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第3幕〜小さき者と師匠

 

 オボロ達がスーデルの町に到着する数時間前━━


 頭をゆったり包み込む感じの黒のキャスケット帽に、焦げ茶の長いマントに身を包む女性と、その周りをひらひら飛ぶ小さき者がいた。

 その女性は町の出入り口から少し離れた岩と木々が数本生えている所へ行き

「悪いね、またここで待っててね」

 と、小さき者を待機させた。


「お酒も良いけど、私達のものちゃんと買ってきてよね?師匠!」

 と、小さき者は念を押す。


 師匠と呼ばれた女性は、出入り口の方へ振り返り、背を向けたまま手を振った……。

 小さき者は岩に座ったり、木々の周りを飛んだりしている。


 ━━出入り口の方が騒がしい!


 葉っぱの生い茂る中に身を潜める小さき者。その中から様子を見る………。

(ちょっと……あの3匹……異質かも……)

 小さき者の身体が震え上がる!


 ━━━こっちに来る!!


 木々の上に移動しさらに、葉っぱの中に潜るように身を隠す小さき者。

(もぉ━!師匠ぉぉ!早く戻って来てよぉー)


 異質な3匹は、小さき者が潜む木々の前方で休み始めた!

 町の壁で爪研ぎを始める猫獣人……。

 その爪研ぎを見つめている黒い鳥……。

 2匹の周りをカサカサ動き回り、飛び跳ねてる蜘蛛……。


 木々の上の葉っぱの中から、こっそり観察している小さき者……。

(師匠ぉ!この3匹……なんかやばいよぉ)


 猫獣人は背伸びをし壁に密着し寝そべり始めた!

 黒い鳥は猫獣人へ、羽根で扇ぎ、涼しそうな風を送っている……。

 蜘蛛は忙しなく周囲を動き回っている……。


 ━━━買い物中の師匠と呼ばれてる女性は……


 買い物を済ませ広場のベンチで一杯呑んでいた……。


 と、慌てた一人の門番が手紙らしき物を持ち、走り過ぎて行く!

 横目で見る師匠。

 もう一人の門番が何か言っている!

 ……町中が騒ぎ始めた!

 聞き耳を立てる師匠……どうやら怪しい獣人と大きな獣が町に入ろうとしているらしい……


 民家は戸を占め、お店も慌てて店先の商品を片付け始めた!


 そして、走り過ぎて行った門番が、今度は出入り口の方へ小走りで行った……。

 町のざわめきは、まだ続いている………。


(全く人間って奴らは……騒々しいさねぇ……)

 と、ちびちび酒を飲む師匠。


 町の外━━━


 暇を持て余している3匹……。


 小さき者は、木々に身を潜め静かに3匹を見ている……。


 と、門番が猫獣人だけを呼んで町の方へ行った………。


 残った鳥と蜘蛛………。


(見つかったら……食べられちゃうかも……)

 小さき者は、恐怖している!

 ここから抜け出す勇気も無く、ひたすら静かに師匠が戻って来る事を願っていた……。


 ━━━町の中


 門番に連れられて歩くオボロ。武器である角錐はクロネに預けたオボロ。

 町には獣人もちらほら見かけるが、ほとんどは人間。

 突き刺さる視線……ヒソヒソ話している人間……。

 オボロは怒りよりも……落胆の方が大きかった……。猫が立って歩いてるのだから、こうなるのは必然と。


 広場を門番と通り抜けるオボロ……。


 ベンチで一杯呑んでいる師匠……。門番とオボロを横目で見る……。

(騒ぎの原因は……あれか?……獣人?だけれども……不完全さねぇ……)

 ベンチを立ち上がり、町の出入り口へ歩き出す。



 町の奥にある町長の屋敷へ門番とともに入るオボロ。玄関を開けると、すでに二人の人間が待ち構えていた!


 門番が町長らしき人間の方に耳打ちする。

 下がる門番。

 オボロは、何を言われても良いように心構えをしている。


 一人の人間が話しかける。

「はじめまして、オボロさん、でよろしいかな?私はスーデルの町長のギラクです。隣に居るのがギルド長のトスクールです」

 町長のギラクは身なりがしっかりしていて、すらっと細身。

 対するギルド長のトスクールは、筋肉質で身体中、細かな傷跡……。


 会釈するオボロ。


 ギラクは、手紙を読み、ザザ村での活躍と貢献を信用したこと、長老直々にお願いされた事をオボロに伝えた。


「その上でなのですが……トスクールと相談の結果……オボロさんのみ、町の出入り、買い物、利用するのであればギルドの利用を認めます。……宿泊の方は……ご不便でしょうが……ご遠慮願いたい……」

 と、丁寧に話された。


(最低限、俺だけ許可あるから問題ないな!)


