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第2幕〜海神の加護

 ━━━ザザ村


 緩やかな弧を描く入り江の海岸。そこに隣接するようにマーマンの村がある。砂浜から吹き抜ける潮風が心地良い。


 村人マーマンA

「ありゃーまた長老散歩かな?たまに、ふらぁと居なくなるからなぁ……」

 と、村人マーマンAの愚痴。


 村人マーマンB

「んだなぁ……高齢だべな……家に戻って来れるだけでも……ありがたいさ……」


 どうやら長老は、ご高齢な感じ。



 ━━━航海中のオボロたち


 イカダの帆を立て、波風で進んでいく。オールで張り切って漕いだかいがあった!後方を見るオボロ。

(……はぐれ島が小さく見える……)

 クロネは飛んだり、イカダで羽を休めたりの繰り返し。

 水分は川の水をローグ手作りの樽になみなみと入れておいた。保存食は魚と肉の干物、木の実、高台に実ってる洋ナシっぽいやつ。オボロは5日間くらいは保つと想定。

 イカダで航海など経験は無い!爽太の時の記憶を使い、浅はかな知識で航海に出た事を、ちょっぴり後悔してしまう。最悪クロネに捕まって飛んでもらおうとは考えているが、クロネだって飛べる時間、距離に限りはあるはず!だから気軽には頼めない……。男としてのプライドが滲み出る……。


 どうやらクロネは海水を飲めるらしい……。そんなにガブガブは飲めないようだが、水分補給くらいなら問題無い。そうなると、樽の水はオボロが多めに飲んでも良さそうだ。


 方位磁石も無い航海……素人とは恐ろしい……。船乗りから言わせたら自殺行為と言われるだろう……。


 漁船の方向へ進んでいるようで真逆のような……。何もない水平線が方向感覚を狂わせる……。


 悪天候には幸いなってないが……照りつける陽射しで、体力、気力を奪う……。


 クロネは飛ぶ時間よりも、羽を休む時間が多くなっている。オボロも似たよな感じ。帆の向きを変えるのも、まめにしなくなっている……。


 当然のように、徐々に口数が減っていく二人……。


 だが、オボロは諦めてはいない!

 かすかに漁船の一部が水平線の向こうに見え隠れしてるから!!クロネも、その現実だけは見落としてはいなかった!


 かすかな希望━━


 折れない心━━


 お互いを思いやる気持ち━━


 それらが唯一の支え。


 ━━!


 びゅびゅー!びゅびゅー!

 風が強くなる!

 その勢いでイカダは水面投げのように数回弾む!

 帆が破れそう!

 慌てて帆を畳むオボロ!


 と、強風のおかげか、漁船が近くに見えてくる!


 だが、前方には不規則な渦潮が迫ってきてる!!


 ……

 ……

(イカダを捨てクロネに頼むしか……)

 オボロは決意する!


 ━━クロネが

「オボロ様!もう危険かと!私を使って下さい!」


(なんだよ……考えてる事一緒じゃん)

 歯茎を見せて、にんまりするオボロ。


 渦潮に迫るイカダ!

 クロネは飛び立つ!

 オボロは樽から水を一気飲みし━━

「クロネ━━━━!」

 両手を上げた!


 クロネはかぎ爪でしっかり掴む!

 目指すはあの漁船━━


 上空からイカダが渦潮へ飲まれて行くのを見つめるオボロ……。


 必死に飛ぶクロネ!

 漁船の半分くらいが確認出来た!


 羽の音が弱々しく感じてるオボロ!

(クロネだけでも漁船に行かせるか?……いやそれでは……何か羽以外に動力になるのは……)

 頭をフル回転させるオボロ!

(動力……動力……風……押す力……推進力!!)


 土壇場で閃くオボロ!


「クロネー!俺の向きを変えてほしい!後ろ向きに!」

 大声で叫ぶオボロ!

 クロネは首を下げ嘴をパクパクさせている!

(クロネの足も疲れてるだろうな……)


 クロネは片足ずつオボロを離し、ゆっくり確実に後ろ向きにさせる。


 大声でクロネに叫ぶオボロ

「今から━━肉球砲を放つから━━その間だけでも━━羽を休めてー!」


 無言のクロネ……体力も限界に近いのかも……。

 オーラを溜め

 右手を前へ……

「さーん、にー、いち!」

 放たれる肉球砲!


 それに合わせるように羽を滑空状態にするクロネ!


 高度が上がりスピードがつく!


 そう長くはもたず、高度が下がり始める!


 オボロは残りわずかなオーラも使う!


「さーん!にー!いち!」

 弱めな肉球砲……

 それでも進んでいる!


 オボロもクロネも体力の限界!


 もがくクロネの羽!

 漁船全体が見えるくらいに近づいた!


 下がる高度!

 船員に気付いてほしいオボロたち……。

 水面が近くなる━━


 と、海面が盛り上がってくる!


 ザバザバザバ━━


 海面から現れたのは━━


 平たい緑を基調とした甲羅。

 鮮やかな虹色の尾が扇子のように開いている。

 首は少し長く光沢のある青で、鳥のような顔立ち。


 オボロとクロネはその生物の甲羅に着地した!


 ……

 ……


(助かったのか?)

