第1幕〜繋がる父娘②
(あれ?ここは……自宅のリビング?)
(あー!お豆腐!)
ナナは醤油とわさびで、わさび醤油を作り豆腐へかける。
ナナ「はぁぁ。冷たくて……ピリッとして……美味しい!」
足をバタつかせながら食べるナナ。
と、ソファーのある部屋へ目が行く。
テーブルにアルバムが置いてある。
(こんなアルバム、家にあったっけ?)
そう思いつつ、ナナはソファーに腰掛け、アルバムの表紙を触る━━━!
ナナの隣に、温かい感触が伝わる!
(なんか……ママが隣に居るみたい……)
横を向くと……ぼんやりとした光が徐々にマキの姿に変わっていく………。
(やっぱり、ママだ!)
マキはナナを優しく抱きしめ、アルバムをめくる……。
まるで「一緒に見ましょう」と。
1ページ目……
ナナへ
成人おめでとう
これからも僕らはナナを応援します!
パパ&ママ
(こんなドッキリしようとしてたんだぁ?)
クスッと笑ってしまうナナ。
「でもまだ私……13歳なんだけどな……」
2ページ目………
出生から幼稚園前までのナナの写真。
お互いにナナを抱っこしてる写真。
ハイハイしてる写真。
お昼寝中の写真。
どれもナナには記憶にないものばかり……。
(赤ちゃんのころって私、こんなんだったんだね)
3ページ目………
幼稚園時代の写真。
入園式・卒園式の写真。
幼稚園でお昼を食べてる写真。
公園の砂場で遊んでる写真。
アップルパイをボロボロこぼしながらも頬張ってる写真。
(ママの作ったアップルパイ………また、食べたいな)
マキはナナの手を優しく包む。
4ページ目………
小学生時代の写真
入学式の写真。
学校でのイベントの色々な写真。
七五三の時の晴れ着の写真もあった!
(着物キツくて……嫌がってたな……)
あれもこれも懐かしい写真ばかり……。
ページをめくるごとに、今の年齢に近づいてくる……。
5ページ目………
4年の時の運動会!
初めて1番取れた時の写真。
(すごく嬉しかったの憶えてる)
5年生の時の、紙粘土のきぬの写真。
(色塗るの面倒くさくて、きぬ作ったんだよな……。仔猫はこれから産まれてくるかもって事で、隣に置いた気がする)
6年生の時の習字の写真。
【家族】
(あーこれ、きぬが、やたら邪魔して大変だったなぁ)
そして━━
中学校入学式の写真。
さらに━━━
ナナの13歳の誕生日の写真……。
ナナの表情が、強ばってくる………。
6ページ目………
トン!と手を置きページをめくらないようにするナナ!!
(だめ!この続きは……見たくない!)
ナナ「この先は……見たく……ない」
顔を首が痛くなるくらい下に曲げ、小刻みに体が震えるナナ。
マキは耳元で何か囁いてる………
「ナナは……1人じゃないのよ」
━━━ママ?
横を向くと、そこにはマキは居なかった!
かすかに残るマキの温もりと匂い………。
ナナは、目を閉じ、手を震わせながらページをめくる………。
ゆっくり目を開く━━━
事故のあった日の温泉旅館へ向かってる時の車内の写真。
車のフロント越しに真正面からの構図。
運転席のパパと助手席のママそして後部座席の私……。
誰がどうやって撮ったの?と思う構図な写真。
(3人とも、笑ってる……)
━━━!?
「パパ!?パパの声が!!」
キョロキョロするナナ!
爽太「ナナ!……ナナちゃーん!……起きて!………起きよう!」
頭の中に響くパパの声……。
爽太の声を聞き、勇気が湧き上がる!
7ページ目………
しっかり目を見開きページをめくる………
思った通り……事故と災害の無残な写真がページいっぱいに貼られている!!
その中の1枚━━
車が土砂に押し流された後、
爽太がナナに、ポーチを渡そうとしてる写真。
爽太の隣にはマキ。
マキは微笑んでる。
爽太は、口を開けて何か伝えようと必死な感じ。
ナナ目線の写真……。
まるで、ナナの眼球がレンズになり撮影されたような。
響く爽太の声━━
「そう………!パパは………には居な……ど……別の………で、生きてるよ」
途切れ途切れな爽太の声……。
ナナ「パパ………ママ………私……頑張ったん……だよ?……でも……助け……呼べなかった……」
ぐすぐすと鼻をすすり、歯を食いしばる……。
また爽太の声が響く……。
「ナナ!……ナ!生……て!…張って起き……う!パパにまた素敵な笑顔を見せておくれよ!!」
最後は、きっちり聴こえた!
肩で泣くナナ……。
今までの家族との思い出が頭をかけ巡る!!
(パパとママは、私を大切にしてくれていたんだな……)
深く息を吐くナナ。
「ナナは……パパとママのこと……ずっとずっと……忘れない!……パパ、ママに逢いたい!パパとママの声が………聞きたいよ!」
そしてページをめくるナナ……。
アルバムが、光輝く!
その光に包まれるナナ!
隣にはマキが居るように感じた!
(ママ……ありがとう……)
━━━━集中治療室
………
………
ゆっくりと目を開けるナナ。
「パパ……ママ……私……生きてるよ」
静かに口を開く……。
鳴り響く電子音……。
昏睡状態からの帰還。
━━━━
爽太とナナが覚醒めた、少しあとくらい………きぬは、お気に入りの場所で、うたた寝をしていた。
━━!
チクリ!
腹部に痛みを感じたきぬ。
それで目が覚めたきぬは、後ろ足を大きく広げ、腹部を毛づくろいする……。
ザーリ……ザーリ……ザーリ……。
体の異変に気付くきぬ!
……新たな生命の誕生である!
身篭ったきぬ!




