第2幕〜青葉おぼろ動物病院へ行く
学生は夏休みも残り1週間……。
サキは多忙さを極めている……。なので、ナナが学校始まるまで有給を取ることにした。
やることは山積み!ナナ関連でお世話になった人達、近所、学校への挨拶周り、役所への手続き……そしてサキのマンションから青葉家への引っ越し……。やはり、学生が一番気楽で良いなと、羨ましがるサキ……。
息子のダイキには母親と言う権力で、青葉家から中学へ電車で通わせることにさせた。あと半年もすれば卒業だし、何より希望してる高校が青葉家からのほうが近いため!もちろんサキの時間ある時は車の送迎はすると言う約束。ダイキは周りを良く見ている。サキが青葉家へ引っ越すと言った後、ダイキは数日悩み抜いて志望校を変えたのである!青葉家から近い高校で、受かりそうな高校を!志望校を急に変更したことをサキに話すと、サキは黙ってありがとう、とダイキの頭を撫でた。
引っ越しに関しては、現在住んでるマンションの部屋はそのまま使用。サキ名義の不動産のマンションだから家具やら季節物はそのまま残しても問題無いので、サキとダイキの必要な物を、数回に分けて移動するくらい。
さて、事故の遺族会のホームページに関して……。
最初は馴染みの弁護士に頼んでいたが、弁護士さんから連絡があり、是非ホームページの運営と管理をさせてほしいと名乗り出た会社があったのである!その会社……中堅のIT企業なのだが、そこの社長が爽太の同級生の本田君だった。ニュースを見て自分で調べて連絡し、いても立ってもいられず名乗り出た。爽太と同級生と言うことは……サキとも同級生!クラスは違っていたが爽太と良くつるんでたのは知っていた。なので話はスムーズに進み本田君の会社にお任せする事にした。本田君のホームページと、SNSなどでの拡散で爽太とマキを知る人が寄付をしてくれたり、捜索ボランティアに参加する意思を示してくれたりと、効果は上々であった!
(爽太君、マキ、あなた達は幸せ者よ……こんなにも想ってくれてる人達がいるのだから……)
サキはダイキもナナも居ないリビングで、独り泣くこともあった……。
ナナは━━
夏休みの宿題はほぼ免除されていた。1学期の復讐的なドリルだけやってもらいたいと学校側からの連絡。
一見すると、事故前のナナと変わらないように見えるが……時折遠くを見つめたり、大きな音に敏感だったり、ニュースで車や災害の映像が流れると目を背けたりするのが気になるサキ。
数日一緒に過ごして感じた事がある!
ナナの笑顔の出し方。事故前とは微妙に違う……。何か無理をして笑顔を作り出しているような……女の勘、なのかそこは見逃さないサキ。しばらくは病院通いと投薬の日々。
ナナ自身、心の中で戦っているのだろう……。時間はかかっても、立ち直ってほしいと願うサキ。
ナナは幼馴染のモモカちゃんに会いに行きたいと言うので挨拶も兼ねサキも同行することに。モモカちゃん家は番地は違えど歩いて10分もかからない距離。到着しチャイムを鳴らす。小綺麗な女性がドアを開ける。挨拶するナナとサキ。小綺麗な女性は母親で、すぐにモモカを呼んだ。階段から走ってくるモモカ。背はナナよりも少し高くスレンダーな体型。髪は肩甲骨くらなロング。涙目でナナに抱きつくモモカ。サキは母親に事情を説明し、これからもナナと仲良くしてほしいと伝えた。サキは念の為モモカの母親と連絡先を交換した。ナナは学校にまた一緒に登校する約束をし、モモカちゃん家を後にした。
━━翌日
夏休みも残すところ2日……。
ナナのひと声で、きぬとおぼろを動物病院へ……。ダイキは宿題に追われている。なのでダイキは留守番、サキとナナで動物病院へ!
きぬはゲージを見るなり抵抗……。おぼろは落ち着き無くゲージに入れても出たり入ったり……。猫2匹と奮闘すること数十分……。なんとかゲージに入れて、徒歩で動物病院へ。
動物病院の名前は『ほのぼの動物病院』家から近くの商店街の一角にある。
ナナはサキに先生見ても怖がらないでよね!と宣言。サキの頭の上には?マーク。到着するまでナナが説明してくれた。獣医師の山内タケル先生と奥さんのサユリさん。サユリさんはおっとりしてて気さくな感じ。山内先生は……身長も高く筋肉もあり強面。でも動物が好きで獣医になったと。高校までスカウトがくるほどの根っからのラガーマンだったらしく、そのスカウトを断ってまでして獣医を目指したと語ってくれた。
初めて来院したときは青葉家全員、山内先生を見て恐怖を憶えたそうだ……。山内先生の熱心さと動物好きなのは確かで、人柄を知る人は普通に接している。
━━人は見かけによらない━━
とは、こういうことなのだろう。
━━━動物病院へ到着
何人か待合室に居る。
受付を済ませ、待つこと30分ほど……
「青葉きぬちゃーん、青葉おぼろちゃーん」
呼ばれた!
