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第2幕〜ザザ村にて

 

 ……横を向くオボロ。


 同じ目線のクロネ。


 目が合う二人……


 オボロは体格が変化し成猫になり目線がクロネと同じなことに喜んでいる!

(こないだまではクロネのこと、見上げてたからな……)

 それとは対称に……クロネは目が合った事により、見つめられてると思うと飛び回りたくなるほど気分が高ぶっている。

(あぁそんなに見つめらては……)

 頬を染めるクロネ。


 オボロとクロネはマーマンの村人に感謝を伝えて回った。

 まずは長老に感謝としばらくの滞在の許しをもらうことにした。……長老は、あっさり許可し回復するまでのんびりしなされと言ってくれた。

 次に漁船で助けてくれた船長のゴーラさんのいる砂浜まで行った……。救助してくれた事、手当してくれた事を感謝した!ゴーラ、他の船乗り達は、貴重な亀孔雀が拝めて、こちらこそありがとうと、逆に感謝されてしまった。詳しく話を聞くと……オボロとクロネが海面に落ちそうな時に、亀孔雀が浮上し甲羅に落ち、漁船近くまで運んでくれたらしい。

(さすが異世界!珍獣のようなのが存在するんだな)と感じるオボロ。

 ゴーラは船長で他のマーマンの船乗りをまとめていて、長老の次に発言力があった。


 オボロらは村を周り見かけるマーマンたちに、同じように感謝としばらく滞在する旨を伝えて行った。クロネも、オボロに合わせるように頭を下げ敵意は無いアピールをしていく。


 ━━そして再び長老宅へ


 長老は揺り籠のように揺れる大きめな椅子にゆったり座っていた。


 オボロは転生の事は隠し、はぐれ島での出来事を長老に語った。静かに聞いてくる長老。


 ……


 長老が椅子に揺られながら話す。

 この村は、マーマンが生活している村で大陸の最北東に位置するのどかな所。100年くらい前までは、北西に洋館がありそこに領主は居たが、その後任が来なくなり、そのままらしい。今はその洋館は獣の住処になっており村民が近づかないように立て札やロープで区分けしている、と。


 頷きながらオボロは、ここの世界の火について訪ねた。


 火は基本魔法でやりくりしていて、火打ち石と言うのはあるが使い勝手が悪いためあまり使われてない。


 ━━長老が揺れる椅子を止め、立ち上がり、棚の方へ行き丸まった紙を持ってきた。


『魔法紙』


 上部には文章、下部に魔法陣が描かれている。

 この世界では、魔族以外の種族はこのような『魔法紙による契約』で覚える。契約しても使えるかどうかは個人の魔力量・適正で決まる。契約方法は自分の血を魔法陣の中心に垂らし、魔力を流す。ここにあるのは低級の基本的な魔法紙しかない。

 オボロはワクワクしながら長老に火の魔法を!とお願いした。

 長老は火の魔法紙を出し、針で肉球を刺しオボロの血を垂らす……。


 ━━━!


 垂らした瞬間、魔法紙が、ぱっと光り燃えた跡のように灰になってしまう!

 長老は首を横に振る……。

 どうやら火の適正は無いオボロ。

 長老は追い打ちをかけるように

「オボロさんには魔力が、ほとんど無いぞえ……しかし溢れるオーラがあります!そこを伸ばすのがええぞ!」と。


 喜んで良いか、悲しんで良いか困惑なオボロ……。

(火が……火が使えないのは……つらい!)

 クロネはオボロの背中に優しく羽を当てて同情してる。


 続いてクロネ。

 長老は同じように火の魔法紙を出し、羽先に針を刺しクロネの血垂らす。


 魔法陣が光りクロネの身体に魔法紙が吸い込まれようとしている!━━━が、そこで魔法紙が灰になってしまった………。


 残念がるオボロとクロネ。

(火は……諦めるか)


 長老は再度棚に行き、2枚の魔法紙を持ってきた。

 長老の見立てで、クロネは風と水ならどうかと。


 風から試すクロネ。


 血を垂らす。


 魔法陣が光り、魔法紙がクロネにすんなり吸い込まれていく!


 成功か?


 満足げな長老。


 次に水……


 血を垂らす……


 魔法陣が光り始めた!


