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第1幕〜オボロの告白とそれぞれの想い

 

 オボロが肉球砲で森林破壊をやらかした夕方━━


 狩り部隊の双子猿リップとヤップが大きな猪のような獲物を持って帰ってきた!2匹は興奮しながらオボロに話す。どうやらオボロが教えた餌で誘き寄せて剣山落とし穴が上手く決まった、と!

 その日の広場は、ちょっとした宴会のように賑やかだった!


 オボロは宴会の中、クロネとダリルを入り江の方へ呼び出した。


 横たわった丸太に腰掛けるオボロ。ダリルはオボロのほぼ正面の丸太に腰掛ける。クロネはオボロの隣に行く。


 ……入り江に海水が打ち寄せる不規則な音……


 オボロは目を瞑り波の音を聞いている……。

 ダリルは何か怒らせるような事をしたのかと、不安げ。

 クロネはオボロをじっと見つめている。

 ……

 ……


 オボロは覚悟を決め……静かに口を開く……。

「クロネ、ダリル……信じてもらえないかもしれないが……俺の話を聞いて欲しい。……俺はこの世界の人ではないんだよ……」

 クロネもダリルも、目を丸くする。

 オボロ「まぁ無理もないよな……。俺は別な世界で人間として生きてそして、事故と災害で死んだんだ……。でも目が覚めたら……この獣人として転生……生まれ変わっていたんだよ」


 静かに聞いているクロネとダリル。


 オボロ「……俺には家族がいて妻と娘の3人と飼い猫一匹。妻は俺と一緒になくなってる……はず。でも、娘は……生きてる!もと居た世界か……今いる世界か不明なんだけど……」


 涙を堪えてゆっくり語るオボロ。


「……それで俺は娘を探す事にした……。生きてるならこんな姿だけど……また抱きしめてあげたい……」


 ダリルの方を見るオボロ。


「だから、ダリル!すまない!長をダリルに任せて、俺は島を脱出して陸続きの所まで、まずは行く!」


 ダリル「……色々と聞きてぇ事はあるが……アニキの決めた事なんだろ?……野暮な事は聞かねぇよ……」


 オボロ「本当に申し訳ない!俺のわがままで!」深く頭を下げる。


 ダリルは黙って首を横に振る……。


 オボロはクロネの方に向き直し

「クロネ……さっき話をした通りだ……クロネには助けられてばかりだったね……ありがとう……。再度確認するけど……俺の個人的なわがままに……一緒に来るかい?……俺としてはきっと過酷な旅になるから、この島でダリルたちと平穏無事に暮らすのも悪くないとは考えてる」


 クロネは斜め上を向いて思案している……

「オボロ様……まだ出発されないのですよね?」


 首を縦に振るオボロ。


 クロネ「では、それまで少し考える時間を下さいませ」


 オボロ「うん!それは構わない!……クロネの生き方なんだから自分で決めて欲しい!」


 ……


 オボロ「二人とも……俺の話を聞いてくれて、ありがとう!……なんかすっきりしたよ」笑みが溢れるオボロ。


 ダリルはなんか泣きそうな顔になっていた……。

 クロネは……入り江の方を見ていた……。


 ━━翌日


 何事もなかったかのようにオボロは集落の見回りをする。ダリルは……寝られなかったのだろうか……目に覇気が、ない。クロネは高台で、ぼんやりしている……。

 理解しがたいことを話されては……複雑な気持ちになることはオボロもわかってはいたが、伝えないと始まらないのと自分の気持ちを確かめる意味でも、昨夜話をした。


 オボロはローグを呼んで話をしている。肉球砲でやらかした所の木々の片付けと川までの通路の整備を若い猿たちとやって欲しいと。頭をペコペコ下げながら、お願いしていた。ローグは口数は少ないが力もあり、何かこだわりを持って作業してくれている。『ザ・職人』ってオボロは感じていた。