診察室へ入るナナとサキ。
サキは動物病院は初めてなので、いつになく緊張。強面の先生にも緊張。
奥のカーテンが開き山内タケル先生の登場!カーテンレールすれすれな身長!肩幅が広い!顔も大きい!無精髭に堀の深い顔立ち!全てが威圧的!……サキの第一印象は……とにかく威圧的!
━━と、山内先生は笑顔で話しかける。口調は……体型とアンバランスで、少し高く優しい感じ。ナナは2匹の健康診断と予防接種をお願いした。
まずはきぬから……
きぬは病院嫌い……ほとんどの犬猫は苦手であろう。サユリさんがきぬを押さえつけ、山内先生が手際よく採血やら検便そして心音、眼球……首周りの確認をする……。諦めたのかきぬは大人しくなっている。そして隙を見て、予防接種!床に置かれたおぼろのゲージからは、きぬを探すようにミャーオ!ミャーオ!と鳴いている……。次は自分の番とは、知らずに……。
きぬは開放されゲージへ戻される。
そしておぼろの番……。
ゲージからナナがおぼろを抱きかかえてサユリさんに渡す……。病室内の匂いが嫌なのか爪を立てて抵抗するおぼろ!ナナもサユリさんも声をかけながら、なだめながら診察台へ……。山内先生は諸々の準備をして待ち構えている!威嚇するおぼろ!抵抗するおぼろ!
ナナ
「おぼろ!大丈夫だから!」と、眉間を撫でる。
その声と感触に安心したのか少し大人しくなるおぼろ!
山内先生はそこを見逃さず、手際よく採血!検便!心音!大人しくしてるうちに予防接種!と流れるような施術!山内先生はおぼろをなだめながら、身体全体を触診する……。
山内「……きぬちゃんは元気な子猫を産みましたね!」
お腹、口、耳、眉間、目、触りながら、観察しながら話す。
山内「腹部や肩、眉間に傷がありますが……怪我かケンカでもしたのかな?」
ナナ「あっ多分……産まれた時から……」
山内「そうですか。傷は塞がっているようなので感染は問題無いですよ!……ただ、ここの眉間のひし形のような傷は……可哀想ですが……地肌丸見えのままですね……」
ナナはおぼろの顔を見つめ
「良いの!先生!これは……おぼろのトレードマーク!」
と微笑む。
やり取りを後方で見ているサキ。
(ナナちゃん、おぼろちゃんのこと好きなんだな)と。
続けて山内先生は
「ナナちゃん!おぼろちゃんは幸運を呼ぶ猫かも知れないよ?」
ナナ、サキ、サユリ皆?
山内先生は少し興奮気味に
「キジトラ柄で……オッドアイなんですよ!これは先生も数えるくらいしか見たことないくらい珍しいのですよ!」
と、おぼろの目を皆に見せる。
━━━!
ナナは全く気付いていなかった!サキは聞いたとこない単語に?であった。
山内「ほら、右目が一般的な黄色で……左目が……銀青色のオッドアイ!」
ナナはおぼろの目を交互に見る……
「あ━━凄く綺麗!」
山内先生はまだ興奮気味
「古くから言われてる事なので確証はないのですが、オッドアイは珍しいため、縁起が良いとか、幸運を呼ぶとか言われてます!……ただ、オッドアイの猫は短命らしいので、精一杯可愛がって欲しいです!」
先生の話を聞き終えたナナ。
「先生!任せて!ナナと、きぬで成長を見守るから!」
おぼろを抱きかかえてナナは
「ナナ!大きくなったら獣医さんになりたい!」
溢れるほどの笑顔で宣言するナナ。
この言葉が
ガイアールにいるオボロに
届いているとは知らないナナ。
***表記の補足***
平仮名のおぼろ⇨現実世界のおぼろ
片仮名のオボロ⇨ガイアールのオボロ
と、認識してください。




