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第3幕〜セリーヌの工房・①爽太のアクセサリー

 

 セリーヌの工房━━


「師匠ぉぉぉう!ゴーレム壊されちゃったよ?どうするのっ?」

 メルがセリーヌの周りを飛び回る……。


 ワインのジョッキをドスンと置き

「ここまで来れたんだ!面白いじゃないか?」

 と、ケラケラ笑うセリーヌ。

「メル!客人をもてなす準備をしときな」

 しぶしぶ返事をし、工房の奥へ飛んで行くメル……。


 ━━━━━━


 ゴーレムとの戦闘を終えたオボロ達………。


 ようやくアミュが脚を外し自由になれたオボロ。アミュは起き上がりゴーレムを見る……。食べられそうもないので諦めるアミュ………。少し距離を取りオボロとアミュの所へ降りるクロネ………。何故か明後日の方向を向いている……。


 オボロとアミュ「???」


 とりあえず階段を登る3匹……。

 特に会話も無い……。


 直進の長い階段……。


 ………登りきった!


 少し靄がかかる山頂……。


 先に小屋があった!


 近付く3匹……。


 ━━━━と、扉が開き中から一人の女性が出迎えた!


 背も高く細身だが出る所は出てスタイルが良い。キャスケット帽を被りロングスカートに、ボディラインがわかるピッタリした長袖のシャツ。髪色は真っ青でロングヘアー、前髪で右目が隠れている……。肌の色は顔も含め青白く、人間の肌の色と違う雰囲気……。出迎えた女性は3匹を見て


「ようこそ……私の工房へ!」

 と、小屋近くの丸テーブルへ誘う女性……。


 誘う方へ向うオボロ達……。


「お互い色々聞きたいことはあるだろうが……私はセリーヌ。ここの工房に住んでる」

 と、椅子に座るセリーヌ。


 3匹はそれぞれ名前を伝えた。

「オボロです」

「クロネですわ」

「アミュだよっ!」


 オボロはセリーヌの対面の椅子に座るが、クロネとアミュはオボロの後ろで、何故か固まっている……。


 後ろで……ひっそり話す2匹。

 アミュ

「クロネちゃん……あの人……人間?……魔力が……」

 クロネ

「ええ、そうね……それに……人間臭さがあまりしないのよ……」

 と、オボロの耳がピクッと反応し聞えて来る。


 咳払いをするセリーヌ。

 一瞬、静まり返る。

「そうだねぇ……とりあえず町の外でクロネに事情は聞いたのさ。それで……オボロちゃんは?どうしたいのさ?」

 テーブルに身を乗り出し、胸元をわざと見えるように前のめりになり聞くセリーヌ。と言うか……酒臭いセリーヌ!


(何なの?オボロ様をちゃん付けして……それに……あの攻め方!)

 羽根に顔を埋め、嘴で羽根をむしり取りイライラを緩和させるクロネ。


 オボロは胸元をチラ見するが特に気にせず

「んー俺はクロネとアミュが町へ入れて、問題無く生活出来ればなって」


 椅子に座り直しセリーヌ

「あると言えばある……無いと言えば無い……」

 黙るセリーヌ。


 セリーヌが小屋の方をチラリと見る。

 窓から覗いていたメル!

 セリーヌに見られ、サッと隠れる!


「先に私のことを話すよ……」

 セリーヌは立ち上がり小屋の方を見て

「ほら、皆出ておいで!怖がらなくて良いからさ!」


 ……


 静かに扉が少し開く……。


 小さな人型の羽の生えた生き物が1体……また1体……さらにもう1体……すぅーっとセリーヌの所に飛んで集まる!

 メルを筆頭に……計8体も!


(こ、これって……妖精?)

 直感で思ったオボロ!

 クロネとアミュは1度見ているが、まさかこんなに沢山居るとは考えてなかったようだ。


「私はこいつらと、ここの工房で生活してるのさ。━━ホムンクルス━━ってやつさ。錬金術のうちの1つさ……解りやすく言えば……物資から生命を作る」


 きょとんとする3匹……。


「こいつらに固有の名前は無い……言葉話せないから。可愛い鳴き声くらいだね。で、メルだけ何故か話せる」

 と、メルを手のひらに乗せテーブルに立たせる。


 人間のような肌色で女性っぽく、髪は黄色で長さは腰くらい。白く膝くらいまでのワンピース。透き通る4枚の羽。


 顔を近付け見るオボロ……。

(まんま妖精だよ、な)


「ちょっとぉ!あんまりジロジロ見ないでよっ!」

 メルがほっぺを膨らませ言い放つ!


(なんだろう?この子を見ると……懐かしさと後悔の気持ちが湧いてくる……)

 と、感じたオボロ。


 対してメルも

(あれ?さっきは変な事いったけど……この気持ち……懐かしい?違う……無念?なんだろう?)