 ……


 風の時とは違い、間がある……


 魔法紙がクロネの方へ近付き、じわじわと吸い込まれていった!


 おそらく成功。


 長老はクロネに魔法の使い方を教え始めた。

 習得した魔法紙はどちらも基本魔法で

『アクアボール』

『エアカッター』


 早速外で試運転することに……。


 前方には森の木々。


 魔力の源は心臓、その魔力を脳に伝え、その魔法陣を自分の前に描くことをイメージをしなさいと。


 目を瞑り集中するクロネ……。


 ……クロネの足元の雑草が不規則な揺れ方をしている……


 ━━━!


 クロネの胸の前に魔法陣が現れた!


「アクアボール!」


 魔法陣からバレーボールくらいな水球らしきものが勢いよく放たれる!


 前方の木に当たり貫通と共にへし折る!なおも勢い止まらず何本もへし折って行く!


 長老もオボロも、放ったクロネも驚く!!


 続いて風……


 同じように集中するクロネ……


 先程とは違いすぐに魔法陣が胸の前に現れる!

 クロネの周囲に風がヒュンヒュン駆けめぐっているかのようだ!


「エアカッター!」


 魔法陣の幅と同じくらいな三日月を真横にしたのが飛び出した!目で追うのが精一杯なくらいな速度!


 スパッ!スパッ!スパッ!


 静かに大木を通過して行くエアカッター!


 長老の見立ては正しかった!

 クロネの適正は『風』

『水』は微妙な適正……。

 とは言え長老はクロネに伝える。

「かなり魔力量があると感じますぞ?魔法陣を大きくすればそれだけの威力だが、魔力消費も激しいぞえ。そのことを踏まえて魔法を使うとええぞ!」と、アドバイス。


 クロネは右の羽を胸に当て頭を下げ感謝を表した!


 長老はオボロの方へ向き

「オボロさんには、オーラのコツを教えようかの」

 オボロの身体全体をじっと見つめる長老。


「オーラを巡らせてくれるかの?」


 言われた通り実行するオボロ。


 ━━━!


 オボロ自信驚いた!

 成猫になったからか……自分でもわかるくらい容易くオーラを巡らせられた事に!


 長老「その状態を1日保たせる事は……厳しいぞえ?」


 うんうんと頷くオボロ。


 長老「使い所は慎重に考えることぞえ?」


 さらに頷くオボロ。


 長老「巡らせたオーラを手と足だけにできるかの?」


 試すオボロ……

 意識を手と足に……


 ━━!


 色々動き回るオボロ……

 感覚を試すかのように動くオボロ……。

 森の方へ行き、ひょいひょい飛び回り、オーラを凝縮させた足で木を蹴り倒し、爪をチャキンと出し木を切り倒す!そして地面に埋まっている大きな岩を……


「肉  球  掌  底!」


 ドドドご━━ん!


 細かく粉砕!!


 やらかしたオボロもクロネも驚きを隠せない!

(なんて華麗な動き!惚れ惚れしてしまうわ)

 目が煌めくクロネであった。


 腰を抜かしそうな長老が

「み、見事ぞえ!……オボロさん、目と耳にオーラを集中させると獣人固有の聴覚、視覚が冴えると思いますぞえ?」

 と、アドバイスしてもらった。


 この長老のアドバイスは、オボロ、クロネにとっては戦闘において凄まじい成果に繋がることになる!


 ━━!


 と、漁から戻った船乗りが慌てて長老の元へ!


「長老!またあのグンカンドリが獲物を横取りに!」


 頭を抱える長老……。


 オボロは躊躇なく

「追い払えば良いかにゃ?」

(試すにはもってこいだ)


 頭を下げる長老。


 オボロとクロネは、試す気満々で砂浜へ向かった!


 船員に案内され砂浜へ━━


 ゴーラはじめ船乗り達が追い払っている!


 大きさは1mほどか?胸元が赤く膨らんでいて、いかにも危険信号を出しているかのようだ……。10数匹入れ替わりで捕獲した魚を食べたり咥えたりしている!


 オボロは叫ぶ!

「ゴーラさーん!離れてー!」


 クロネとアイコンタクトでグンカンドリを追い払いにかかる!


 クロネは上空からエアカッターを1発ずつ放つ!上手く当てられないが、グンカンドリ達はクロネを敵と認識し、襲ってくる!