「ええ!それで構いません!町の方々に迷惑かけぬよう行動致します!」

 と、迷わず即答し深く頭を下げるオボロ。


 その振る舞いに少し驚いているギラクとトスクール。


 町長の屋敷を後にするオボロ。

(とりあえずクロネとアミュに報告だけしておこう)

 背筋をピンと伸ばし歩き出すオボロ。


 と、腰に剣を携えた人間が普通に話し掛けてきた!

 少し驚くオボロ。

 その人間は気さくに話しかける。

「よぉ!獣人さん!俺はこの町で冒険者してるスコットだ!……まぁ視線が気になるだろうが、他にも獣人は居るからさ、気にしないでくれよ!」

 と、肩を軽く叩かれ、別な方向へ歩って行った……。

(普通に話し掛けてくれる人間もいるんだな)

 ちょっぴり安心したオボロ。


 ━━━━町の外では


 かなりの時間が経ったように感じているクロネ。町の出入り口の方ばかりを見ている……。


 木々が数本密集してるのを、ずっと見つめているアミュ……。


「アミュ?何か気になるの?」

 クロネが聞く。


「んーなんかねっ?居るんだよっ上の方にっ!」

 と、アミュは言いながら前脚で手前の木をバサバサ揺らし始める!


 揺れる木々!


 落ちる葉っぱ!


 そして……悲鳴とともに落ちてくる小さき者……。


「ひゃ━━━!食べないで!食べないで!美味しくないから━━━━!!」


 地面にぶつかりそうになる前に、態勢を変え上空へ飛び上がる小さき者!!


 鳥と蜘蛛を確認すると直ぐに木の天辺まで行き隠れる!


 アミュは不思議そうに

「クロネちゃん、なぁにあれ?」

 クロネも不思議そうに

「さ、さぁ私も初めて見ますわ」


 妙な生き物に遭遇する2匹。


 ━━━と、怪しげなマントの人間が魔法陣を展開し走って来た!!


 とっさにクロネは方向を変え

「敵意はありませんわ!」

 と、大きく両方の羽根を広げた!!


 怪しげなマントの人間は魔法陣を解除し、近づいてくる……。


 木の上から小さき者が、弱々しく

「し、師匠ぉぉぉう!怖かったぁぁ」

 半べそで師匠の後ろに隠れた。

 その小さき者は外見は、人間の女性っぽく髪は黄色で腰くらいまで長く、膝くらいの白いワンピース、透き通る4枚の羽。


「はぁ……まったく……おまえが外が見たいって言うから、買い物の時くらいなら良いかと思っていたのに……やはり外は危険さね」

 と、師匠。


 小さき者が師匠の顔の前に行き

「そんなぁ……師匠ばかりずるいよ!」


 マントから手を出し、小さき者をなだめる師匠。


 ぽかん、とやり取りを見てるクロネ、アミュ。


 師匠と呼ばれてる女性は、早とちりして悪かったと誤り、クロネも脅かすつもりは無かったと伝え、和解へとなった。


(この鳥と蜘蛛……ただの獣じゃないさねぇ……町の騒ぎの本命はきっとこいつらだね?しかも鳥の方は……普通に言葉を話す……面白そうさね)


 師匠と呼ばれてる女性はクロネに話しかける。

「ちょっと町が今騒いでてね、もしかしたら……原因はあなた達?」


 と、クロネの後ろに隠れていたアミュが

「えーそうなのっ?……お兄ちゃん大丈夫かなぁ?」


 ━━━!


(言葉を話す……蜘蛛!!)

 益々興味が湧く師匠と呼ばれてる女性。


 師匠と呼ばれてる女性は、差し支えなければ事情を説明してほしいと告げる。


 しばらく考えるクロネ。

(この人間……結構魔力があるわね……全て話さなくても今の現状だけ話すのは問題無いですわ)


 クロネは、ザザ村と言う所から旅でこの町に来たこと。ザザ村の長老がこの町に入れるための手紙も持参で。今オボロが町に居るはず、と。


 岩に寄りかかり聞いている師匠と呼ばれてる女性……。


「なるほど、ね。で、そのオボロってのは……猫が立ち上がった様な獣人さね?」


 言い方にイラッとしてしまうクロネ!


「ええ!とても立派な猫の獣人のオボロ様ですわ!」

 言い返すクロネ!


(ふーん、獣人が獣を従えてる……中々面白そうさねぇ)

 と、思う師匠と呼ばれてる女性。


 寄りかかってる岩から離れクロネの前に行き


「悪かったね、私はセリーヌ。この小さいのは、メル。向こうの山頂で訳あって生活してるの。………何か困ったら私の工房までいらっしゃい」


 クロネは毅然と

「ええ、覚えておきますわ!」


 セリーヌ

「ふふふ……私の工房まで来られたら……の話さね!」

 と言い残し、メルをキャスケット帽の中へ入れ、去って行った………。





X→→@kuinagokyuu


登場キャラのイメージAIイラスト有ります。順次増やそうかと考え中。


今はメルのみですが。

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