

 溜まった水に両足を入れ、バシャッバシャッと水飛沫を飛ばしている………。

 メルの頭の中で、シルバーの翼の記録を断片的に追う……。

 マキがプレゼントとして買ったネックレスを嬉しそうに眺めてる姿。爽太が汗水垂らし現場で働いている姿。公園を手を繋ぎ仲良くデートしてる姿。そして……星が輝く夜景の綺麗な場所で……二人の顔が重なり合う姿……。


 シルバーの翼が、ふわりと浮き………


「ホントハ……ハナレタクナカッタ……」


 爽太の気持ちなのか……マキの気持ちなのか……それとも、心の深層にあるメル自身の気持ちなのか……メルはどう解釈して良いかわからなかった……。


 ……


 水飛沫を飛ばしてる足を止めたメル!

(私はシルバーの翼から産まれ、その翼はマキが選んで、爽太が大切にしてた物。爽太は一時の感情で手放して後悔をしている!)


 さっきの言葉は……


 ━━━爽太の気持ち!!


 タライの縁に立ち、工房へ向うメル……。



 オボロとクロネはセリーヌのところへ行き、まずは固有魔法紙の契約をしたいと伝えた。セリーヌはソファーから立ち上がり、工房が壊されても困るので庭へ行くことに。

 セリーヌは固有魔法紙をオボロに渡す。


 自分の爪で肉球を刺し……


 魔法陣の中心へ垂らす……


 緊張してるオボロ。

 見守るクロネ、セリーヌ。


 唸りながら固有魔法紙に魔力を流す……

(確か魔力は心臓……)

 歯を食い縛るオボロ!

(身体を巡るイメージ)


 魔法陣が光り出した!


「今のうちさ!!」

 セリーヌがアドバイスする!


 固有魔法紙を身体に押し当てるオボロ!


 ……


 ……頼む!奇跡を!


 ……固有魔法紙が魔法陣だけになり━━━


 オボロの身体の中に吸い込まれて行く!!


「やるじゃないか!オボロちゃーん」

 セリーヌは喜ぶ!

 クロネも安堵したかの様子。

(さすがですわ、オボロ様!)


 ━━と、オボロは目眩に襲われる!


 ふらつき……よろめき……その場に倒れた!


 駆け寄るセリーヌとクロネ!


 セリーヌはオボロを担いで工房に入りソファーに寝かせる。


(これじゃ……成功したかわからないじゃないか……契約しても、魔力少なすぎて発動できないかも……)

 そんな不安がよぎるセリーヌ。


 頭をドアから突っ込み心配そうに見つめているクロネ……。

 アミュも駆けつけ窓に張り付いて様子を伺っている。


 ━━━と、メルが工房へ戻ってきた。


 ドアの隙間から入り……クロネの頭上に仁王立ちするメル!


(あら?私、床ではなくてよ?)

 と、ツッコミ入れるクロネ。


 ソファーで寝ているオボロを見つめるメル……。


 息を吸い込み……


「師匠ぉぉぉう!やっぱりメルは外の世界が見たい!!」


 息を切らせてしまうメル……。

 大声のメルに皆驚く!


 ぜぇぜぇ息をしながら


「メルを……翼を……在るべき所に……戻して……」


 メルは、また息を吸い込み


「爽太の所に……もーどーしーてぇー!!」


 ソファーで目を瞑っているオボロの胸元へ……


 抱きつくように……


 飛び込むメル……


 もふもふの体毛を、小さな手で撫でながら……


「戻ってきたよ……爽太」


 ……

 ……


 胸元で落ち着いているメルとオボロを、セリーヌは微笑ましく見ていた………。




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