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第1幕〜オボロ、猿山のボスになる

 

 ━━決闘後


 オボロはオーラを使いすぎたせいか2日ほど安静に過ごしていた。クロネはオボロを心配しながらも、狩りや果実を取って来て食に困らないよう務めていた。

 オボロは、ダンゴクワガタの硬い表皮の四隅に穴を開け、拾ってきたロープを繋ぎ合わせ運搬出来るソリのようなものを作成していた。表皮は緩いカーブの三日月のようになっているため、採取したものを沢山乗せて運搬可能にした。これなら、オボロなら引っ張って、クロネなら両足で掴んで空輸可能。


 そして2本のダンゴクワガタの牙はと言うと……。

 オボロでは掴みにくいため洞窟の壁に立て掛けてある……。

 切れ味はさほど無く、斬撃と言うより、叩き斬る感じ。


 ━━━━


 オボロは島の脱出の方法を模索しながら、砂浜の清掃とトレーニングをしていた。

 クロネは高台の岩場でオボロを眺めてうっとりしている。


 そこへ槍持ちのトツと数名の猿が来た!

 トツは槍を置き、手土産っぽい果実や木の実の箱をオボロの前に出す。

 どうやらダリルの使者的な存在。オボロは、負けを認めたのだと察した。

 トツと猿たちは、オボロの手を引き、ダリルの乗っていた神輿に連れて行かれる………。

(これは群れへの招待か?)

 そう思いつつ、神輿へ。

 クロネも心配なのでついて行った。


 群れの集落まで間が持たないため、猿たちよりもクロネと雑談するオボロ。


 集落に付く━━


 ダリルの前に神輿が置かれ、オボロは降ろされる。クロネは少し後ろで待機している。


 ダリルは長い両腕を拳にし地面に当て、深く頭を下げた!

「遅くなりました!先日の決闘、私ダリルの完敗です!」

 オボロとクロネは、目を丸くして驚く!

(ず、随分と礼儀正しいじゃねーか)

「それで、オボロのアニキさえ良ければ……俺達の長になってもらえねぇだろうか?」


 ━━!


 まさかの展開に上半身を仰け反らせるオボロ!

(て言うか……アニキって……)

 クロネも羽を嘴に当て驚きを隠せてない様子。


 オボロ「……話はわかった!長になる前に、ここの島のこととか色々ききたいのだが?」


 ダリルは頷き、知ってる限りだがとオボロの質問に答えていった。

 島の名前は【はぐれ島】と呼ばれてるらしい。集落の先に入り組んだ入り江がありそこに漂流物がしばしば来るらしくまれに死にそうな乗組員もいて、そう呼ばれてると知ったと。ダリルら手長猿は、はぐれ島から出たことがないため、他の地域の事は皆無であった……。ただ、周囲の海域では海流と天候が不定期に荒れ、その海域に入ってしまうと終わりとか、戻れないとか……。


 次にここの群れについて答えてくれた。

 基本的には長の命令や指示は絶対。狩りを中心に生活している。それなりに役割分担があり、トツはダリルの片腕として狩り部隊の指揮でリップ、ヤップの双子猿が狩りの実行部隊。あっちの大柄な猿のローグが集落の道具、武器作り、あとは力強いから重量物の運搬を任せている様子。

 最後にメス猿や小猿、年配猿と長の世話係として、一匹のメス猿を紹介してくれた。


 ダリルは照れながら

「あ、うん、妹の……ミリルだ……か、可愛いだろ?」

 オボロは

(こいつ、なんでこんなにキョドってるんだ?)

 ダリルの後ろからいそいそと現れる妹ミリル。漂流者のものだろうか、スカートと可愛らしいリボンをつけている。

 ミリルは何か照れながら「よろしく」的な鳴き声を発して、両手を顔に当てて、そそくさとどこかへ行ってしまった………。


 そこへダリルがオボロに耳打ちする。

「……どうやら妹が俺らの決闘見てて、アニキに一目惚れしたらしいんすよ?」

 驚くオボロ!

(そーいやミリルっぽいのが神輿の後ろに居たような……)

 そのやり取りをクロネは聞き逃すはずもなく、密かに対抗意識を燃やしていた………。


 ダリルはオーラについても語ってくれた。

 オーラは獣人が本来持っている生命エネルギー。獣人はオーラを身体に巡らせ強化したり、オーラを放って戦うらしい。ダリル自身も先代の長から扱い方を教わって会得したそう。獣人全てがオーラを宿してはいるが個体差はあり、オーラを多く宿している個体は少ないかと。ちなみに「ダリルキャノン」の技名は……先代の長が名付け親らしい……。時間のある時にダリルに扱い方を教えてもらうことにしてもらった。


 ひとしきり話を聞いたオボロは、ダリルに集落の案内をお願いした。

 長は高台の奥に寝床がある、長以外は各々好みの場所で寝てるらしい。トツは長の近くで常に寝てる。

 木の実や果実の貯蔵庫的な洞穴、中央の広場は皆で食事をしたり、集合したりする所、武器や狩り道具の洞穴、長に歯向かった猿を拘束するような洞穴もあった………。

 そして先ほど言っていた入り江も案内してくれた。

 長細い入り江は少し大きめな船がやっと通れるくらいな幅。入り江の脇には漂流物が浮いている。陸の脇には漂流物の塊があり、聞くと暇な猿たちに片付けさせてたのだが面倒くさくなりそのまま放置だそうだ。

 オボロはそこの塊に興味があり見に行った。この世界のものなのか木片、鉄板、ボロボロな革の鞄、着られないくらいよれよれな服、そして……人骨……。

 その人骨を目の当たりにし、ふとよぎるのは……

(俺とマキちゃんの遺体……見つかるだろうか?車は土砂だらけだろうし、かなり転げ落ちてたような………)と言う不安が通り抜けた。


 ━━━!


 人骨の奥に見たことあるものが!


 日の丸のついた軍服!

 まさか!もと居た世界の物が!


(あの時代からも何かのきっかけで、ここの世界へ来てしまったのだろうか?)

 と、考察するオボロ。


 振り返りダリルに

「話と案内、ありがとう!ひと晩考えさせてくれないか?」と。


 ダリルは快く承諾し、広場へ戻り猿たちと宴をした。



 その夜━━


 入り江から月明かりが見える。

 空をポカンと眺めているオボロ。

 少し後ろでクロネが羽の手入れを嘴でしている。


(……とにかくここを脱出しないことには始まらない!もしかしたらナナもこちらに来ているかもしれない!手がかりが欲しい!……脱出するならダリルたちに何か知恵くらいは伝えたい……。クロネは……一緒に来てくれるだろうか?猿たちと仲良く過ごすのも良いと思うのだが……)

 様々な想いが渦巻いているオボロ。


 ……むんぎゅうぅぅ!


 両手の肉球を頬に押し当てるオボロ!


「クロネ!俺は猿たちの長になるよ!」


 クロネは羽を嘴に当て

「私はオボロ様の後を行くだけですので」


 翌朝━━ダリルの所へ


 オボロはダリルに長になる事を告げ、二人は和解と長の交代の堅い握手を交わした。



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