第1幕〜はぐれ島よ、さらば
寝床の洞窟から戻ったオボロとクロネ。
どうやら夕方の食事には間に合った。
ちょうど良いので、猿たちに長の交代を宣言した!
ダリルも快く引き受け、明日の朝から長はダリルになることを猿たちに伝えた。
小猿たちがオボロとクロネの所へよって来た。何か伝えようと鳴いているがわからないのでダリルに聞いた。どうやら、また遊んで欲しいのと、クロネの落とした羽で遊んでも良いか、とのこと。オボロもクロネも、小猿たちに良いよと、微笑み返答する。小猿たちの様子を見るに、クロネは小猿たちに好かれてるみたい。
オボロは核となるメンバーを入り江に集めさせた!
ダリル、ミリル、トツ、ローグ、リップとヤップ。クロネはオボロの横に陣取っている。
オボロは明日からのことを話始めた……。ダリルには、傲慢な態度は控えろ、と。ミリルには、もっと自信を持って、頑張りすぎないこと、と。トツには、訓練や狩りばかりでなく、視野を広げ周りをしっかり見ること、と。ローグには、区分けの丸太や集落内の設備の管理と補修を、と。リップとヤップには、剣山落とし穴は使い終わったら、元通りにしておくことと、もっと落ち着いて行動してほしい、とそれぞれ伝えた。横でクロネは頷きながら聞いていた。ダリルらも、オボロの言葉を噛み締めながら聞いていた。
オボロとクロネは岩場の後ろへ行き餞別を持ってきて、皆の前へ出す!
マーブル模様の玉に黒い羽が刺さっている。
不思議そうに見るダリルたち……。
オボロは一番大きな首飾りをダリルに渡す。この5枚羽の首飾りが長の証!他のは長の補佐役の証!
皆それぞれ首飾りを着けた。
どこか見慣れないから違和感があるが、オボロは満足げ。ダリルたちも慣れない首飾りで落ち着きがなさそうだ……。
そして━━ダリルだけを残して解散とした。
オボロ、クロネ、ダリルの3人……いや3匹。
周囲の木々がガサガサとざわめく……。
オボロがダリルに背を向けて口を開く━━
「ダリル!明日から群れの長、任せたぞ!俺の教えた知恵……全部は理解できなかったと思うが……群れを導いてくれよ!」
グズグズと鼻水をすすりながら聞くダリル。
オボロ
「年配猿は過去!彼らが居たから今がある!小猿やメス猿は未来!彼らが居なければ繁栄も無い!そしてその間の若い猿たちは……現在だ!」
オボロは上に顔をあげ、涙をこぼさないようにしてるのか……
「その若い猿たちが、年配猿やメス猿、小猿を守らないでどうする?ダリルがすべき事は……群れの生活を守ること!それだけだ!」
(この言葉は年配の職人が爽太に話していたのを拝借したオボロ)
オボロは振り返り、2本のダンゴクワガタの牙をダリルに手渡す!
ダリルは鼻声で
「ごれは……あのげものの、ぎば?」
オボロ「あぁ!ダリルに授ける!おまえの腕力なら、大木一撃でいけるかもよ?」
ダリルは1本の牙を水平に両手で持ち上げ
「あ゛びがどぉう……ごぜぇ……ばす」
と、両手で1本ずつ持ち集落へ戻っていった……。
黙って見ていたクロネは
「私まで心に染みるお言葉でしたわ、オボロ様!」と感想を述べた。
長がダリルに戻って数日が経った早朝━━
オボロは保存食や水の確保をしている。
集落ではダリルを中心に回っている……。
(とりあえず心配なさそうだな)
「キキッ!キキキ━━!」
物凄い勢いで、船の監視を任せていたリップとヤップが向かってきた!
どうやら……その時が来たようだ!
オボロは猿たちを集合させ、最後の挨拶をし、クロネと共に入り江に向かった!
イカダの準備をしていると……ダリル、ミリル、トツが見送りに来た!
ミリルがもじもじしながらオボロに寄ってくる。
「オボロさん……ミリル……いつま……でも……待ってる」
と、オボロの湿っぽい鼻先に軽く口づけをした!
あまりの出来事に目を丸くするオボロ!
クロネは
(あら?大胆なことをするのね)
ミリルは照れながら集落へ走ってしまった。
そしてトツがクロネの前に来て、片膝をつき一輪の黄色の花を差し出した!
「クロ……ネ……の……姉さん……惚れ……ました」
トツも片言ながら言葉を発した!
突然のアピールに少し驚くクロネ……だが、トツの耳元へ顔を寄せて
「私、オボロ様一筋ですの!オボロ様と並んで戦えるくらい強くなったら……考えるわ」と。
顔を持ち上げクロネは
「トツさん!お気持ちだけは、ありがたく頂くわ」
あっさり振られる、トツ……。
槍を引きずりながら集落へ戻って行った……。
最後にダリルが
「オボロのアニキ!クロネの姉さん!何から何まで世話になりました!……群れの長として見送りの挨拶とさせて頂きやす!」
深々と頭を下げるダリル。
「それでは、行ってらっしゃいませ!」
オボロ「あぁ、皆によろしくな!……楽しかったぜ?ここの生活も!」
イカダへ向かい、海面にイカダを押し込み浮かべる!
その勢いのままオールで漕ぎ入り江を進み海へ出て行った……。クロネはイカダの後を追うように飛び立った。
独り見送るダリル……。
「……海神様の加護が……あらんことを……」
両手を合わせ祈る……。
木々のざわめきが止む……。
入り江に流れる海水も、穏やかになる……。
第1幕〜終幕
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