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第1幕〜改善と脱出計画とやらかしと

 

 ダリルは猿たちを広場に集めていた。オボロを隣に居させ、先の決闘で自分は完敗し、長を勝者のオボロに譲る事を伝えた。そして反対の者は前へ出ても構わないとも伝えた。


 すると━━


 槍持ちのトツが前へ出た!

 トツはダリルの元へ行き話している……。


 ダリルはトツの気持ちをオボロへ伝えた……。


 オボロは決闘は嫌だから、模擬戦のようなのが良いと、ダリルに伝える。


 トツに伝えるダリル……


 両者納得し、模擬戦へ!

 判定はダリル。

 オーラの使用は禁止。

(トツも多少オーラが使えるので)

 トツは刃先の無い長めの棒のみ可能。

 オボロは爪を出す事は禁止。


 ……


 構える二人。


 しばらく様子を見る二人。


 トツが動く━━!

 オボロ目掛けて上半身へ激しい突きの連続!

 オボロはしっかりと動きを見て身体を揺らし避ける!

 トツは態勢を低くし足元へ右から左へとなぎ払う!

 オボロは真上へ飛んでかわす!

 トツもほぼ同時に真上へ飛ぶ!

 猫の滞空時間は他の獣よりも長い。

 お互い上空で目線が合う━━

 後から飛んだトツのほうが先に落下して行く━━

 それを見逃さないオボロ!

 片足を振り上げ━━

 トツの頭目掛けて━━

 かかと落としを食らわす!!

 高めな鳴き声とともに地面に落とされるトツ!

 オボロは勢いつけて地面に着地━━と同時に立ち上がろうとしているトツの懐に入る!!

 両手の手首をくっつけ腹部へ肉球掌底を浴びせる!!

 叫び声を上げながら水平にくの字で吹っ飛ぶトツ!

 そこでダリルが見極め、オボロの勝ちとした!


 ……オボロがトツへ歩み寄る。


 ……


 なんとか立ち上がるトツ……


 トツは片膝を立ててしゃがみ深く頭を下げた!

 同じ目線になるように、しゃがむオボロ。静かに片手を差し出しお互い手を掴み立ち上がる!

 ダリルはその光景を見て拍手する。周りの猿たちも拍手したり、飛び跳ねたりしている。


 ダリルは再度全員を集め

「いいか?お前ら!これより群れの長は……オボロのアニキになる!……俺は……もう長じゃないから……普通に接して欲しい……」

 後半は弱気なダリル。


 オボロが口を開く━━!

「あーこれから長ってことで……大したことできないけどよろしく!……それと━━俺の下にダリル!相談役として助けて欲しい!その、通訳的な?」


 ダリルはオボロの方へ向き

「いいんですかい?アニキ?」

 オボロ「あぁ!皆との橋渡し役で頼みたい!」

 と、二人は握手!


 トツもクロネも周りの猿たちも賛成のようだ!


 さて━━

 オボロがなぜ長になったか━━

 長になればここでの生活を脅かすのは少ないと考えたこと。そうすれば邪魔なのは減り脱出計画がスムーズにいくこと。あとは人としての情であろうか……共に生活した者を残して脱出するから、何か猿たちに暮らしを豊かにする知恵を伝えたいこと。

 脱出すると言う事は……長を辞めること……そのために再度ダリルに長になってもらわねばならないこと……。オボロはダリルには、口は悪いが、仲間思いの優しさはあると感じたからである。

 ちなみに脱出計画とは……ただイカダを作り脱出する単純なもの……。荒れ狂う海域をそれで行けるか不安ではあるが……。


 ━━━━━


 オボロはまず核となる猿たちを選んだ。

 相談役にダリル。

 狩り隊長に槍持ちのトツ。

 狩り部隊に双子猿のリップとヤップ。

 設備関連に大柄なローグ。

 世話役にダリル妹のミリル。

 衣食住がなんとかなれば彼らも長生きできるだろう……。


 通訳をダリルにしてもらいオボロは彼らに説明する。

 群れと言う組織であること。

 命令は絶対ではなく、あくまでも方向性であり、話し合いで結論を出すこと。狩りの獲物や木の実は全て狩らないこと。全て狩ったり採取すると育たなくなり、自分たちの食べ物も無くなるためと。集落に囲いを作りその中で生活をすること。小猿やメス猿、年配猿は特に。

 ダリル含め彼らは頭がパンクしそうな雰囲気であった……。

 クロネも隣で聞いてはいたが理解しきれてない部分もあった……。きっとオボロ様のことだから、何か理由があるのだと思っていた。


 オボロは爽太だった時の知識と考えをフル回転させた!

