第2幕〜新装備作成と首輪物語
さて、オボロ、クロネ、アミュの3匹となった翌日━━━━
クロネは相変わらず漁が気に入り、今日も護衛も兼ねて出かけて行った。ゴーラ達船乗りとも談笑するほどの仲になっていた。
アミュは……興味ある所に行きあっちこっちと村内を巡っている。初めは怖がっていたマーマン達も、人懐っこいのか、子供っぽいからか、馴れ馴れしいのかは不明だがアミュと打ち解けている雰囲気。
そこには安堵しているオボロ。
(アミュはトラブルメーカーに成りかねない……。しっかり見守らないと!)
妙な使命感が込み上げているオボロ!
グリナがオボロを呼ぶ!
集会所の建て替えがほぼ終了な様子!全体を見渡すオボロ……。グリナに集会所の周りに低めの柵を作って特別感を出してはどうかと提案。グリナは口をパカンと開け締めして、なるほど!と言う感じで受け入れてくれた!室内に入るオボロ……。天井も高く、小窓からの陽射しも丁度よい!中央に置かれた大きめなテーブルに、丸太を縦にした椅子。どれもマーマンサイズでオボロでは足がぶらぶらしてしまうくらい……。
グリナは、この集会所は皆で使うが、客人や旅人が来たときには宿にしようかと考えていると、打ち明けてくれた。その案にオボロは褒めて賛成し、最低限ベッドが何台かあれば良いとアドバイスした。
グリナは太い腕を掲げ、やる気十分だった!
オボロは装備が気になりルーベの店舗へ足を運ぶ。
店舗ではルーベが作業していた。店舗の隅に身体を立てかけるオボロ。店舗らしい店舗ではなく、棚やテーブルに、それらしい商品が置かれている。
━━!
オボロに気付くルーベ。
作業に集中してるルーベは、どこか伝統工芸の職人を感じさせていた……。
篭手と脛当ては完成してて、ルーベに装備してもらった!
獣の革を二枚重ね合わせた上に、エメラルドグリーンの鱗を丁寧に一部分が重なるように貼り付け、縫い合わせてある。装着後、触ってみる……篭手も脛当てもオボロの思っていたのとは違っていた!オボロは硬いのを想像していたのだが、ルーベ作成の物は……僅かに曲がり腕と脛を優しく包む様な感じだった!ルーベが頷きながら解説してくれた!我々マーマンの表皮をイメージしたのだと!ルーベの腕を見つめるオボロ……。
(なるほど!篭手と脛当てと似たような構造!)
納得しルーベの肩を肉球でポムポム叩くオボロ!
ルーベが奥からシーサーペントの角を持ってきた……。握りの部分を調整したいと。握ってみるオボロ……。爪を出し肉球で挟む感じ……。形は良さそうだが、何か今ひとつ………。
と、ルーベは柔らかな革を持ってきて角を取り上げ持ち手に巻き始めた!
しばし待つオボロ……。
手渡される角……。
握ってみるオボロ………。
━━━!!!
柔らかな革で爪が食い込み持ちやすくかつ、力も入る!
ニンマリするオボロ!
それを見てルーベもニンマリする!
それは仮止めだから、完成を待ってて欲しいと!
両手を大振りに振って雑貨屋を後にするオボロ!
オボロは装備ですっかり忘れていたのがある。
━━首輪!
━━【願いの首輪】
燻し銀色で、何故か繋ぎ目が無い首輪……。この猫獣人の所有者なのか、転生した時に装着されたのか不明。触れても爪でカチカチ叩いても、何も起きない……。頭を通して外そうとしても外せない!そんな首輪だった。
━━━ぷちん!ぷちん!
オボロの口元の髭が引っ張られた!
「いってぇ━━!!」
口元を抑えて叫ぶオボロ!
周りを見渡すが……誰も近くには居なかった……。
━━━━━現代
秋晴れが鮮やかな10月中旬の日曜日。
サキは遺族会のメンバーらで、捜索に参加している消防団やボランティアのサポートで事故現場付近の詰め所に居た。冷えた飲み物やお茶菓子を手渡し、頭を下げ感謝の気持ちとともに、挨拶して回るサキ。
普段のサキとは思えないくらいな低姿勢なサキ……。
(これもナナちゃんとマキ、爽太君のため!)