 旋回しながら、アクアボールを放つクロネ!やはり上手く当てられない……。

 グンカンドリ達は、甲高い声で体当たりを仕掛けてくる!

 避けながら距離を取りエアカッターを放つ!


 スパッ!スパッ!スパーン!


 数匹の羽を切り離した!


 残りのグンカンドリは速度を上げ、羽の平手打ちで砂浜へ落とすクロネ!


 オボロは━━


 獲物の周りに群がっているグンカンドリに威嚇しながら突進!

 散り散りになるグンカンドリを、目と耳にオーラを集中し補足!

(これは……便利だにゃ!)

 聴覚は冴え渡りわずかな音も拾ってくれる!視覚はスコープのように照準が定まりやすく、素早く動く物にも追いつけている!


 砂浜に居るのは5匹……。

 飛ぶ気配はなさそう……。

 オボロを囲むように陣取るグンカンドリ……。


 オボロは見渡し、威勢がなさそうなのから仕留めていく!

 正面から!

 足にオーラを集中!

 ダッシュで真横へ行き首をチョップ!

 背後から2匹飛び掛かって来るのを……耳で補足し━━━

 両手を握り締め……それぞれ裏拳で強打!

 振り返り一番近くのグンカンドリの背後へ周り、尾をしっかり握り、数回回転させジャイアントスウィングでクロネの方へ放り投げる!


 空中戦が終わっていたクロネは、投げ飛ばされたグンカンドリを……


 ばっち━━ん!


 両羽根で強く挟んで、砂浜へ落とす!


 残り1匹!


 目と耳で補足するオボロ!


 翔び立とうするグンカンドリ!


 少し距離がある!


(飛ばせるか?)


 爪を出しオーラを凝縮!


「行くにゃ━━━!」


 大振りに下から斜め上へ振り上げる!


「裂  空  爪!!」


 グンカンドリの背中、両羽根を鮮やかに裂いた!!


 上空でオボロの戦いぶりを、うっとりして見ているクロネ。


 オボロはオーラの確かな手応えを感じていた!

(あぁ!これなら少しはマシに戦えそうだ!)


 クロネも魔法が使えるようになり気分が良さそう。

(これでオボロ様の負担を軽くできますわ!)


 と、ゴーラはじめ船乗り達が集まってくる!

 このグンカンドリ……しばしば船から獲物を砂浜に降ろす時を狙って来るらしい。退治してくれて助かると。しかも、グンカンドリは焼いて食べられるようで、オボロらが退治したグンカンドリもついでに村へ運んだ。


 ━━━その日の夜


 村を上げて宴会とオボロとクロネの歓迎会が開かれた。


 焚き火の周りに集まるマーマン達。本日捕れた魚とグンカンドリ……そしてお酒。マーマンはお酒をそれなりに嗜むようだ。長老とオボロ、クロネの前に丸焼きのグンカンドリ、小振りな魚……。焼き物に目を輝かせるオボロ!

(久しぶりの焼き魚!焼き鳥!)

 クロネは1匹丸ごと食べたいらしくゴーラにお願いしていた。熱さを気にせずガツガツ啄むクロネ!

 オボロも串焼きの魚をかじる!頬に手を当て魚を味わう!続いてグンカンドリ!爪で手頃な大きさに切り口へ運ぶ……。胸肉あたりか?肉がぎっしりとして歯応えがある!

(やはり、火があると食が向上するよな)

 染み染み思うオボロであった。


 ひと通り食し、周りを見渡すと……長老宅の少し隣の家屋が崩れているのを発見するオボロ。

 ゴーラの所へ行き尋ねる。


 ……


 あれは村の集会所みたいな建物で、だいぶ古いから皆で建て替えようとしているところらしい。


 それを聞きオボロは━━


(ふーん……家の建て替え……ねぇ)


 現場監督だった爽太の血が、騒ぐ!


(これは……一肌脱ぐかにゃ?)


 独りほくそ笑むオボロ!


 クロネはその頃……グンカンドリの2匹目を、ガツガツ啄み堪能していた………。



       【戦歴】

 オボロ・クロネ

         VS グンカンドリ

 

クロネの魔法と羽技、オボロの冴え渡る体術・裂空爪で圧勝!


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