 安心したのか気を失うオボロとクロネ。


 その亀のような生物は、ゆったりと漁船へ近づいて行く……。


 と、漁船のマーマンたちがざわついてる!

 マーマンA

「ありゃ!海神様んとこの亀孔雀じゃありませんかね?」

 マーマンB

「んだ!こんな間近で見るなんざ……何か良いことあるかもな!」

 マーマンA

「……甲羅に何か乗せてるべ!……助けねぇと!」


 マーマンたちはオボロとクロネを救出し、亀孔雀と呼ばれる生物はゆっくりと海面へ潜り去っていった……。


 その光景を遠くから見守る海神様がいた……。

(友人の頼みだからな……)



 ━━━ザザ村・長老宅


 古びた家屋が建ち並ぶマーマンの村。

 オボロは航海の陽射しに晒され過ぎて高熱を出して長老宅のベッドで寝込んでいた。

 クロネは木陰へ運ばれ、オボロと同じ症状でぐったりとしていた。

 マーマンたちは手分けして高熱対策をしていた……。


 翌朝━━

 先に目が覚めたのはクロネ。

 回復しきれてないが熱は下がった模様。クロネはマーマンたちに感謝の言葉を伝えている。喋る鳥に驚くマーマンたち!!少し距離を置く者も現れる。それでもクロネは懸命に頭を下げ、感謝の言葉を何度も口にしていた。


 ━━━と、長老らしき老いたマーマンが、ひょっこり現れる!


 マーマンたちは長老に事情を説明した。

 長老は一言

「この者達を歓迎しなさい」

 と言って自宅へ入っていく……。


 ベッドでは高熱でうなされているオボロがいた……。

 見守る長老……。

(この子が……うん……そうなのか……)


 ━━!


 窓を見て驚く長老がいた!

 外からクロネが、寝ているオボロを食い入るように見つめていたから!

 窓を開け長老はクロネに

「そんなに心配せんでもええ……2、3日で熱も下がろう」と。


 ━━その夜


 未だ高熱で、うなされているオボロ……。


 ……


 ……声


 ……ナナの……声、だ。


 ……少し意識を取り戻すオボロ。


 ……


 ……「ナナ!大きくなったら獣医さんになりたい!」


 ……聞こえると言うか……脳に伝わる感覚……。

(ナナ、元気になったのかな?)


 そう思って直ぐに眠りに落ちたオボロ……。


 そして翌朝━━


 身体の節々の痛みで目が覚めるオボロ。

(なんか……筋肉と言うより骨が痛い……ベルトもきつい……)

 寝た状態でベルトを緩めるオボロ。


 ━━ん?


 ベッドから両足がはみ出てるのに気付く!


 もそもそとベッドから起き、立ち上がるオボロ……。

(なんか目線が……高く感じる……てか、ここどこだ?)


 歩いてドアまで行き、開ける━━


 円形状の外側に家屋が乱立し、中央には太めな大きな大木が存在感を出している!

 魚っぽい人がうろちょろしてて、オボロの方をチラチラ見てる……。


 と、そこへ長老が現れ

「若い獣人さんや、体調は良くなったかえ?」


 オボロはとりあえず

「あ、ええ、おかげ様で……その、もしかして助けてもらったのでしょうか?」


 長老「村の船乗り達で救出して手当はしたぞい」


 オボロ「大変感謝致します!」深々と頭を下げる。


 長老「構わんて!……砂浜を綺麗にしてくれ……!いや、お互い様ぞ」

(何か言い直したよな?この老人)と思うオボロ。


 ━━━!


(クロネは?無事なのか?)

 顔を前に出し周りを見渡すオボロ。


 長老「お連れさんなら、空の散歩しとるぞ」


 胸を撫で下ろすオボロ。


 と、そこへクロネがオボロの元へ!

 オボロの周りを一周……また一周……上から下まで観察するクロネ。

 オボロ、キョロキョロしながら

「え?なになに?……どしたのクロネ?」


 オボロの前に立つクロネ!

 右の羽をオボロの頬へ当て……

 目を見つめ……

 照れながらも真剣に……

「オボロ様……凛々しいお顔立ちになられましたわね」

 と、羽を戻す。


 ━━?


「どういう事?」

 首を傾げるオボロ。


 クロネは長老宅の窓ガラスの所へ連れて行った!

「よーくご覧になって」


 ……窓ガラスを見るオボロ。


 ……


 …………!!


「あぁぁぁ━━!!」

 叫ぶオボロ!


 後ろでクスっとするクロネ。


 オボロは興奮気味に

「俺、成長した?ねぇクロネ!背ぇ高くなってるよね??顔も……なんか♂猫みたい!!……尻尾も長くなったのかな?」

 頬を触り、頭を撫で回し、全身を見渡すオボロ!


 クロネ

「ええ、急成長なのでは?」

 と一言。


 いわゆる子猫から成猫へ成長したオボロであった!


 はしゃいでいるオボロを見つめながら

(あぁ……あのシュッとした口元のお顔立ちが……たまらなく……素敵)

 トキメキが止まらないクロネであった!




♢私とキャットふぁーざぁーを見つけて下さりありがとうございます!

♢不定期更新ですが、ブックマークや応援、コメントよろしくお願い申し上げます!

      ⇩⇩⇩⇩⇩

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