第2幕〜ザザ村にて・2
普段と違い本日のザザ村は潮風が緩やかで心地よい……。
クロネは先端の羽根は生えてきて、普通に飛べるようになり、体内の毒も回復した。
オボロは、チャクラと薬丸のおかげで左肩も順調に回復している。左肩がぐるぐる回せる程度にまで。普通の人間であればもっと回復はかかるであろう……。この回復力は獣人の特性なのだろう。
オボロは集会所の様子を見に行く。グリナを呼び、進歩状態を聞く。……あとは屋根と中のテーブルや椅子を作ることくらいと。聞き終わり集会所を一周する。
(グリナ達に、後は任せてもいいな!)
と、再度グリナの所へ行き、何かあれば遠慮なく聞いてくれと伝えておいた。
クロネは久しぶりの空を優雅に楽しんでいる。
その様子を地上から眺めるオボロ……。
━━━!
(これなら!)
早速、廃材置き場へ行き手頃で頑丈そうな板を数枚見繕う!忙しいのを承知で、グリナに作成の依頼をした!もちろん地面に図解で説明して!快く引き受けてくれたグリナ!ありがとうと肩を叩くオボロ!
村内をブラブラするオボロ。
行き交うマーマン達と気さくに話し談笑する。
と、雑貨屋のルーベが手招きしていた。店舗へ行くオボロ。どうやら依頼していた試作品が出来たのこと。早速ベルトに通してみる!大きさも、さほど邪魔にならなそう!ルーベはこだわったとこを自慢気に話してくれた!蓋はオボロの手では取りにくいと考え、爪でもやりやすく工夫してくれた。大きく長い回転式の留め具。そして鞄の取り口も少し広めにしてくれた。これにはオボロも満足でルーベと握手を交わすほど。作ったルーベも誇らしげに微笑んだ。
ルーベは器用だし、使う人のことを考えて作ってくれるんだなと、嬉しく思った!
長老は今日もいつもの長椅子で村内を眺めている……。
(長老って何歳なんだろ……)
オボロは、ふと思う。
━━━━漁から慌てて戻ってくるゴーラ達!
ゴーラと船乗りのマーマンらが走って長老の元へ集まる!
オボロは集まりの後ろのほうで聞き耳をたてる。クロネは飛んでいるのを止め、長老宅の屋根に停まり話しを聞いている。
……
ゴーラが早口で長老に伝えてる!
……
……
長老の視線がオボロに向く!
……
マーマン達をかき分け長老の前に行くオボロ……。
長老曰く……漁をする海域までの海路近くの鍾乳洞に『シーサーペント』が住み着いたらしい。満腹時は被害は無いが、空腹時は凶暴で漁に被害が出てしまうと。
長老が申し訳なさそうに……病み上がりなのを承知で
「若い獣人や黒い鳥とゴーラ達と協力して、ちと追い払ってくれぬかの?」
(その前にいい加減名前を……覚えてもらいたい……)
オボロとクロネの心の声。
オボロは二度も助けられ、手当までしてもらったのだから断る理由は無いと!屋根の上のクロネを見上げると……クロネも賛成のようである!
長老に、引き受ける旨を伝えたオボロ。
対策と詳しく話しをゴーラとすることに……。
ゴーラと船乗り達、オボロ、クロネと揃った。
今日発見した時は、鍾乳洞周辺をのんびり泳いでて、距離を保ちつつ村へ戻って来た。空腹時なら真っ先に船に突進だろうと。
体長は小さくてもゴーラ達の漁船くらい。鋭い水掻き、大きく強靭な顎、個体差にもよるが長い角……。
オボロは聞いた。海上での戦いになるのか?と。ゴーラはそうなる、と。船が壊れては今後の生活が破綻する可能性を考えてるオボロ。鍾乳洞の近くに地面や足場になる箇所はあるかと尋ねる。……しばし空を見上げるゴーラ……。あるにはあるが……住処の鍾乳洞へ近づかないといけないと。そのくらいの距離ならクロネに掴まって行くから問題無いと!後ろでクロネは胸を張り、任せなさいアピール。
……オボロは考えている……。
満腹にさせなくても、餌を撒いたりして気を取らせてる間に撃退しては?とゴーラに尋ねる。ゴーラもそれなら少し安全かもしれないと答える。オボロは多めの餌を用意してほしいとお願いした。
ゴーラはもう日が暮れるから明日以降にしたほうが良いとして、対策会議は終了となった。
オボロはクロネに
「今回はクロネの飛ぶ能力がメインになるかも……」
クロネ
「羽根の調子も戻ってるので問題ありませんわ!……それに漁の邪魔をされる訳にはいきませんので!」
と、意気込みを言う。
(頼もしくなったなクロネも……俺もそう思われるようにならないとな……)
クロネを見ながら思うオボロ。
━━━━━━━
アミュは湿気の多い森を抜け、岬近くで佇んでいた……。
強く吹く潮風……。
うっかりすると、潮風でひっくり返されそうなくらい……。
岬を登り、陸地ギリギリまで行くアミュ……。
下を覗き込む……。
強く打ち付ける波!
海面が遠くに見える……。
初めて見る海に興味と怖れが交錯してるアミュ……。
本能だろうか……危険と感じ海沿いを進み、少し低めな所を目指すアミュ。
(アミュの王子様……どこ?)
しばらく進み振り返るアミュ……。岬が高く遠くに見える……。崖まで進み下を覗き込むアミュ。
穏やかに波打つ海面……。
真下の波打ち際は、少し開けた岩場……。
心地よい潮風……。
アミュは崖の先端に糸を付着し、糸を垂らし海面近くまで降りる……。
打ち寄せる波飛沫が、顔にかかり、驚いて糸を巻き上げ逃げる!
(これが……海……海水……冷た━い!)
糸を少し下げ、潮風に揺られているアミュ……。
(森の風より……気持ちいいし……たっのしぃ━!)
8本の脚を広げ、潮風に身を任せて楽しんでいるアミュ!
………
………
近くの海面下で……何者かが目を光らせていた……。