 次にトツと双子猿のリップとヤップの所へ行き、狩りの状況を見ていた。

 双子猿の様子から、それなりの成果はあるみたい。トツはダリルの次に信頼されてるらしく双子猿もまた、慕っている雰囲気。双子猿は、とにかく動く!行動範囲なら群れ一番かと。それにワナ作りもすぐに覚え、器用である!トツは相変わらず槍で訓練をすることが多い。危険な獣が襲ってきた時は頼りがいはある。


 そして妹ミリルの所へ行くオボロ。干し肉の作り方も良く出来ている。今は他のメス猿たちに教えてるみたいだ。と、ミリルがひょこひょこ近寄ってきて、木の実をオボロに渡して、すぐにメス猿たちの方へ行ってしまった……。ありがとう、すら言えぬオボロ……。その光景をクロネは目を光らせて食い入るように見ていた!


 クロネさん?それは嫉妬心と言うものですよ?


 オボロは、小猿たちがじゃれている所へ移動していた。

 小猿たちは


「キャッキャッキャッ」


 と楽しそうにオボロの周りを走ったり飛び跳ねたりしている。

 オボロは長く結んだロープを持ってきて、小猿に手伝ってもらい太めな木に縛り付けた。ロープをゆったりと伸ばし、それをくるりと回す。それを繰り返す。一匹の小猿に同じようにやってとお願いするオボロ。真似する小猿。ロープの回転にタイミング良く入りロープの回転に合わせてジャンプ!そしてロープに絡まぬよう出る!


 そう━━長縄である。


 オボロは同じことを数回やってみせ、小猿たちに、おいでおいでと手招き。小猿たちも好奇心旺盛なためすぐに後を追うようにロープヘ。失敗しながらも楽しそうに遊ぶ小猿たち。


(こっちの世界の獣って……賢いよな……)

 と、感じていたオボロ。


 ダリルはオボロの猿たちへの接し方や考え方に、驚かされるばかりであった……。アニキは獣人であるが、人間。死にそうな漂流者の人間しかあった事は無いが、自分らより知能はあるとは感じていた。やはりアニキには、獣人の♂としての強さと人間の知恵が備わっていて、獣人とは違う何かがあるのでは?と考えてしまう………。先日の肉球砲……あのオーラの量は、おそらく計り知れない、とも感じていた。

 ……

 ……

(そうか!アニキは島を出るつもりだから、色々教えてくれたり、指導してくれているのか!……だったら……笑顔で……送り出さねぇと、な)

 脳みその少ないダリルの出した結論である。


 クロネはと言うと━━

 1日中、高台からオボロの観察をしていた。昨晩のオボロの話を振り返りながら……。

 クロネは黒鳥の群れの生活の時にしばしば獣人と小競り合いをすることがあった。獣人は会話よりも戦闘を好む印象が強かった。だがオボロは出逢った時から違っていた……。


 ━━優しさと強さ、気配り


 自分の知ってる獣人とは程遠いとは感じていた。昨晩の話が真実ならば……嘘ではないと思えるくらいに……。砂浜で助けてくれたのがオボロではない獣人だったら……きっと獣人の胃袋の中で……今の私は存在していないだろう、と。


 ━━私の生き方……か


 オボロの語った言葉がクロネを迷わせる……。昨晩一緒に来て欲しいと言われた時は、お供します、と即答しようとしたが……もう1つ選択肢を与えられたことに……。


 小猿たちと楽しそうに長縄をしてるのを眺めている……。

(オボロ様は誰にでも等しく接してる。長になっても驕らずに振る舞っている。獣人も人間も苦手だが、オボロ様はオボロ様!それに━━)

 頬を染めて

(あの時の言葉……『俺の相棒』胸が高鳴りましたわ!)


 今すぐにでも、伝えに行きたいクロネだが、グッと堪え伝える機会を伺うことにした。


 小猿たちの長縄を見ながらオボロはもう1つ果たさねばならない事があった。


 そう━━長の交代の件。



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