 セリーヌの後ろに隠れるように飛んでいくメル。


 セリーヌは、ホムンクルス達を作っていたら、たまたま産まれて来たらしく、面白いからそのまま暮らしてると。さらに、酒の話し相手には丁度良いらしい。


 ………陽が沈んできた……。


 風が冷たい……。


 セリーヌが立ち

「ここまで来るのに大変だったろう?今日はここで休んで行きな。部屋もあるし。あっクロネとアミュは……部屋は無理かな、ごめんねぇ」

 と、工房へ入って行く。


 残された3匹……。

 椅子ごとくるりと動かし、クロネとアミュの方へ向くオボロ……。


 何から、どこから話して良いかわからないオボロ……。クロネも同じように思っている……。アミュに至っては……頭がパンクしそうな雰囲気……。今わかることは……セリーヌは思惑はあるかも知れないが協力的なこと、今から山を降りるのは危険なこと……くらい……。今日は身体を休めて明日話を聞くことにする3匹。


 アミュはテーブルの近くの木と岩壁の間に巣を張ってくれた。そこで3匹仲良く寝ることに………。


 工房の窓から3匹を見つめるセリーヌ……。

(私が持ってても使い道ないから……話してみるかねぇ)

 ワインを、ぐいっと飲み干すセリーヌ。


 ━━夜


 中々寝付けないオボロ……。

 巣から降り、近くの丸テーブルの椅子に座り向きを変え、空を見上げる……。


(山頂だから月が近くに感じる……)


 扉が開き足音が……。


 セリーヌが酔い醒ましに外へ来た。丸テーブルをオボロと挟んで椅子に座るセリーヌ。


「眠れないのかい?」


「……なんかね」

 月を見つめて言うオボロ。


 話し声でクロネが目を覚ます……。


 オボロは、メルの存在が、ものすごく気になり、セリーヌに聞いてみた。

 セリーヌはホムンクルスのことから簡単に話してくれた……。宝石や鉱石、金貨や銀貨を培養液に入れ魔力を注ぎ、その中で育て使役し、労働力や身の回りの世話させていると。正確には忘れたが……10数年くらい前に、1匹のホムンクルスが、空から落ちてきたと鳴き声とジェスチャーで伝え、金属片を持ってきた。確か……


 ━━銀色の鳥の翼━━


 みたいな感じだった、と。


 ━━━!


 ……10数年前?


 ……シルバーの翼?


 ……もしかしてそれは━━


 オボロは爽太の頃の記憶が一部甦って来た!


 爽太とマキが付き合って半年の記念にと、マキが爽太にプレゼントしたネックレス。

 細めのチェーンにシルバーの翼のアクセサリーが付いたネックレス!!マキは仕事中は外してても良いけど……デートの時は付けて来てほしいって控えめに言ってた。そう言われてたが、嬉しくて仕事中もずっと身に付けてた。

 そんな中、天気が悪く現場が早く終わったので、驚かせようとして連絡無しで車で学校まで迎えに行った爽太。校門近くで路駐して車を止めようとした、その時……マキが学校の同級生と思われる男と笑いながら会話し一緒に帰るのを目撃してしまった!爽太は路駐せず進路を変え、海の見える公園まで車を飛ばす。車を止め海が見える柵まで走る。

 初めて嫉妬した爽太!

 今すぐにでも、問い正したい気持ちでいっぱい……。しかしそれをしたらマキに嫌われて、破局してしまうのでは?と言う恐れ……。

 ……

 ……


 プレゼントされたシルバーの翼のネックレスを強く握り締め、嫉妬心と恐れのまま引き千切り━━


 思いっきり海へ投げた!!


 確かその数日後に正直にマキに聞いたら……ただのクラスメイトで、その人彼女も居るし……爽太さんへの気持ちは変わってないよと、笑顔で返されて安心したっけな……。ただネックレスに関しては、仕事中に付けてて、現場でいつの間にか無くなってしまったと嘘をついてしまったことだけは後悔したな……。


(嘘ついたままで、ごめんね……マキちゃん)


 話を続けるセリーヌ。

「それで試しにシルバーの翼でホムンクルスを作ったら……メルが産まれたのさ!最初は驚いたさ!いきなり喋り出すから━━━」


 オボロの目から涙が溢れる!

 椅子から立ち上がり、セリーヌの前に来て両腕を掴む!!


 話の途中で驚くセリーヌ!


 小刻みに身体を震わせてるオボロ……。


 涙をポロポロこぼしながら


「それ……俺のだよ……」


「マキちゃんから……初めてもらった……プレゼント」


 セリーヌ「???」


 まだセリーヌの両腕を掴んでいるオボロ……。


「シルバーの翼のアクセサリー」


「海に投げ捨てちゃったけど……」


「俺のなんだよぉぉぉぉ!」


 両腕から手を離し、膝から崩れるオボロ……。


 声を荒げ


 子供のように泣きじゃくる


「マキちゃーん!嘘ついたままで……ごめんなさーい!」


 セリーヌの膝の上で泣きじゃくるオボロ。

 大人の貫禄か、動揺せずオボロの頭を優しく撫でるセリーヌ………。


 話を聞いてしまったクロネは……感動のひと粒の涙を流す……。

(……きっと、元の世界の時の話でしょう……辛かったのですねオボロ様……マキと言う方は……きっとオボロ様の大切な方……私が入り込む余地があるのでしょうか………)

 そして、悲観的な涙がひと粒溢れてしまうクロネ………。


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