 群れ=組織。各々役割をきっちりこなしていくこと。とくにダリルには徹底的に教え込んだ!とは言え人間社会ではなく猿社会……最終的にダリルには飴と鞭の使い方次第だと教えた。説明してると、もと居た世界の会社と言う組織に似てきちゃうな、と思ってしまったオボロ……。

 トツ率いる狩り担当には……ワナの作り方、効果的な場所のアドバイスをした。狩りは彼らのほうが熟知してるからさほど苦労はしなかった。新しく導入させたのは……落とし穴に等間隔で尖らせた太めな木を突き立たせた。剣山のように。典型的だが、餌で誘き寄せ大きめな木の篭で捕獲するやり方。トツたちも感心してて、教えるオボロもまた張り合いがあった。

 大柄なローグには太めな丸太を沢山用意してもらい集落の区分けの柵的な物を作る手伝いをしてもらった。木を切るのはオボロとダリルで。クロネとローグで運搬。丸太を下に3本その上に2本、一番上に1本とピラミッド型に積み上げ区分けの柵を展開していく……。これが一番、時間も人も費やした……。集落の周囲に数カ所ロープをピンと張りそのロープに木片を重ねて、そのロープに引っ掛かると音が鳴るワナ兼警報を教えてあげた。これは猿たち皆喜んでいた!見張り役が少なくなるためである!

 妹ミリルには、木の実の保管方法、干し肉の作り方を教えた。ダリルに耳打ちされたのを思い出すオボロ……。ミリルは目を輝かせて話を聞いてくれてた!クロネのオボロへの背中に刺さるような視線があったのは言うまでもない………。


 しばらくはダリルと共に集落を周り話をしたり指示したり、区分け用の木を沢山切ったりな日々。猿たちの鳴き声で何を言ってるかは……未だにわからないが、身振り手振りや表情で喜怒哀楽くらいは理解出来るようになった。

 さすがのオボロとダリルも半日以上毎日、大木と格闘していたので明日はお互い休みにすることにした。


 ━━翌日


 オボロは何気に筋肉痛であった……。クロネも心配そうに見ている。それでもオボロはイカダの制作に取り掛かろうかとしていた。クロネに切った丸太を持って来て欲しいと伝え、クロネはローグの所へ行き丸太をせっせと両足で掴み運んでくれた。あとは縛るロープ、帆になる布、浮き、保存食や水を入れる箱……必要な者は沢山あった。オボロは漂流物の塊の所へ行き使えそうな物は分別した。

 この作業で1日が終わってしまった!


 ━━━翌日


 ひとしきり集落の見回りと作業の進展をダリルと周る。クロネは邪魔にならぬよう高台でオボロや猿たちの観察と獣への警戒をしている。


 少し集落も落ち着いてるのでオボロはダリルにオーラの事を教えてもらうことにした。

 邪魔にならぬよう広場の隅で。

 ダリルはオーラの前にオボロの体術の凄さを話してくれた。……体術のセンスは確実にある!と。それと戦い方。先が読みにくかったと話してくれた。2度戦ったダリルが言うのだから相当なことだろう。だから狩りや戦闘には自信を持っても良いと。

 次にオーラについて話してくれた。体内にある獣人特有のエネルギー。これを身体の中で巡らせ強化したり放出したりするらしい。ダリルもそうだが、巡らせてコントロールするのが一番難しいとのこと。先代からはオーラを巡らせるのに集中すること、巡らせたオーラの制御をしっかり意識して扱う。……口では簡単だが実行するのは難しい。ダリルは言う、集中・制御・意識この3点だと!


 オボロは目を閉じ集中する……。

 熱いオーラがお腹にあるのがわかる……。

 それを血液のように巡らせる……。

 オボロの身体が小刻みに震える……。


 ━━身体を覆うよう意識する!


 オボロの震えが止まる!

 オーラが漏れ出しているのだろうか、背中、肩からかすかに煙のようなのが……。


(これで身体強化な感じか?……次は……)


 状態を保ちつつ意識するオボロ!

(ダリルキャノンのイメージ……。放出……。いや!打ち出すイメージ!)

 右手を前に出し

 左手を手首あたりに添えて……

 閉じていた目を見開き!


 オーラを打ち出す!!!


 ━━!!


 右手……いや!肉球からオーラが打ち出された!!


 大きな肉球の形のオーラが真っ直ぐに森を通過する!!!


 ずごごご━━━ご━━ん!!!


 木々が倒れていく!


 ベキベキ……メキメキ……ばたーん!


 ダリルは目が飛び出そうなくらい驚き尻もちをつく!

 クロネは両羽根を嘴に当て、なんて素敵なオーラ!と喜んでいる。

 オボロのオーラ放出で集落が静まりかえる………。


 オボロは息を切らせながら

「あっ!自然破壊しちゃった!」と、舌を出してダリルに謝る。

 ダリルは尻もちのまま

「ア、アニキ……見事です!」

(決闘でこれ使われてたら……やばかったな)


 そして、オボロは集落の猿たちに、ペコペコ頭を下げて回った。


 と、クロネがオボロの所へ。

「オボロ様!素敵でしたわ!そこまで考えてたなんて!」

 と、オボロを両足で掴み真上へ飛んだ━━━


 オボロの放ったオーラで木々が倒され、クロネが狩り場にしていたあの川までの道が開拓されていたのであった!


 オボロは複雑な気持ちで

「そー!そ~なんだよ!魚も食べたいなーって!」


 クロネは感心し

「オボロ様?先ほどの技名は?」とニヤリ。


 ……


「そうだな……」

 腕組みするオボロ。


 ……


「……肉球砲!」


 オボロの必殺技っぽいのが完成した。


 クロネはしばらくオボロと広場上空をゆったりと飛んだ。



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