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第2幕〜3匹の旅立ち

 

 ━━━━昼下がり


 装備した篭手と脛当てを見てニヤニヤするオボロ。

 村の隅っこで動き回り、不都合が無いか確認している。


 アミュはまた獲物を大木の前でマーマン達に自慢していた。


 漁から戻ってくるクロネ。


 オボロは二人を呼んだ。

 篭手と脛当てを自慢する!

 クロネは上から下まで舐め回すように見る!

(あっ……防具を着けてるオボロ様も……素敵!)

 アミュはオボロの周りを飛び跳ねながら

「わぁー!お兄ちゃん強そっ!」

 調子に乗り色々ポーズを決めてしまうオボロ!


 動きを止めオボロ1つ咳払いし、口を開く

「えークロネ、アミュ!今ルーベに武器を作ってもらってます!それが出来たら……ここを、ザザ村を出ようかと考えてます!」


 クロネ

「構わないですわよ、私はオボロ様に付いて行きますので」


 アミュはその場で飛び跳ねながら

「えーせっかくおじいちゃんとか子供と仲良くなれたのにぃ━━」


 オボロはアミュの頭部を触り

「そうだよな……でもまた来ようと思えば来れるから……それまで、バイバイだよ?アミュ!」


 牙をモゾモゾ動かしながらアミュ

「うぅーわかったっ!」


 アミュを説得するのが難しいと感じるオボロとクロネ……。


 そしてオボロ達は長老の元へ。

 いつもの長椅子に座ってる長老。

 オボロは長老にそろそろ村を旅立つ予定と伝えた。遠くを見ている長老……。オボロ、クロネ、アミュ順に顔を見て

「そうかの、そうかの!たいしたもてなしが出来なくてすまなかったぞえ……今夜にでも町長宛に手紙を書いとくぞえ!」


 オボロとクロネは深く頭を下げ感謝の気持ちを表した!

 アミュもそれを見て、遅れて頭部を下げ地面に近づけた。


 ━━━その夜


 アミュは出来たばかりの集会所の裏手の岩場に巣を張り眠りにつく。

(ねぇマザー?アミュ、王子様に逢えたのっ!独りぼっちになったアミュを助けてくれて、一緒に旅をしようてっ!………見守っててねっ!マザー!)


 クロネは長老宅の脇で眠りにつく。

(ここに来てから……この羽根でオボロ様を包んでいないわ!たまには外で寝れば良いのに……そうすれば………この羽根の中でオボロ様と……一緒に………)

 羽根をビタンビタン地面に叩きつけ……頰を赤く染めていた………。


 オボロは長老宅の屋根に座り夜の景色を眺めていた。

(んーこの景色も見納めになるな……。はぐれ島の時もそうだが……やっぱり別れは辛いよ……)


「うん!笑顔でお別れしないとな!」


 遠くで波の音が聞こえる……。


 どこか淋しげな波の音……。


 ━━翌朝


 潮風が無いせいか、陽射しも強く暑く感じる。


 広場で背伸びをし、鱗の篭手と脛当てを撫で、嬉しいなオボロ!


 ルーベが完成品を持ってオボロの所まで歩いてくる!

 待ちきれないのか、オボロもルーベの方へ急ぎ足で向う!


 広場中央の大木辺りで、対面する二人!

 ルーベは微笑みながら完成品を見せた!

 角を差し込む筒が取り付けられた肩掛けのベルトを優しく装備するルーベ。

 そこに角を差し込む!

 背中に刀を背負っているようだ!


 早速抜いて見るオボロ!

 握りを掴み……筒から抜く!


 ━━!


 四角錐の形状で握りの下部には希望通りに肉球くらいの平な円!長さはオボロの腰より下くらい。遠目で見れば長い釘のよう。


 ある事に気付くオボロ!

 確かシーサーペントの角は……円錐状だったような……。そのことをルーベに聞く。円錐状だと見た目がそのまま角なため、ルーベのこだわりになってしまうが、加工し武器らしくデザインしたと!円錐状から四角錐に加工するのに時間を費やしてしまったと。

 その苦労話を涙目で聞き

「ルーベ!あなたの職人魂!大切に使わせてもらいます!」

 と、高らかに宣言するオボロ!


 ひゅんひゅん手首で角を回し背中の筒に納めるオボロ!

(侍みたいに……出来た!)

 これがやってみたかったオボロであった。


 ルーベはさらに、余ったシーサーペントの鱗と薬丸を手渡した!長老から話は聞いているらしく、鱗は売ればそれなりな金額になるだろうと。薬丸は村で使うぶんくらいを残して、袋に入れて譲ってくれた!オボロに近寄り……

「長老には内緒にしてくださいね」

 と耳打ちされるオボロ。


 どうやらオボロ達が旅立つ準備をしてることは、すでに村内に知られてるようだった。


 集会所の柵を作っているグリナのもとへ行くオボロ。

 グリナには、小難しい知識と技術を無理矢理教えこんでしまったと、平謝りするオボロ。グリナは両手を前に出し「自分の知らない知識や技術を教えてもらって、見ている世界が変わった。一区切りついたら、他のマーマン達にも教えたい!」

(グリナは良い親方になりそうだ)

 と微笑むオボロ。


 村を見渡すオボロ。

 アミュが子供らと遊んでいるので様子を見に行く……。


 蜘蛛の巣のトランポリンで、一緒になって宙を舞っている。子供もアミュも、ケタケタ笑って遊ぶ光景は、世界が変わっても、そこだけは何一つ変わらないんだなと、目を閉じ想うオボロ………。

(アミュの無邪気さは、場を和ます事もあるな)


 クロネが見当たらないので、砂浜へ向うオボロ。

 漁を終えて漁船を接岸している所だ!ゴーラの声で船乗り達がロープを引き漁船を寄せて固定させていた。

 クロネがオボロの方へ飛んで来る!