と、飲み物が終わりそうなので地元の人の軽トラックでホームセンターまで買い出しに出る。
出入り口近くに駐車し店内へ………。
出入り口前に仮設の店舗。
ピエロの衣装でアクセサリーや小物を販売している。
特に気にもせず地元の人と店内へ入ろうとした時━━━!
置かれている小物の中に、記憶の片隅にあったイメージと同じ物があった!
それも2つ!
サキは方向を変え、走って見に行った!
店員のピエロが手をかざし、どうぞ見て行ってと言うジェスチャー。
………手に取りじっくり見るサキ………。
(間違いない!これだ!)
1ヶ月ほど前に、きぬの様な猫に夢の中で託されたメッセージとイメージ。
━━真っ赤な革の首輪。
━━シルバーで肉球を型どったアクセサリーがぶら下がっている首輪!
迷わず購入するサキ!
ピエロが猫の柄の紙袋に入れて渡してくれた!
そしてサキは店内へ小走りで行った………。
手を振るピエロ……。
霧の中に吸い込まれるように消えて行く仮設店舗とピエロ…………。
そして買い物が済み………
飲み物を大きなカートに乗せ車まで運ぶサキと地元の人。
…………?
(あれ?もう店仕舞いだったのかしら?)
と、周りをキョロキョロするサキ。
後にも先にも、そこにはもう仮設店舗も、ピエロも……存在しない………。
━━━━その日の青葉家
ナナ中学一年生、ダイキ中学三年生。
ダイキは部屋で受験勉強に勤しんでいる……。とにかく数学が苦手なダイキ。担任からは苦手科目を中心に対策したほうが良いとアドバイスされていた。
ナナは中間試験も平均的より少し下くらいな成績で、なんとか勉強についていけてると安心してる。幼馴染のモモカちゃんに教えてもらってたおかげではあるが……。
リビングで遠くを見つめながら、玩具を左右に振りおぼろと遊んでいる……。
精神科に通っていたが、心療内科の方が合っているからと、紹介状を書いてもらい近くの心療内科に通い始めてたナナ。自分でも、無理して笑顔を出していることは、理解しているが、気持ちの整理と峠道、森林、サイレンの音……その時に見聞きし、類似した景色や物・音を聞くたびに……どうしても、逃げたくなる自分がいる……。
玩具を振る手が止まるナナ。
もっと遊んで欲しいと「みゃおみゃお」鳴きながら踝あたりに身体を擦り付けるおぼろ。それに気付きおぼろを抱っこして、膝に乗せ頭、背中を優しく撫でるナナ。
膝の上で、グルグルと喉を鳴らすおぼろ。
と、サキが遺族会のサポートから帰宅して来た!
慌ててリビングへ行くサキ!
おぼろときぬの居所を確認!
買ってきた首輪を出すサキ!
ナナがおぼろを抱っこしたまま駆け寄る!
「わぁー!可愛い!え?これって首輪?」
サキは頷き
「そ、そう!なんか可愛らしいから……つい買ってきちゃったのぉ━━!」
と、何事も無かったかのように答える。
と、食器棚で高みの見物をしていたきぬが、降りて来て……サキの足元に!
サキは寄ってくるきぬに嬉しくなり、しゃがんで首輪を見せる。
匂いを嗅ぎ、かじり付き、猫パンチをするきぬ。
首輪をナナに託すサキ……。
ナナはきぬをなだめて、首輪を装着させる!
直ぐにおぼろを捕まえて、同じように首輪を装着させる!
2匹の様子を伺う二人……。
きぬは首をぶるぶるっと何回か振り、そのままリビングのソファーへ行ってしまった……。
おぼろは……首を激しく振ったり、後ろ脚で首輪を取ろうと蹴ったり、床をコロコロ転がったりと……忙しない!
ナナは笑いながら
「おぼろは首輪初めてだから仕方ないよぉ!」
(この首輪に何か意味があるの?きぬちゃん?)
と、心でつぶやくサキ……。
しばらく首輪と格闘するおぼろ!
━━━シルバーの肉球が、ぼんやり光り、静かに消えていった!
━━━ザザの村
雑貨屋から歩き出すオボロ。
両手を組み後頭部に当て、マーマン達と話ながら村内を練り歩いていた。
………【願いの首輪】が、ぼんやり光る!
そして、静かに消えて行く……。
………肉球のアクセサリーの中に……オボロの髭が入っている事は……ナナもオボロも知らない………。




