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第2幕〜静養・迷走・お告げ

 

 ……陽射しが眩しい……


 ……周りがざわついている……


 目を開けると長老はじめ大勢のマーマン達が居た!ゴーラ、グリナ、リーベの姿も見えた。長老のお気に入りの長椅子で寝かせられているオボロ。

 長老が朝一番でオボロらを発見し村人総出で手当をしてくれた。オボロは二度も助けられ言う言葉が見つからない。

 クロネは手当をされ長老宅脇の木陰で安静にしてると、ゴーラが伝えてくれた。二人とも命には別状はないが……オボロの左肩の噛み千切られた部分には再生は時間がかかるだろうと長老が言う。左肩には包帯代わりと思える獣の革が巻かれ、紐で固定され保護されていた。

 ……生きていればなんとかなる!そう考えるオボロ!何事も前向きに!

 長椅子から立ち上がり、長老ら周りにいるマーマンらに頭を下げ周るオボロ。長老は、口癖のように、構わんて、構わんて、と繰り返す。こんなにも良くしてくれてウルウル涙目になってしまうオボロ。

 マーマン達を通り抜けクロネの所へ向かった。木陰で羽根を広げぐったりしているクロネ……。首だけオボロの方を向けて、黄色の目をパチクリしまた地面に伏せるクロネ。いつもの強かなクロネではないことを察するオボロ。ゴーラは何度も漁の護衛に来るクロネを気に入っていて、心配そうに、まだ体内に毒が残っててそれでぐったりしてると教えてくれた。

(あの吐き出した液体でか!?)

 オボロはクロネの頭を肉球で優しく撫で……

「悪いな……俺のために頑張ってくれたのに……しっかり静養しような」

 オボロは猫のように、顎に片腕を乗せ丸くなり尻尾を口元まで持ってきて、クロネに寄り添うように見守っている。

 クロネは……オボロのかすかな体温を感じ、温かな気持ちになった……。


 数日ほどオボロもクロネも静養をした。


 ━━━━━━


 洋館の入り口ドアで眠っていたアミュが目を覚ます!

 破壊されたステンドガラスから明るい陽射しが差し込み……ネチル伯爵の死骸を照らしている。

 モソモソと起き出し辺りを見渡すアミュ。


 ━━━!


 ネチル伯爵の死骸を発見!

 近寄りお尻を向けて……糸を発射!糸だらけになるネチル伯爵の死骸!

「ふん!ざまあみろっ!アミュの王子様は強いんだから!」


 ロビーの階段を登り丁字の踊り場に落ち着くアミュ。破壊されたステンドガラスを眺めながら思い出すのは王子様の事ばかり……。

「ねぇマザー?王子様って本当に居るんだね!アミュ見つけたよ!マザーがこの世界の事、たくさんお話してくれたの忘れないから!」

 と呟くアミュ。

 と、同時に……巣にネチル伯爵が攻めて来た時、マザーが自分を逃がすために庇ってくれた事を思い出す!

 ……死骸のネチル伯爵を睨み!

(このっ!ナルシストめっ!)ふつふつと怒りが込み上げるアミュ!


 マザーがアミュを庇うとき


 ━━貴女には女王の資質があるわ━━


 その言葉も思い出した!

 ブラックウィドウの巣はネチル伯爵のせいで全滅……アミュだけが生き残った。


「アミュ……独りぼっちだよ……」


 黄昏れるアミュ……。


 ……ぎゅるるる


「お腹減った……」


 階段を駆け下りその勢いのままドアに体当たり!

 ドアは破壊され、洋館の庭に飛び出すアミュ!


(捕食しながら……王子様を探そう!)


 アミュは湿気の多い森へ消えて行く……。


 アミュにとっては巣から出るのは産まれて初めての世界!

 糸を枝に絡ませ遠心力と風を受けてひょいひょい移動。お腹も空いてるので見かけた獲物は出来るだけ襲い食事をする。ブラックウィドウは巣を張り獲物を待つタイプではなく、獲物に近づき牙で噛み、毒を注入し捕食する方である。噛む前に捕縛することもしばしば。

 現在野犬を食事中なアミュ……。動きが止まってる野犬……牙で噛み付いた所から、ガツガツ飲み込んでいく……。骨は噛み砕ければ飲み込む……。この世界の蜘蛛は雑食性。育ち盛りのアミュには数体の野犬では足りないくらい……。湿気ある森を8つの鋭い脚で器用に走り、糸でダイナミックに飛んだり捕食を続ける。

(満腹になったら……王子様探ししなきゃ!)

 今は、色気より食い気なアミュ……。


 どのくらい森を掛け巡っただろうか………湿気ある森全体が暗闇で冷えてくる……。アミュは8つの赤い単眼で暗闇でも移動や捕食は可能。


 ━━!


 方角はあってるか不明だが森を抜けたアミュ!


(……王子様が居るかも知れない村って……どこ?)


 今になって気付くアミュ……。


 近くで岩壁に当たる波の音が聞こえる……。



 ━━━━━現代、青葉家


 サキ、ダイキがナナの家へ越してきてひと月ほど経つ。

 各々生活環境にも慣れてきていた。ダイキは、文句を言いながらも電車で通ってる。サキは仕事、家事、遺族会など多忙なのは変わっていない。ナナは幼馴染のモモカちゃんと仲良く登下校。学校でも皆、気にかけてくれてる様子。ナナ本人としては、気にかけてくれたり、心配され過ぎるたりしてて、無理に笑顔で応えてしまっていた……。父、爽太の言葉が逆にナナにプレッシャーになっていた。


 残暑も終わりそうな9月下旬の夜中……。


 ダイキは勉強疲れか、部屋の机で突っ伏して寝てる。

 ナナはベッドですやすや眠っている。

 サキは日々の疲れだろうか……たまにイビキをかいて寝ている……。


 リビングでは……丸くなり寝ているきぬ。

 おぼろは……夜中のドタバタ独り運動会をしている……。体毛も綺麗に整っている。眉間の菱形の所は……地肌のまま……。そして最近出来た楕円形の左肩の傷。これも地肌が見えている……。


 ━━━!


 突然きぬの目が光る!

 サッと立ち上がり、迷わずサキの寝室へ向う……。

 何かに操られているかのように……。


 サキの寝室へ侵入するきぬ……。

 寝ているサキ……。

 きぬはサキが見下ろせるタンスの上へ移動する。


 サキを見つめるきぬ……。


 ……サキ


 ……水嶋サキ


「ん、んんー」と、うわ言のサキ。


 ……きぬとおぼろの首輪を、新しくしなさい……。


「んんー」うわ言のサキ。


 ………!


 と、寝ているサキの頭の中に首輪のイメージが入ってくる!


 きぬはタンスから飛び降り、リビングへ戻って行った……。


 ━━━!


 目が覚めるサキ!


(夢?……幻?……きぬちゃんが話しかけてたような……)


 部屋にはもう、きぬの姿は無い……。


 おぼろはリビングで、夜中の独り運動会を楽しんでいる……。




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