「オボロ様!武器が仕上がったようですわね?」

 背中の武器を見つめるクロネ。

(アミュの脚みたいに尖ってますわね……)


 サッと抜き取り構え、ひゅんひゅん手首で回し背中に納めるオボロ!

 得意気な顔!


(出で立ち、仕草、振る舞いがどれも素敵ですわ!)

 身体を揺らし歓喜に浸るクロネ!


 作業終わりのゴーラが話かけてきた。オボロはいつもクロネが迷惑かけてすまないと頭を下げる。

 ゴーラ

「そんなことねぇですぜ?オボロさん!クロネさんが居ると邪魔するグンカンドリや魚が近寄って来ねぇんですよ!我々の守り神ですぜ!ガハハハ!」

 後ろにいるクロネを見るオボロ。

 当然!のように胸を張るクロネ!

(そりゃあれだけ強くて存在感丸出しなら……本能で寄って来ないよ……)


 その日の夕方は、村を挙げての宴になった。

 オボロはそこで、明日この村を旅立つ事を皆に伝えた。



 ━━━翌朝、村の入り口


 小鳥達が囀っている……。


 朝陽がまだ低く横から照らす……。


 長老はじめ、マーマン達が見送りのため集まってくれている。

 長老は町長宛の手紙とシーサーペントを倒した証の鱗を渡してくれた!これなら、信用されると。


 オボロは新装備の『鱗の篭手』『鱗の脛当て』『シーサーペントの角』で立っている。クロネ、アミュは両脇に立っている。2匹とも体型が大きいため、新装備のオボロが霞んで見えてしまう……。


 クロネがゴーラを呼んだ!

 マーマン達を掻き分けクロネの前に行く。クロネは内側の羽根を嘴で適当にむしり取った!それをゴーラに渡す。両手いっぱいの黒い羽根……。

 クロネは少し照れ臭そうに

「その……ゴーラさんに差し上げますわ!漁船に飾ればきっと守ってくれますわよ?」

(オボロ様がダリル達にしていた餞別までは行きませんが……)

 ゴーラや船乗り達はクロネの羽根を崇めるかのように喜んだ!!


(やるなクロネも)

 羽根に手を添え

「良いんじゃないか?クロネ!」

 と、励ますオボロ。


 アミュはマーマンの子供らと、傷付けないように前脚で握手をしている。

「また、来るからねっ!その時はまた遊ぼっ!」

 ひょこひょこオボロの所へ戻るアミュ。


 腹部を撫でながら

「そういう優しさ、気遣いは……俺も嬉しいな!アミュ!」

 と、褒めるオボロ。


 長老の前に歩み出るオボロ!

 ゴーラ、グリナ、ルーベ……マーマン達を見渡すオボロ……。


 深呼吸し

「ザザ村の皆様!長い間お世話して頂き誠にありがとうございます!」

 深く頭を下げるオボロ。


 ……


 頭を上げ続けるオボロ。

「私とクロネを救出してくれたゴーラ!集会所の建て替えに協力させてくれたグリナ!新装備の作成をしてくれたルーベ!……そして色々な知識をくれた長老!……こんな姿の私達を受け入れてくれたマーマンの皆様!本当に……本当に!感謝してます!ありがとう!ザザ村!」


 言いたいことをまとめるのが苦手なオボロ……。

 皆、静かにそれぞれの想いを胸に聞いてくれていた。


 長老が一歩前へ出て

「あ━構わんて!構わんて!こんな辺鄙な村、旅人すら来んからな!」


 もう一歩前へ出て

「オボロさんや、クロネさんや、アミュちゃんや……村のために、我々のために身体を張ってくれたこと、わしは忘れんぞえ?……スーデルの町は……人間もおる。くれぐれも気をつけなされ」


 ━━━!


(名前覚えてたのかよっ!)

 オボロ、クロネは心の中でツッコミを入れる。


 オボロに近寄り小声で

「砂浜を綺麗にしてくれて嬉しいぞえ」

 長老は振り返り、優しく笑いながら村へ戻って行った……。


 オボロ「?」


 マーマン達が手を振る。

 声を挙げて手を振る。


 オボロ、クロネ、アミュも手を振りながら歩み出す。


 目指すは『スーデルの町』


 3匹の旅立ちの始まりである。



     第2幕〜終幕



【新装備】

 ・オボロ

 鱗の篭手

 鱗の脛当て

 シーサーペントの角



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