第1幕〜別世界での日々・1
━━!!
(……さっきのは……死ぬ直前の記憶、か?)
むくりと起き上がり、口周り目元を腕でクシュクシュするオボロ。
ペタペタと壁まで歩き、足元の硬そうな石で、正の字を足していく。
「サバイバルの基本でしょ!」
自信満々なオボロ。
正の字は、ちょうど5本になっていた。
ここへ来てほぼ5日。
洞窟前の岸壁で、猫特有の伸びをする。
(あの後マキちゃんも………)
生きていると、信じたいオボロ。
(ナナは、助けを呼べたのだろうか?
そもそも開けたところまで行けたのだろうか?
そして生きているのだろうか?
もし仮に生きていても、学校や普段の生活は?)
今の自分のことよりも、心配し考えてしまうオボロ。
「………生きていて欲しい、マキちゃんも………ナナ、も」
うつむきながら、声を漏らすオボロ。
━━━━━━━
ここでオボロの日々を話していこう。
起きたら、正の字。
湧き水で顔洗いや水分補給。
猫特有の毛づくろい、伸び。
あっ。トイレは━━━
砂浜、です。
そして、砂浜の清掃とエサ探し。来た頃の砂浜は、ごちゃごちゃしてたのでオボロがしている。(勝手に)
その後は、砂浜に近い森へ行き、木ノ実や野草を採取。
日が落ちる前には寝床の洞窟へ戻る。
そんな流れである。
━━━━━
5日かけて、少しだけ砂浜が片付く。
あの日「オボロ」と名乗りを上げてから、身体が軽くなったような感じになり、体内でエネルギーのようなのが、ぐるぐる巡っている感覚がわかった。
が、いまいち使いこなせていない。
身体能力は、獣人と言うだけあって身のこなしは、中々のもの。それに合わせて猫の身体能力・機能も合わさり、危険察知や俊敏性は、抜群である。
5日経ち、ようやく理解しかけたオボロであった。
一つ悩みがある。
手、である。
ぷにぷに肉球では、爪を出してもしっかりと握れない………。
オボロは、剣を持ちたかったのである。
数日悩み続け、剣は諦め、体術と、この可愛らしい爪で狩りをする事にした。
とは言え、爪は欠けたりしたら痛いので、あまり使わぬようにしようと考えるオボロ。
そして、日々の日課として砂浜で走り込み・空手の型っぽい動きを繰り返してる。
で、猫型獣人なのだろうか、掛け声や力を入れるときは「にゃっ!」とか「ふにゃっ!」とか「んにゃー!」になっている。
空腹な事もあるが、なんとか食い繋いでいる感じである。
夕暮れになり、寝床の洞窟へ行く。
「はぁー今日も頑張った!俺!」
小さな手を握りしめる。
寝る前に一つやることがある。
湧き水の下に穴を掘り貯めておく池のを掘る事。
砂浜で拾った錆びたナイフやこれまた錆びた鉄製品。
なんとか頑張ってナイフを握り、ガリガリ削る作業の繰り返し。
「……まだまだ、かかるな」
「今日はここまでにして寝よう」
オボロは、集めた枯れ葉の上に丸くなり、あくびをして眠りにつく。
━━━
そんな日々が二週間ほど続いた。
湧き水の池もほぼ完成し、水浴びをしようと思えば出来そうだ!
え?猫は水嫌いでは?
猫は猫でも、獣人だから問題ないようですよ。
砂浜にいるカニっぽいやつ・ザリガニっぽいやつも捕まえて食べたりしている。
ウサギっぽい小動物や小鳥っぽいのも狩れるが、生肉は………まだ無理。なので、爪や錆びたナイフで加工し干し肉っぽくしてる。
たまに岸壁付近に小魚が打ち上げられてる時は、ご馳走だ!
走り込みをしてるせいか、森の中も楽に移動できるし、木から木への移動もすんなり可能になってきている。
「うんうん!良し!身体能力上がってるな!」
そう確信するオボロ。
砂浜を歩いていると
大きな酒樽が砂浜に埋まっていた。
走って近づくオボロ。
なんとなく見覚えが、ある。
━━━キーン!!
かん高いその音とともに強い頭痛。
この獣人の記憶だろうか。
頭の中に流れて来る。
ふらつき片膝になるオボロ。
酒樽に片手を添えて
………
………
「あぁ、俺はこれに入れられて、いや、詰め込まれてここに流れついたんだな………」
断片的ではあるが、頭によぎったのは次のようである。
酒樽から空が見える。
(目線はこの獣人であろう)
酒樽を覗き込む二人の猫型の獣人。
(家族か?両親か?)
涙を二人とも流し、何か言っているが聞き取れない。
そして蓋が締まり暗闇になる。
しばらくして
━━━ザッバーン!!
海に投げ込まれるような音。
そこで記憶は終わった。
━━━━━
オボロはその酒樽を砂浜から引っ張り出す。
「酒樽は、この身体の獣人にとっては最後の品だ!近くに置いとくよ」
酒樽を背負って、寝床の洞窟へ行くオボロ。
少し涙目なオボロ。
オボロが泣いているのか。
獣人の身体が泣いているのかは、定かではない。
寝床へ戻り湧き水で酒樽を洗う。
「んん?」
酒樽の中の砂を湧き水で流し出すと、ベルトが一緒に出てきた!
「この獣人の子のかな?」
「良し!使わせてもらおう!」
「明日天日干しして、乾かそうかな!この酒樽も!」
と、ある事に気付くオボロ。
……
最近、独り言が………多い。
♢私とキャットふぁーざぁーを見つけて下さりありがとうございます!
♢不定期更新ですが、ブックマークや応援、コメントよろしくお願い申し上げます!
⇩⇩⇩⇩⇩